第四十八話 いい子の我儘
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うちの両親は、行く時も突然なら、帰ってくる時も突然だ
はじめこそ驚いてばっかりだったけど、今ではもう慣れた
ただ、いつもなら時差のせいでなかなかなハイテンションである両親が、真剣な顔をして帰ってきたのは、さすがに初めてだった
「夕華に大事な話があるからね
ちょっと無理言って帰ってきたのよ」
そう言ってお母さんとお父さんは、部屋着に着替えることもなくテーブルに座った
お茶の用意もいらないと言われてしまって、私も自分の席に座る
「俺はちょっと外に出てきますね」
「成実くんもいてくれる?」
「……え?」
気を利かせて席を外そうとした成実さんまで同席させる程の話
……もしかすると、私と成実さんの今後のことについてなのかもしれない
私の両親も成実さんのご両親も、私達が一緒になることに賛成してくれてはいるけど……正直、他の家は違う
本家の意思は分からないから、なんとも言えないけど……
「まずは夕華、この間の電話でも伝えたけど、大学合格おめでとう
あの婆娑羅大に公募型の推薦合格でしょ?
並の努力じゃ出来なかったことだもの、母さん達も鼻が高いわ!」
「あ、ありがとう……」
「それについては、成実くん達も協力してくれたそうだね
この子のためにありがとう」
「い、いや、俺達も勝手にやったことっつーか……
まあ……受かって良かったですけど」
あの成実さんが謙遜するなんて……
ちょっと意外だけど、成実さんの自信家精神は兄様ほどではないからね
謙遜することだってあるんだろう
「……それでね、夕華も高校を卒業したら、嫌でも大人の世界に足を踏み入れるわけじゃない
これまでは母さんと父さんで守ってあげられたけど、今後はそうもいかなくなる場面もある
現に今も、あんたと成実くんが一緒に暮らしてるのをよく思われてないのは分かってるでしょ」
「……うん」
「母さん達は、そんな状況を一気にひっくり返せる切り札を一つ隠してる」
隣で成実さんが息を飲んだ
その切り札に心当たりがあるらしい
一体どんな話なんだろう
「でもこれを話すと、夕華を苦しめることになるかもしれないと思って、ずっと黙っておいたんだ
ご当主様も、お前には言わないでくれと仰っていたからね」
お父さんの口から、ご当主様の名前が出るということは、この切り札は本家が関わっているということだ
嫌な予感に心臓が不気味な音を立てた
「それでも聞きたいか?
今目の前にあるものが信じられなくなるとしても」
「私……」
「……話すんですか、それを
大殿が隠してきた話なんですよね、それ」
「成実くんはもう知ってる話でしょ?
調べてたそうだもんね」
「ちっ……バレてやがったか」
ため息をついて、成実さんは口を閉ざした
私の意思に委ねるということらしい
……目の前にあるものが何も信じられなくなったとしても、か
懐かしいことを思い出した
あの時も、私は自分のことが信じられなくなって、皆のことさえ信じられなくなった
青葉城へ来たお東様に、我が子ではないと言われた時……
でも、あの時も今も、隣に成実さんが居てくれるのは変わらない
だから
「……聞かせて」
私に関わることなら、私には知る権利がある
「分かったわ
なら、結論から言うから、心して聞いてね」
「うん」
テーブルの下で手のひらを握り締める
口の中がカラカラに乾いているような気がした
お母さんが小さく深呼吸をして、そして
「あなたはね――母さんと父さんの、実の子供じゃないのよ」
「――え」
「本当はご当主様……輝宗様と、奥様の義子様の子
子供が産めない私のために、ご当主様が養子に出してくださったの」
「養子……
それじゃ、それじゃあ私は……」
前世と同じだ
私は本家の人間で、この家の子じゃない
前世の記憶は、もう戦国の頃しか残っていないから、私が養子だった事実を知った時のことまでは覚えていない
……でも、きっとこんな気持ちだった
頭が真っ白になって、本当に何も考えられない
「あなたは本家の人間
政宗くんと政道くんの実の妹で、成実くんの従妹」
「もし父さん達との養子関係を解消して本家に戻るなら、夕華を悪く言う人はいなくなる
ただ……そうしてしまうと、父さん達は気軽に夕華とは会えなくなる」
「……私が本家の人間になるから?」
「そうよ」
これが、お母さん達が隠してきた切り札
この家を犠牲にして幸せになるか、自分自身を犠牲にしてこの家を受け継いでいくか
……それなら私の答えは決まっている
「私は――」
きっと私は愚か者だ
でも、そうしたいと思ってしまった
「――この家の子のままがいい」
どんなに指を差されても、どんなにこの先の道が茨でも
私は、この家の一人娘でいたい
ごめんなさい、兄様
私は、あなたの大切な実の妹には、なれませんでした
でもきっとどちらを選択しても後悔する
だったら、今のままでいい
今のまま――何も聞かなかったことにすればいい
だって私の家族は、目の前にいる二人なんだから
はじめこそ驚いてばっかりだったけど、今ではもう慣れた
ただ、いつもなら時差のせいでなかなかなハイテンションである両親が、真剣な顔をして帰ってきたのは、さすがに初めてだった
「夕華に大事な話があるからね
ちょっと無理言って帰ってきたのよ」
そう言ってお母さんとお父さんは、部屋着に着替えることもなくテーブルに座った
お茶の用意もいらないと言われてしまって、私も自分の席に座る
「俺はちょっと外に出てきますね」
「成実くんもいてくれる?」
「……え?」
気を利かせて席を外そうとした成実さんまで同席させる程の話
……もしかすると、私と成実さんの今後のことについてなのかもしれない
私の両親も成実さんのご両親も、私達が一緒になることに賛成してくれてはいるけど……正直、他の家は違う
本家の意思は分からないから、なんとも言えないけど……
「まずは夕華、この間の電話でも伝えたけど、大学合格おめでとう
あの婆娑羅大に公募型の推薦合格でしょ?
並の努力じゃ出来なかったことだもの、母さん達も鼻が高いわ!」
「あ、ありがとう……」
「それについては、成実くん達も協力してくれたそうだね
この子のためにありがとう」
「い、いや、俺達も勝手にやったことっつーか……
まあ……受かって良かったですけど」
あの成実さんが謙遜するなんて……
ちょっと意外だけど、成実さんの自信家精神は兄様ほどではないからね
謙遜することだってあるんだろう
「……それでね、夕華も高校を卒業したら、嫌でも大人の世界に足を踏み入れるわけじゃない
これまでは母さんと父さんで守ってあげられたけど、今後はそうもいかなくなる場面もある
現に今も、あんたと成実くんが一緒に暮らしてるのをよく思われてないのは分かってるでしょ」
「……うん」
「母さん達は、そんな状況を一気にひっくり返せる切り札を一つ隠してる」
隣で成実さんが息を飲んだ
その切り札に心当たりがあるらしい
一体どんな話なんだろう
「でもこれを話すと、夕華を苦しめることになるかもしれないと思って、ずっと黙っておいたんだ
ご当主様も、お前には言わないでくれと仰っていたからね」
お父さんの口から、ご当主様の名前が出るということは、この切り札は本家が関わっているということだ
嫌な予感に心臓が不気味な音を立てた
「それでも聞きたいか?
今目の前にあるものが信じられなくなるとしても」
「私……」
「……話すんですか、それを
大殿が隠してきた話なんですよね、それ」
「成実くんはもう知ってる話でしょ?
調べてたそうだもんね」
「ちっ……バレてやがったか」
ため息をついて、成実さんは口を閉ざした
私の意思に委ねるということらしい
……目の前にあるものが何も信じられなくなったとしても、か
懐かしいことを思い出した
あの時も、私は自分のことが信じられなくなって、皆のことさえ信じられなくなった
青葉城へ来たお東様に、我が子ではないと言われた時……
でも、あの時も今も、隣に成実さんが居てくれるのは変わらない
だから
「……聞かせて」
私に関わることなら、私には知る権利がある
「分かったわ
なら、結論から言うから、心して聞いてね」
「うん」
テーブルの下で手のひらを握り締める
口の中がカラカラに乾いているような気がした
お母さんが小さく深呼吸をして、そして
「あなたはね――母さんと父さんの、実の子供じゃないのよ」
「――え」
「本当はご当主様……輝宗様と、奥様の義子様の子
子供が産めない私のために、ご当主様が養子に出してくださったの」
「養子……
それじゃ、それじゃあ私は……」
前世と同じだ
私は本家の人間で、この家の子じゃない
前世の記憶は、もう戦国の頃しか残っていないから、私が養子だった事実を知った時のことまでは覚えていない
……でも、きっとこんな気持ちだった
頭が真っ白になって、本当に何も考えられない
「あなたは本家の人間
政宗くんと政道くんの実の妹で、成実くんの従妹」
「もし父さん達との養子関係を解消して本家に戻るなら、夕華を悪く言う人はいなくなる
ただ……そうしてしまうと、父さん達は気軽に夕華とは会えなくなる」
「……私が本家の人間になるから?」
「そうよ」
これが、お母さん達が隠してきた切り札
この家を犠牲にして幸せになるか、自分自身を犠牲にしてこの家を受け継いでいくか
……それなら私の答えは決まっている
「私は――」
きっと私は愚か者だ
でも、そうしたいと思ってしまった
「――この家の子のままがいい」
どんなに指を差されても、どんなにこの先の道が茨でも
私は、この家の一人娘でいたい
ごめんなさい、兄様
私は、あなたの大切な実の妹には、なれませんでした
でもきっとどちらを選択しても後悔する
だったら、今のままでいい
今のまま――何も聞かなかったことにすればいい
だって私の家族は、目の前にいる二人なんだから
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