第四十九話 正月の伊達家
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朝の気配に目が覚めて、そろりと目を開いた
陽の高さはまだ朝方のようだ
寒いなあ、ともう一度目を閉じて、顔の半分まで布団に包まる
そうして二度寝に入ろうとした、瞬間
「こらー、起きろー!」
「ひやぁぁぁ!!」
首元に冷たい何かがズボッと差し込まれて、思わず悲鳴を上げた
そんなことをする人なんて、この家には一人しかいない
「し、成実さん……!」
「あっはは、良い悲鳴だったな!
おはよう夕華」
「もう少し優しく起こしてください!」
「いやあ、どういう反応するかなーと思って
予想以上だったけど
それより相当夜更かししたな?
もう九時前だぞ」
「……え!」
慌てて部屋の時計を見ると、確かに時間は九時前だ
うわわ、今日は色々と忙しいのに!
「とりあえず朝メシは用意できてるから、着替えたら降りてこいよ
……ああ、そうだ
あけましておめでとう、今年も宜しくな」
「あけましておめでとうございます
こちらこそ、今年も宜しくお願いします」
そう、今日は元旦
成実さんと初詣に向かった後は、本家での新年の集まりに顔を出すことになっている
これがもう、昨日からずっと私が胃を痛めている原因だ。
「お袋さん達、間に合いそうか?」
「間に合わせるとは言ってます」
着替えて下に降りてテーブルに座ると、成実さんにそう尋ねられた
間に合わせるとは言ってたけど、絶対に間に合うとは言ってないからなあ
最悪、一人で本家に挨拶に行くことになるかもしれない
……気が重いなあ
「振袖は?」
「あ、それは昨日ちゃんと出しておきました」
また着物の柄でみんなが不機嫌になるんだろう
成実さん達からしたら相当地味な柄だけど、あれしか私は持っていないから仕方ない
他の家の女の子達は思い思いに色鮮やかな振袖を着てくるのだろうけど、私は藍染に花柄が控えめに彩られた着物だけ
両親が間に合わなかったら、私が一言だけご当主様に挨拶するしかないかな
「んじゃ、食ったら着替えて初詣だな
そのまま本家に向かおうぜ」
「はい
……成実さんも一緒に行くんですか?」
「何が、初詣?」
「いえその後の……」
「本家の方?
なんかまずいか?
どうせお前一人で行ったって、向こうに着いた瞬間梵と俺とその他に囲まれるだけだし、最初から一緒に行くのと変わんねぇと思うけど?」
「……そうですね」
もう何も言うまい
先月の両親の言葉が響いたようだ
ただでさえ過保護だった人達が、更に過保護になってしまった
今より上ってあったんだな、と冷静に引いたのを覚えている
「それにしても、まさか受験に追われないお正月を迎えられるとは思いませんでした
伊達家の皆さんには感謝しないとですね」
「それもあるけど、一番はお前が頑張ったからだよ
労うなら自分を労っとけ」
「ふふ……そうですね」
簡単なもので作った朝食を済ませて、私達はそれぞれ外出の用意をした
さすが成実さんは第二席の家だ
ただの袴でもそれが上等な物だと分かる
対する私は、年頃の女の子が着るにはあまりにも地味すぎる柄の着物だ
「相変わらず質素な柄だな……」
「これでも一張羅なんです
さすがに、成人式の時は着物を借りようとは思いますけど」
「……借りるのか?
買うんじゃなくて?」
「買っても来ていく場所がないですし……」
まさか本家の集まりに来て行く訳にはいくまい
目立つ行為は避けたいのに
お化粧もいつも通りにして、巾着を手にすると準備完了
「じゃあ行きま――」
「ちょっと待て」
成実さんから呆れ顔で呼び止められた
何かおかしいところがあるだろうか、着物の着付けは間違ってないはずだけど
「お前なあ、十八歳の娘がお洒落のひとつもしなくてどうすんだよ?
ほら、こっち来い
着物の柄は目をつぶってやるが、メイクと髪は我慢ならねえ」
不満げな顔の成実さんによって椅子に座らされ、成実さんが私のメイクを足していく
喜多さんのメイク道具一式がここで役に立つんだな……
続けて髪の毛も綺麗に編み込みまでされて、最後に可愛い髪飾りが差し込まれた
「お前の可愛さを半分しか引き出せてねえけど、これくらいなら文句も言われねえだろ
本っ当に最低限しか飾ってねえからな」
「これで最低限なんですか……!?
充分綺麗になったと思うんですが……」
「お前は昔から自己評価が低いからな
……本当は着物だって、お前に似合うやつがあるのに」
行くぞ、と声を掛けられて席を立つ
玄関の鍵を閉めたところで、成実さんと手を繋いだ
「……なあ、夕華」
「はい?」
「俺達……婚約しねえか?」
「えっ」
「ちゃんと将来を約束したくてさ
お前を家で一人にしないためにってことで、なんか転がり込むようにこの家に来ちまったけど、俺は本気でお前としか一緒に居たくない
だから、考えておいてくれ」
「……はい」
成実さんに手を引かれながら、神社へと向かう
婚約……成実さんと、いずれ夫婦になる約束を……
何を恐れているんだろう
兄様をはじめ、本家の人達は賛成してくれるはずだ
成実さんのご両親も、喜んでくれるだろう
他の分家への遠慮が必要な場面じゃない
ずっと悩んで、その瞬間を覚悟していたけど、その覚悟だって必要じゃない
私の心は、いつだって成実さんと共にある
陽の高さはまだ朝方のようだ
寒いなあ、ともう一度目を閉じて、顔の半分まで布団に包まる
そうして二度寝に入ろうとした、瞬間
「こらー、起きろー!」
「ひやぁぁぁ!!」
首元に冷たい何かがズボッと差し込まれて、思わず悲鳴を上げた
そんなことをする人なんて、この家には一人しかいない
「し、成実さん……!」
「あっはは、良い悲鳴だったな!
おはよう夕華」
「もう少し優しく起こしてください!」
「いやあ、どういう反応するかなーと思って
予想以上だったけど
それより相当夜更かししたな?
もう九時前だぞ」
「……え!」
慌てて部屋の時計を見ると、確かに時間は九時前だ
うわわ、今日は色々と忙しいのに!
「とりあえず朝メシは用意できてるから、着替えたら降りてこいよ
……ああ、そうだ
あけましておめでとう、今年も宜しくな」
「あけましておめでとうございます
こちらこそ、今年も宜しくお願いします」
そう、今日は元旦
成実さんと初詣に向かった後は、本家での新年の集まりに顔を出すことになっている
これがもう、昨日からずっと私が胃を痛めている原因だ。
「お袋さん達、間に合いそうか?」
「間に合わせるとは言ってます」
着替えて下に降りてテーブルに座ると、成実さんにそう尋ねられた
間に合わせるとは言ってたけど、絶対に間に合うとは言ってないからなあ
最悪、一人で本家に挨拶に行くことになるかもしれない
……気が重いなあ
「振袖は?」
「あ、それは昨日ちゃんと出しておきました」
また着物の柄でみんなが不機嫌になるんだろう
成実さん達からしたら相当地味な柄だけど、あれしか私は持っていないから仕方ない
他の家の女の子達は思い思いに色鮮やかな振袖を着てくるのだろうけど、私は藍染に花柄が控えめに彩られた着物だけ
両親が間に合わなかったら、私が一言だけご当主様に挨拶するしかないかな
「んじゃ、食ったら着替えて初詣だな
そのまま本家に向かおうぜ」
「はい
……成実さんも一緒に行くんですか?」
「何が、初詣?」
「いえその後の……」
「本家の方?
なんかまずいか?
どうせお前一人で行ったって、向こうに着いた瞬間梵と俺とその他に囲まれるだけだし、最初から一緒に行くのと変わんねぇと思うけど?」
「……そうですね」
もう何も言うまい
先月の両親の言葉が響いたようだ
ただでさえ過保護だった人達が、更に過保護になってしまった
今より上ってあったんだな、と冷静に引いたのを覚えている
「それにしても、まさか受験に追われないお正月を迎えられるとは思いませんでした
伊達家の皆さんには感謝しないとですね」
「それもあるけど、一番はお前が頑張ったからだよ
労うなら自分を労っとけ」
「ふふ……そうですね」
簡単なもので作った朝食を済ませて、私達はそれぞれ外出の用意をした
さすが成実さんは第二席の家だ
ただの袴でもそれが上等な物だと分かる
対する私は、年頃の女の子が着るにはあまりにも地味すぎる柄の着物だ
「相変わらず質素な柄だな……」
「これでも一張羅なんです
さすがに、成人式の時は着物を借りようとは思いますけど」
「……借りるのか?
買うんじゃなくて?」
「買っても来ていく場所がないですし……」
まさか本家の集まりに来て行く訳にはいくまい
目立つ行為は避けたいのに
お化粧もいつも通りにして、巾着を手にすると準備完了
「じゃあ行きま――」
「ちょっと待て」
成実さんから呆れ顔で呼び止められた
何かおかしいところがあるだろうか、着物の着付けは間違ってないはずだけど
「お前なあ、十八歳の娘がお洒落のひとつもしなくてどうすんだよ?
ほら、こっち来い
着物の柄は目をつぶってやるが、メイクと髪は我慢ならねえ」
不満げな顔の成実さんによって椅子に座らされ、成実さんが私のメイクを足していく
喜多さんのメイク道具一式がここで役に立つんだな……
続けて髪の毛も綺麗に編み込みまでされて、最後に可愛い髪飾りが差し込まれた
「お前の可愛さを半分しか引き出せてねえけど、これくらいなら文句も言われねえだろ
本っ当に最低限しか飾ってねえからな」
「これで最低限なんですか……!?
充分綺麗になったと思うんですが……」
「お前は昔から自己評価が低いからな
……本当は着物だって、お前に似合うやつがあるのに」
行くぞ、と声を掛けられて席を立つ
玄関の鍵を閉めたところで、成実さんと手を繋いだ
「……なあ、夕華」
「はい?」
「俺達……婚約しねえか?」
「えっ」
「ちゃんと将来を約束したくてさ
お前を家で一人にしないためにってことで、なんか転がり込むようにこの家に来ちまったけど、俺は本気でお前としか一緒に居たくない
だから、考えておいてくれ」
「……はい」
成実さんに手を引かれながら、神社へと向かう
婚約……成実さんと、いずれ夫婦になる約束を……
何を恐れているんだろう
兄様をはじめ、本家の人達は賛成してくれるはずだ
成実さんのご両親も、喜んでくれるだろう
他の分家への遠慮が必要な場面じゃない
ずっと悩んで、その瞬間を覚悟していたけど、その覚悟だって必要じゃない
私の心は、いつだって成実さんと共にある
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