第四十五話 辿り着く真実
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蝉が泣き喚く八月
お盆を迎えたこの日、朝からおばあちゃんとおじいちゃんのお墓参りを済ませた私は、両親と共に本家へと向かっていた
成実さんも私と共に行きたがっていたけれど、本家への顔出しとなればそうはいかないようで、ご実家へと帰省中だ
どうせ本家に行けば会えるしね
……とはいえ、気が重いのは確かだ
ただでさえ名ばかりの伊達姓ということで笑われているのに、今年は成実さんと私の仲が知れ渡っている
どんな嫌味や嫌がらせを受けるか分かったものじゃない
そういうわけで、両親のご当主様への挨拶が終わり次第、私達一家はお暇することにした
「……はあ」
父の運転する車に乗りながら、何度目かも分からないため息をつく
こんなに猛暑日なのに着物で行かなければならないのもため息の理由ではあるけれど、一番はやはり、他家との諍いだ
「実力ならどうとでもなるけど、血統となるとどう足掻いてもどうにもならないものね……
夕華に嫌な思いをさせちゃうことが本当に申し訳ないわ」
「お母さんが謝ることじゃないよ
私は大丈夫だから……」
前世でも、成島に詣でるまでは、私が本当に本家の姫なのかと疑う声は少なくなかった
その中には嫌味を吐き捨ててすれ違う家老もいたし、私の言うことを聞いてくれない女中だっていた
それに比べればまだマシだ、上に立つ者だった日々はとうに過ぎた
つまりは失う立場がないわけで、何を言おうと構わないわけだ
……言うかどうかは別にして
「……ねえ、夕華」
「なに?」
「成実くんのこと、諦めたりしちゃ駄目よ」
「え……」
「そんなふうに考えてないかって思ってたのよ
あんた、昔っから物分かりが良すぎて、手が掛からない子だったけど……
他の子達みたいな我儘だって言わずに、何でも我慢しちゃう子でもあるから
我慢して……諦めちゃう子だからね
そうさせちゃったのは私達のせいなんだろうけど」
「え!?
ち、違うよ、私が我儘言わなかったのは、そんなんじゃなくて……」
……言えるような人間じゃないからだ
物心ついた時には前世の記憶があった
小さい子特有の寂しさを誤魔化すことなんて簡単だった
小学校の友達も何人かいたから、遊んでくれる人と遊んでいた
……でも、たぶん私は、色んなものを諦めてきたんだろう
たとえば運動会で頑張っても、褒めてくれる人はいない
授業参観の時に、教室の後ろで見てくれる人もいない
自分の親の元へ走ってはニコニコと楽しそうに、嬉しそうにする友達を横目に見ながら、私はいつも一人だった
「我儘の言い方が分からなかったというか、どこまでならお願いを聞いてもらえるか分からなかったというか……
我儘も行き過ぎたらただの癇癪になるから、それは嫌だし……」
これでも素直に生きてきたと思っている
どうやら私は、みんなが言う通り、欲が無さすぎるらしい
だって、自分が生きていることが既に幸せだったから
一度は何もかもを置き去りにして死んだ身だ、自分の命がそこにあるだけで十分だろう
「どうにもならないことっていうのは、あるものじゃない?
私は別に、それを嘆く必要は無いと思う
自分がどうにかできる範囲で最大限努力して、幸せになればそれでいいよ
だから我儘を言う必要ないの」
「……成実くんと離れてもか?」
「私と無理やり一緒になったって、成実さんが幸せにならないなら意味がないから」
二人はそれきり黙ってしまった
窓の外を見ると、何度か見た事のある景色だった
本家にもうすぐ着いてしまうらしい
何を言われても聞こえないふりをして、両親の挨拶が終わったらさっさと帰ろう
兄様や成実さんは、挨拶回りで忙しいだろうから、二人が声を掛けてくれたらちょっとお喋りしようかな
「ああ……着いてしまった……」
相変わらず、何度見ても笑えないくらいバカでかい日本家屋の御屋敷だ
軒並み高級車が止まっている中に、平凡な普通乗用車が入っていくのだから、そりゃあ笑われもするよね、なんて
着ている着物だって、有名な染物や織物ではなくて、本当に近くの呉服屋さんで買った控えめな柄の一張羅
兄様や成実さんが身につけるものとはあまりにも違いすぎる
できれば今日は、二人ともあまり長く一緒には居たくないな……
駐車場に車を止めて、後部座席から降りる
瞬間、聞こえてきたのはヒソヒソとした囁き声と、侮蔑の言葉
……まあ、仕方ないよね
「夕華、お父さんとお母さんはさっさと挨拶してくるから、あんたは広間にちょっと顔出したら車に戻っときなさい」
「うん」
車の鍵をお父さんから受け取って巾着袋に入れる
それから本家の玄関へと回った、時だった
「あ、夕華!」
「やっと来たか、my sister.」
一緒に居たくないと思った矢先に、この人たちはー!!
しかも従兄弟組どころか、三傑全員いるし原田さんもいる!
もう駄目だ、私は殺されてしまうかもしれない
「こ、こんにちは……」
「あら丁度良かった!
しばらくこの子をお願いしていい?」
「Of course!
ゆっくりしてきてもいいんだぜ?」
「政宗様、夕華……が死にそうな顔をしているので、急がせた方が良いかと」
死にそうな顔をしているのは小十郎さんの方だと思うんだよな……
私のことを呼び捨てにしただけなのに、今にも腹を切りそうな顔をしている……
「申し訳ございませぬ……
なにぶんこのような場であるゆえ、夕華様を敬う姿勢を見られると、更に事態が悪化する恐れがございます
何卒お許しを、夕華様」
「むしろあとで腹を切るだの言い出しそうな勢いですけど、言い出したらちゃんと止めておいてくださいね、兄様」
「時代が時代だから大丈夫だろ」
「そういうこっちゃねぇと俺は思うけどな」
とはいえ、170cm前後の――兄様に至っては180cm以上ある――男達に囲まれると、私の姿なんて見えなくなるというもの
わざとみんなの視界から隠してくれているんだろう
みんなの気遣いが嬉しくて、ようやく私も少しだけ笑うことが出来た
お盆を迎えたこの日、朝からおばあちゃんとおじいちゃんのお墓参りを済ませた私は、両親と共に本家へと向かっていた
成実さんも私と共に行きたがっていたけれど、本家への顔出しとなればそうはいかないようで、ご実家へと帰省中だ
どうせ本家に行けば会えるしね
……とはいえ、気が重いのは確かだ
ただでさえ名ばかりの伊達姓ということで笑われているのに、今年は成実さんと私の仲が知れ渡っている
どんな嫌味や嫌がらせを受けるか分かったものじゃない
そういうわけで、両親のご当主様への挨拶が終わり次第、私達一家はお暇することにした
「……はあ」
父の運転する車に乗りながら、何度目かも分からないため息をつく
こんなに猛暑日なのに着物で行かなければならないのもため息の理由ではあるけれど、一番はやはり、他家との諍いだ
「実力ならどうとでもなるけど、血統となるとどう足掻いてもどうにもならないものね……
夕華に嫌な思いをさせちゃうことが本当に申し訳ないわ」
「お母さんが謝ることじゃないよ
私は大丈夫だから……」
前世でも、成島に詣でるまでは、私が本当に本家の姫なのかと疑う声は少なくなかった
その中には嫌味を吐き捨ててすれ違う家老もいたし、私の言うことを聞いてくれない女中だっていた
それに比べればまだマシだ、上に立つ者だった日々はとうに過ぎた
つまりは失う立場がないわけで、何を言おうと構わないわけだ
……言うかどうかは別にして
「……ねえ、夕華」
「なに?」
「成実くんのこと、諦めたりしちゃ駄目よ」
「え……」
「そんなふうに考えてないかって思ってたのよ
あんた、昔っから物分かりが良すぎて、手が掛からない子だったけど……
他の子達みたいな我儘だって言わずに、何でも我慢しちゃう子でもあるから
我慢して……諦めちゃう子だからね
そうさせちゃったのは私達のせいなんだろうけど」
「え!?
ち、違うよ、私が我儘言わなかったのは、そんなんじゃなくて……」
……言えるような人間じゃないからだ
物心ついた時には前世の記憶があった
小さい子特有の寂しさを誤魔化すことなんて簡単だった
小学校の友達も何人かいたから、遊んでくれる人と遊んでいた
……でも、たぶん私は、色んなものを諦めてきたんだろう
たとえば運動会で頑張っても、褒めてくれる人はいない
授業参観の時に、教室の後ろで見てくれる人もいない
自分の親の元へ走ってはニコニコと楽しそうに、嬉しそうにする友達を横目に見ながら、私はいつも一人だった
「我儘の言い方が分からなかったというか、どこまでならお願いを聞いてもらえるか分からなかったというか……
我儘も行き過ぎたらただの癇癪になるから、それは嫌だし……」
これでも素直に生きてきたと思っている
どうやら私は、みんなが言う通り、欲が無さすぎるらしい
だって、自分が生きていることが既に幸せだったから
一度は何もかもを置き去りにして死んだ身だ、自分の命がそこにあるだけで十分だろう
「どうにもならないことっていうのは、あるものじゃない?
私は別に、それを嘆く必要は無いと思う
自分がどうにかできる範囲で最大限努力して、幸せになればそれでいいよ
だから我儘を言う必要ないの」
「……成実くんと離れてもか?」
「私と無理やり一緒になったって、成実さんが幸せにならないなら意味がないから」
二人はそれきり黙ってしまった
窓の外を見ると、何度か見た事のある景色だった
本家にもうすぐ着いてしまうらしい
何を言われても聞こえないふりをして、両親の挨拶が終わったらさっさと帰ろう
兄様や成実さんは、挨拶回りで忙しいだろうから、二人が声を掛けてくれたらちょっとお喋りしようかな
「ああ……着いてしまった……」
相変わらず、何度見ても笑えないくらいバカでかい日本家屋の御屋敷だ
軒並み高級車が止まっている中に、平凡な普通乗用車が入っていくのだから、そりゃあ笑われもするよね、なんて
着ている着物だって、有名な染物や織物ではなくて、本当に近くの呉服屋さんで買った控えめな柄の一張羅
兄様や成実さんが身につけるものとはあまりにも違いすぎる
できれば今日は、二人ともあまり長く一緒には居たくないな……
駐車場に車を止めて、後部座席から降りる
瞬間、聞こえてきたのはヒソヒソとした囁き声と、侮蔑の言葉
……まあ、仕方ないよね
「夕華、お父さんとお母さんはさっさと挨拶してくるから、あんたは広間にちょっと顔出したら車に戻っときなさい」
「うん」
車の鍵をお父さんから受け取って巾着袋に入れる
それから本家の玄関へと回った、時だった
「あ、夕華!」
「やっと来たか、my sister.」
一緒に居たくないと思った矢先に、この人たちはー!!
しかも従兄弟組どころか、三傑全員いるし原田さんもいる!
もう駄目だ、私は殺されてしまうかもしれない
「こ、こんにちは……」
「あら丁度良かった!
しばらくこの子をお願いしていい?」
「Of course!
ゆっくりしてきてもいいんだぜ?」
「政宗様、夕華……が死にそうな顔をしているので、急がせた方が良いかと」
死にそうな顔をしているのは小十郎さんの方だと思うんだよな……
私のことを呼び捨てにしただけなのに、今にも腹を切りそうな顔をしている……
「申し訳ございませぬ……
なにぶんこのような場であるゆえ、夕華様を敬う姿勢を見られると、更に事態が悪化する恐れがございます
何卒お許しを、夕華様」
「むしろあとで腹を切るだの言い出しそうな勢いですけど、言い出したらちゃんと止めておいてくださいね、兄様」
「時代が時代だから大丈夫だろ」
「そういうこっちゃねぇと俺は思うけどな」
とはいえ、170cm前後の――兄様に至っては180cm以上ある――男達に囲まれると、私の姿なんて見えなくなるというもの
わざとみんなの視界から隠してくれているんだろう
みんなの気遣いが嬉しくて、ようやく私も少しだけ笑うことが出来た
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