第五十話 兄と妹の答え
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一月二日――
三が日の真ん中、世間は正月休みのこの日でも、空港はいつも通り飛行機が飛び交っている
成田空港の国際線ターミナルの保安検査場で両親を見送って、兄様が迎えに来るのを成実さんと待つことにした
「相変わらず忙しい人達だな
まあアメリカは正月休みなんてないらしいし、仕方ねえか」
「向こうに着いたらすぐ仕事だって言ってました」
「時差ボケしねえんだろうな……
羨ましいや、俺は修学旅行の時、しっかり時差ボケしたからなあ……」
「修学旅行、どこだったんですか?」
「イギリスとフランスだったよ
バッキンガム宮殿とか時計塔とか、あと有名な九と四分の三番線も見てきたぞ」
「え、いいなぁ!
ホームステイとかは?」
「ロンドンでやったかな
ホームステイ慣れした家庭だったから、色々親切にしてもらえてよかったよ
まあイギリスのメシはアレだったけど」
「ああ……」
イギリスはメシマズって本当だったんだ
ナショナルジョークだと思ってたのに
「フランスまではどうやって?」
「列車があるんだ、それに乗ってパリまで行けるんだよ
いやあ、フランスは美味かったぞ、メシが」
「どれだけイギリスのご飯がアレだったのかはよく分かりました
ルーブル美術館には行ったんですか?」
「マストだからな、最終日に行った
あとは……モンサンミッシェルも行ったな、バスで四時間くらいかかったけど」
「四時間!?」
「ケツが痛くなったけどな」
その時を思い出したのか、成実さんの顔には苦笑が浮かんでいる
イギリスとフランスか……
う、世界史を取ってないから、全然詳しくない
百年戦争ってワードくらいは分かるけど
「お前は?
修学旅行、どこ行ったんだ?」
「カナダに行きました!
あれ、この話しませんでしたっけ?」
「修学旅行に行ったってことくらいなら聞いたけどさ、あの時は俺が受験でそれどころじゃなかっただろ?
後で聞こうと思ってたけど、なんかタイミングを逃しちまってさ
この際だから聞かせてくれよ」
「ふふ、勿論です
それじゃあどこかでお茶しませんか?
兄様が来るまで、まだ時間があると思うので……」
「そうだな、じゃあ適当にカフェでも入るか」
目に付いたカフェに入って、成実さんがホットコーヒーを頼む
私は遠慮なくホットのラテにカスタマイズまで加えた
正月休みなおかげで、店内はほぼ貸切だ
レジから一番遠い席を選んで座って待っていると、成実さんがドリンクを二つ持ってやってきた
「ほれ」
「ありがとうございます」
ドリンクを受け取って一口
屋内とはいえ、少し冷えた身体にはありがたい温かさだ
「修学旅行がカナダかぁ、いつ行ったんだ?」
「十月下旬です
紅葉も見頃だし、街はハロウィン一色だし、楽しかったですよ」
「一番いい時に行ったんじゃねぇか?
でも寒かったろ」
「最高気温は十五度前後でしたけど、そこまで寒さは感じませんでしたね
でも初日の天気はずっと霧が出ていて、曇り空でした」
「そっかー
聖火台は行ったか?」
「行きました!
あと蒸気時計も見ました」
「いいなー、カナダは行ったことないんだよな
ホームステイは?」
「しましたよ
私もホームステイ慣れしたお家に迎えてもらったので、すごく楽しかったです
そういえば連れて行ってもらった公園で結婚式やってました」
「へぇ……そりゃ運が良かったな」
「もっといたかったくらいでしたね……
誰かと一緒の夜って、滅多にないので新鮮で」
成実さんの笑顔に翳りが落ちる
しまった、私ってば余計なことを
「ちゃんと楽しかったですよ!?」
「それは分かってるよ、修学旅行の話してるお前が楽しそうだから
ただ……寂しさに慣れすぎて、何とも思わなくなってたお前を想像すると、やるせないよ
もっと早く出会えていたらなって思う」
「……なんだか、成実さんと再会してから、私の方が成実さんに支えてもらってばっかりですね」
「なんだそりゃ
俺の方がずっと支えられてるよ
……でもま、そうだな、前世で散々支えてもらったから、今度は俺の番ってことだ」
頬杖をついて微笑む彼の眼差しはどこまでも甘くて優しい
十九歳には思えないような、大人びた表情が私を見つめている
「……なんだか私が子供っぽく見える」
「そんなことはねえだろ、むしろ大人びてるぞ」
「だって成実さん、私が知ってる頃よりうんと大人っぽくなってます」
「そりゃお前……
一応は七十九まで生きて死んだし」
「私っていくつで死んだんでしたっけ」
「二十四だよ、数えでな
実年齢なら二十三だった」
固い声がそう答えた
この話はやめておこう
五十年以上も私より長生きしたんだから、それだけ老成するのは当たり前だ
「……大人な俺は嫌か?」
「大好きです
ちょっとドキドキしますけど」
「まーたお前はストレートに……」
頬を赤くした成実さんがコーヒーを飲む
照れ隠しが下手くそなのは昔から変わらずだ
思わず笑みが零れながら、私もラテを飲んだ
結局のところ、私は成実さんなら何だって構わない
嫌いにならない自信があるし、ずっと好きでいられる
修学旅行の話からはだいぶ逸れてしまったけど、照れる成実さんが見られたので良しとしよう
三が日の真ん中、世間は正月休みのこの日でも、空港はいつも通り飛行機が飛び交っている
成田空港の国際線ターミナルの保安検査場で両親を見送って、兄様が迎えに来るのを成実さんと待つことにした
「相変わらず忙しい人達だな
まあアメリカは正月休みなんてないらしいし、仕方ねえか」
「向こうに着いたらすぐ仕事だって言ってました」
「時差ボケしねえんだろうな……
羨ましいや、俺は修学旅行の時、しっかり時差ボケしたからなあ……」
「修学旅行、どこだったんですか?」
「イギリスとフランスだったよ
バッキンガム宮殿とか時計塔とか、あと有名な九と四分の三番線も見てきたぞ」
「え、いいなぁ!
ホームステイとかは?」
「ロンドンでやったかな
ホームステイ慣れした家庭だったから、色々親切にしてもらえてよかったよ
まあイギリスのメシはアレだったけど」
「ああ……」
イギリスはメシマズって本当だったんだ
ナショナルジョークだと思ってたのに
「フランスまではどうやって?」
「列車があるんだ、それに乗ってパリまで行けるんだよ
いやあ、フランスは美味かったぞ、メシが」
「どれだけイギリスのご飯がアレだったのかはよく分かりました
ルーブル美術館には行ったんですか?」
「マストだからな、最終日に行った
あとは……モンサンミッシェルも行ったな、バスで四時間くらいかかったけど」
「四時間!?」
「ケツが痛くなったけどな」
その時を思い出したのか、成実さんの顔には苦笑が浮かんでいる
イギリスとフランスか……
う、世界史を取ってないから、全然詳しくない
百年戦争ってワードくらいは分かるけど
「お前は?
修学旅行、どこ行ったんだ?」
「カナダに行きました!
あれ、この話しませんでしたっけ?」
「修学旅行に行ったってことくらいなら聞いたけどさ、あの時は俺が受験でそれどころじゃなかっただろ?
後で聞こうと思ってたけど、なんかタイミングを逃しちまってさ
この際だから聞かせてくれよ」
「ふふ、勿論です
それじゃあどこかでお茶しませんか?
兄様が来るまで、まだ時間があると思うので……」
「そうだな、じゃあ適当にカフェでも入るか」
目に付いたカフェに入って、成実さんがホットコーヒーを頼む
私は遠慮なくホットのラテにカスタマイズまで加えた
正月休みなおかげで、店内はほぼ貸切だ
レジから一番遠い席を選んで座って待っていると、成実さんがドリンクを二つ持ってやってきた
「ほれ」
「ありがとうございます」
ドリンクを受け取って一口
屋内とはいえ、少し冷えた身体にはありがたい温かさだ
「修学旅行がカナダかぁ、いつ行ったんだ?」
「十月下旬です
紅葉も見頃だし、街はハロウィン一色だし、楽しかったですよ」
「一番いい時に行ったんじゃねぇか?
でも寒かったろ」
「最高気温は十五度前後でしたけど、そこまで寒さは感じませんでしたね
でも初日の天気はずっと霧が出ていて、曇り空でした」
「そっかー
聖火台は行ったか?」
「行きました!
あと蒸気時計も見ました」
「いいなー、カナダは行ったことないんだよな
ホームステイは?」
「しましたよ
私もホームステイ慣れしたお家に迎えてもらったので、すごく楽しかったです
そういえば連れて行ってもらった公園で結婚式やってました」
「へぇ……そりゃ運が良かったな」
「もっといたかったくらいでしたね……
誰かと一緒の夜って、滅多にないので新鮮で」
成実さんの笑顔に翳りが落ちる
しまった、私ってば余計なことを
「ちゃんと楽しかったですよ!?」
「それは分かってるよ、修学旅行の話してるお前が楽しそうだから
ただ……寂しさに慣れすぎて、何とも思わなくなってたお前を想像すると、やるせないよ
もっと早く出会えていたらなって思う」
「……なんだか、成実さんと再会してから、私の方が成実さんに支えてもらってばっかりですね」
「なんだそりゃ
俺の方がずっと支えられてるよ
……でもま、そうだな、前世で散々支えてもらったから、今度は俺の番ってことだ」
頬杖をついて微笑む彼の眼差しはどこまでも甘くて優しい
十九歳には思えないような、大人びた表情が私を見つめている
「……なんだか私が子供っぽく見える」
「そんなことはねえだろ、むしろ大人びてるぞ」
「だって成実さん、私が知ってる頃よりうんと大人っぽくなってます」
「そりゃお前……
一応は七十九まで生きて死んだし」
「私っていくつで死んだんでしたっけ」
「二十四だよ、数えでな
実年齢なら二十三だった」
固い声がそう答えた
この話はやめておこう
五十年以上も私より長生きしたんだから、それだけ老成するのは当たり前だ
「……大人な俺は嫌か?」
「大好きです
ちょっとドキドキしますけど」
「まーたお前はストレートに……」
頬を赤くした成実さんがコーヒーを飲む
照れ隠しが下手くそなのは昔から変わらずだ
思わず笑みが零れながら、私もラテを飲んだ
結局のところ、私は成実さんなら何だって構わない
嫌いにならない自信があるし、ずっと好きでいられる
修学旅行の話からはだいぶ逸れてしまったけど、照れる成実さんが見られたので良しとしよう
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