第四十六話 足りない一手
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残暑厳しい九月
二学期が始まって早々、私は担任から呼び出された
「あなた何やらかしたのよ」という海夜の視線に刺されながらも職員室へ向かうと、待っていたのはなんと学年主任
「――はい!?
推薦!?」
「そう、推薦
残念ながら婆娑羅大には指定校の枠はないんだけど、公募型なら推薦してあげられるんだ
あとは伊達さんの気持ち次第だけど、どうかな?」
「えっ、い、いいんですか!?
あの私って成績が良くなってきたのも割と二年の学期末とかからだった気が」
「充分だよ
それにほら、今年の夏の大会もすごい成績だったしね
まあ、普通の受験勉強に加えて小論文の対策とかも入ってくるから、忙しさは倍になるけど……」
確かにそれは大変そうだ
で、でも、成実さんが通った公募型推薦の道だもん
私にもできるか分からないけど、やるだけやってみたい
「っ、やります!」
「おうちに帰って考えてみてって思ったけど、いい返事だ
それじゃあ頑張ろうね」
「は、はい!」
まさか婆娑羅大に推薦してもらえるなんて……
本当、伊達家のコーチ効果って凄いな……
職員室を出ると、心配してくれたのか、海夜が立っていた
あんたの中で私はどういう存在なのよ
「大丈夫?」
「なんで怒られる前提なの?」
「この時期に呼び出しなんて、受験に関わるようなことをやらかしたか、推薦の話くらいしかないわよ」
「残念ながら後者ですー!」
「後者……って、推薦?
婆娑羅大には指定校の枠は持ってないはずよ」
ふっふっふ、そうだろうそうだろう
まさかこの海夜も思うまい、成績が中の中だった人間が推薦をとれるなんて
「公募型の学校推薦もらった」
「は!?」
「だよね、私もびっくり
こういうのって生徒から先生に言うもんだと思ったけど、向こうから推薦どう?って」
「とんでもないわね……
それで?
もちろんやるんでしょ?」
「やるよ
そりゃもちろん、せっかくのチャンスだもん」
「……そうね
頑張って、応援するわ!」
「ありがとう!」
しかし私は知っている
海夜も指定校推薦で大森大を受けるということを
学年一位の頭脳、すごいな……
*********************
「話は聞いたぜ、夕華」
伊達家に来い、と連絡を受けたので帰りに向かってみたら、玄関を開けるなり兄様が待ち構えていた
「どこから情報が漏れたんですか……?」
「水くせえじゃねぇか
どうせ俺たちに黙って推薦の対策するつもりだったんだろ」
「それは、そうですけど……
だって普段から試験の度にお世話になってるんですもん、自分の受験対策くらいはって……」
そう答えると、兄様は溜息をついて首を振った
そうして指をパチンと鳴らす
瞬間、背後のリビングのドアがバタンと開いた
どこの漫画だろう
「僭越ながら夕華様、試験対策と受験対策はまるで違います
小論文ともなればなおのこと
この小十郎、久方ぶりに心を鬼にして当たらせて頂く所存
お覚悟召されよ」
「えっ」
「面接の対策も必要でございますね
そちらはこの綱元が担当致します」
「えっえっ」
「But!
だからって一般入試の対策を疎かにしていいわけじゃねぇ
そっちも同時進行で鍛えるから覚悟しろ」
「ひえ……」
伊達家コーチ、怖い
みんなが揃ってスパルタモードだ
「……ちなみに成実さんは?」
「あいつは――」
「俺は一般入試対策、兼……雑用係だよ」
背後から澱んだ声が聞こえてきて思わず振り返る
そこには大量に食材を買い込んだ成実さんと、荷物持ちとして呼ばれたらしい留守さんと白石さんがいた
「な、なんですか、この食材の量」
「これから推薦が終わるまで、当分はこっちで晩メシ食うことになるからな
雑用係らしく、食事担当を買って出たんだよ
そしたら使いっ走りにされたけど
梵、とりあえずこんなもんでいいだろ?
うちにあるやつも期限が近いやつだけ持ってきたけど」
「Thanks.
あとはお前の判断で買い足すなり何なりしてくれりゃいいさ
領収証はいつも通り原田に渡しな」
「原田さん、胃痛起こして倒れなきゃいいんスけど……」
「昨日の時点でその気配があったぞ、諦めろ
俺達にできることは、精々が胃薬の用意くらいだ」
「だなー……」
そうだった、原田さんは別邸の経理担当
そして買い出しを命じられたのは、食材に一切の妥協をしない成実さんだ
……レシートは見ないでおこう、その方がいい気がする
「つーわけで早速だが対策講座のstartだ
死ぬ気で頑張れ」
「まだ学校から推薦どう?って聞かれただけなのに!?」
「早いに越したことはございませぬゆえ」
双竜が頑として譲らない
綱元さんもニコニコとしたまま何も言わないから、こっちも賛同しているということだ
「し、成実さん……」
「夕華、大丈夫だ
……俺も辿った道だからな」
「目が死んでる!!
何も大丈夫じゃないですよね!?」
「つべこべ言うな、もう始まったんだ」
「うわーん!!」
「夕華様、頑張らせるだけが政宗様ではございませんよ
もうお分かりでしょう?」
綱元さんにそう言われて思い出した
確かに兄様は、私が頑張ったら目いっぱい甘やかしてくれた
モデルが裸足で逃げ出す顔面国宝に甘やかされるのは寿命が縮む気持ちもしたけれど、兄様は頑張ったらちゃんと褒めてくれる
あと、めちゃくちゃ美味しい兄様お手製スイーツが出てくる
「……私が頑張ったら、兄様の自慢の妹になれますか?」
「そこは頑張らなくても初めっから俺の自慢の妹だが、そうだな……
自慢の妹から、とびきり自慢の妹になるだろうな」
「やります」
「俺が言うのも何だけど、お前それでいいんだな?」
成実さんのツッコミは聞かない振りをした
頑張る理由や目的は人それぞれなんだ
けれど同時に、ちょっとだけ後悔した
安易にあの場で返事をするんじゃなかったな、と――
二学期が始まって早々、私は担任から呼び出された
「あなた何やらかしたのよ」という海夜の視線に刺されながらも職員室へ向かうと、待っていたのはなんと学年主任
「――はい!?
推薦!?」
「そう、推薦
残念ながら婆娑羅大には指定校の枠はないんだけど、公募型なら推薦してあげられるんだ
あとは伊達さんの気持ち次第だけど、どうかな?」
「えっ、い、いいんですか!?
あの私って成績が良くなってきたのも割と二年の学期末とかからだった気が」
「充分だよ
それにほら、今年の夏の大会もすごい成績だったしね
まあ、普通の受験勉強に加えて小論文の対策とかも入ってくるから、忙しさは倍になるけど……」
確かにそれは大変そうだ
で、でも、成実さんが通った公募型推薦の道だもん
私にもできるか分からないけど、やるだけやってみたい
「っ、やります!」
「おうちに帰って考えてみてって思ったけど、いい返事だ
それじゃあ頑張ろうね」
「は、はい!」
まさか婆娑羅大に推薦してもらえるなんて……
本当、伊達家のコーチ効果って凄いな……
職員室を出ると、心配してくれたのか、海夜が立っていた
あんたの中で私はどういう存在なのよ
「大丈夫?」
「なんで怒られる前提なの?」
「この時期に呼び出しなんて、受験に関わるようなことをやらかしたか、推薦の話くらいしかないわよ」
「残念ながら後者ですー!」
「後者……って、推薦?
婆娑羅大には指定校の枠は持ってないはずよ」
ふっふっふ、そうだろうそうだろう
まさかこの海夜も思うまい、成績が中の中だった人間が推薦をとれるなんて
「公募型の学校推薦もらった」
「は!?」
「だよね、私もびっくり
こういうのって生徒から先生に言うもんだと思ったけど、向こうから推薦どう?って」
「とんでもないわね……
それで?
もちろんやるんでしょ?」
「やるよ
そりゃもちろん、せっかくのチャンスだもん」
「……そうね
頑張って、応援するわ!」
「ありがとう!」
しかし私は知っている
海夜も指定校推薦で大森大を受けるということを
学年一位の頭脳、すごいな……
*********************
「話は聞いたぜ、夕華」
伊達家に来い、と連絡を受けたので帰りに向かってみたら、玄関を開けるなり兄様が待ち構えていた
「どこから情報が漏れたんですか……?」
「水くせえじゃねぇか
どうせ俺たちに黙って推薦の対策するつもりだったんだろ」
「それは、そうですけど……
だって普段から試験の度にお世話になってるんですもん、自分の受験対策くらいはって……」
そう答えると、兄様は溜息をついて首を振った
そうして指をパチンと鳴らす
瞬間、背後のリビングのドアがバタンと開いた
どこの漫画だろう
「僭越ながら夕華様、試験対策と受験対策はまるで違います
小論文ともなればなおのこと
この小十郎、久方ぶりに心を鬼にして当たらせて頂く所存
お覚悟召されよ」
「えっ」
「面接の対策も必要でございますね
そちらはこの綱元が担当致します」
「えっえっ」
「But!
だからって一般入試の対策を疎かにしていいわけじゃねぇ
そっちも同時進行で鍛えるから覚悟しろ」
「ひえ……」
伊達家コーチ、怖い
みんなが揃ってスパルタモードだ
「……ちなみに成実さんは?」
「あいつは――」
「俺は一般入試対策、兼……雑用係だよ」
背後から澱んだ声が聞こえてきて思わず振り返る
そこには大量に食材を買い込んだ成実さんと、荷物持ちとして呼ばれたらしい留守さんと白石さんがいた
「な、なんですか、この食材の量」
「これから推薦が終わるまで、当分はこっちで晩メシ食うことになるからな
雑用係らしく、食事担当を買って出たんだよ
そしたら使いっ走りにされたけど
梵、とりあえずこんなもんでいいだろ?
うちにあるやつも期限が近いやつだけ持ってきたけど」
「Thanks.
あとはお前の判断で買い足すなり何なりしてくれりゃいいさ
領収証はいつも通り原田に渡しな」
「原田さん、胃痛起こして倒れなきゃいいんスけど……」
「昨日の時点でその気配があったぞ、諦めろ
俺達にできることは、精々が胃薬の用意くらいだ」
「だなー……」
そうだった、原田さんは別邸の経理担当
そして買い出しを命じられたのは、食材に一切の妥協をしない成実さんだ
……レシートは見ないでおこう、その方がいい気がする
「つーわけで早速だが対策講座のstartだ
死ぬ気で頑張れ」
「まだ学校から推薦どう?って聞かれただけなのに!?」
「早いに越したことはございませぬゆえ」
双竜が頑として譲らない
綱元さんもニコニコとしたまま何も言わないから、こっちも賛同しているということだ
「し、成実さん……」
「夕華、大丈夫だ
……俺も辿った道だからな」
「目が死んでる!!
何も大丈夫じゃないですよね!?」
「つべこべ言うな、もう始まったんだ」
「うわーん!!」
「夕華様、頑張らせるだけが政宗様ではございませんよ
もうお分かりでしょう?」
綱元さんにそう言われて思い出した
確かに兄様は、私が頑張ったら目いっぱい甘やかしてくれた
モデルが裸足で逃げ出す顔面国宝に甘やかされるのは寿命が縮む気持ちもしたけれど、兄様は頑張ったらちゃんと褒めてくれる
あと、めちゃくちゃ美味しい兄様お手製スイーツが出てくる
「……私が頑張ったら、兄様の自慢の妹になれますか?」
「そこは頑張らなくても初めっから俺の自慢の妹だが、そうだな……
自慢の妹から、とびきり自慢の妹になるだろうな」
「やります」
「俺が言うのも何だけど、お前それでいいんだな?」
成実さんのツッコミは聞かない振りをした
頑張る理由や目的は人それぞれなんだ
けれど同時に、ちょっとだけ後悔した
安易にあの場で返事をするんじゃなかったな、と――
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