第四十三話 言えない言葉
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は、と目が覚めた
室内は真っ暗で、まだ夜中だというのがよく分かる
常夜灯が薄暗く照らす部屋に、私の浅い呼吸がやけに響く気がした
「……なんだ、夢か……
夢……そうだよね、夢だよね……」
深く息を吐き出して、目を閉じる
成実さんが私を置いていく夢だった
家の格が合わないからと、ごめんとそれだけを言い残して去っていく背中に、私は何も言うことが出来なかった
成実さんと別室だったことがこんなにも嬉しかったことはない
毎晩、私が魘されているのを知ったら、彼はひどく心配してしまう
(馬鹿だなあ、夢見が悪いのは私のせいなのに)
自業自得だ、自分の身の丈に合わない恋をしたせいだ
離れられない理由ばかり増やしてしまって、どうするんだろう
だって私は、成実さんや兄様たちと、いつまでも一緒には居られない
成実さんが私と一緒に暮らしているこの状況は、はっきり言って有り得ないこと
(成実さん、私はもう何も知らない子供の伊達夕華ではないんです)
まだ正式に大人の仲間入りをしたわけではないけれど、それでも嫌という程この目で見てきた
私の家は格下もいいところ
本家とはほとんど関わりもない末席
あまりにも遠すぎて、一族の立場にはいるけれど、私自身は本家の人とは親族でもない
ただ、先祖を辿れば本家のどこかに流れが繋がるらしいから、一族として迎えていただけているだけ
本当に、ただそれだけ
外にいる人から見たら、ただそれだけでしかない存在の人間が、本家に最も近しい人に取り入って、あまつさえ同居までしていると見られてしまう
だから離れた方がいい
成実さんと私の生きる世界は、もう違う
私の居場所はあなたの隣ではなくなってしまった
だから手を離さなければならないのに――私はまだ、この人の隣にいたいと我儘を抱えてしまっている
夢の中で私はずっと、小さくなる成実さんの背中を見つめているだけで
追いかけることも、行かないでと声を出すことも、出来なかった
*********************
「――夕華?」
翌朝、ぼーっとしていたところに、成実さんが声をかけてきた
慌てて返事をすると、心配そうな瞳が私を見下ろしている
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です
すみません、少しぼーっとして……」
「疲れが溜まったか?
毎日勉強と部活で大変だもんな
家事は俺がやるから、お前は自分のことに集中しろ」
「……はい、すみません」
お皿洗いを交代して、脱衣場へと向かう
洗濯機が回っている
今日は成実さんの講義は十時半くらいからだって言っていたし、朝はお任せしてしまおう
「成実さん、行ってきます」
「おう、行ってらっしゃい
気を付けろよー」
家を出るには早いけど、朝練を長めにできるからちょうどいい
何かを考えようとすると、成実さんのことが浮かんでしまうから
無心になっていられる時間が、最近は好きだった
ドアを開けたところで、見慣れない人達がいるのを見かけた
平日の早朝に、ただの住宅地に用がある人なんているだろうか
心の中で首を傾げながら、その人達がいる方向とは反対方向に歩く
心配しすぎかもしれないけど、一応、成実さんには連絡しておこう
「家の近くに見かけない人達が三人いるので、成実さんが外出する時は気をつけて下さい……と
これで伝わるかな」
家事の最中のようで、既読は付かない
私と代わってくれたんだし、当然か
スマホをポケットに戻して、駅へと急ぐ
私達三年生は今年が最後の大会になるし、悔いだけは残したくない
ちょっとくらいの無茶なら、やってやるべきだろう
駅のホームには、美術館で催す特別展のポスターが貼ってあった
「華道家、長尾景虎……
ううん、聞いた事ない名前だな……
名前からして明らかに戦国武将っぽくはあるけど、気のせいかな」
残念ながら顔写真などは載っていなかったし、すぐに電車が入ってきたせいで、そのポスターは私の脳内に残ることなく消えてしまった
早朝とはいえ、通勤客はそれなりにいる
でもいつもよりは人も少ないから、空いている席が一人分あって
遠慮なくそこに座って、電車に揺られていると
いつの間にか、私はぐっすりと眠ってしまって……
はっと目が覚めたら、降りる駅なんてとっくに通り過ぎていた
室内は真っ暗で、まだ夜中だというのがよく分かる
常夜灯が薄暗く照らす部屋に、私の浅い呼吸がやけに響く気がした
「……なんだ、夢か……
夢……そうだよね、夢だよね……」
深く息を吐き出して、目を閉じる
成実さんが私を置いていく夢だった
家の格が合わないからと、ごめんとそれだけを言い残して去っていく背中に、私は何も言うことが出来なかった
成実さんと別室だったことがこんなにも嬉しかったことはない
毎晩、私が魘されているのを知ったら、彼はひどく心配してしまう
(馬鹿だなあ、夢見が悪いのは私のせいなのに)
自業自得だ、自分の身の丈に合わない恋をしたせいだ
離れられない理由ばかり増やしてしまって、どうするんだろう
だって私は、成実さんや兄様たちと、いつまでも一緒には居られない
成実さんが私と一緒に暮らしているこの状況は、はっきり言って有り得ないこと
(成実さん、私はもう何も知らない子供の伊達夕華ではないんです)
まだ正式に大人の仲間入りをしたわけではないけれど、それでも嫌という程この目で見てきた
私の家は格下もいいところ
本家とはほとんど関わりもない末席
あまりにも遠すぎて、一族の立場にはいるけれど、私自身は本家の人とは親族でもない
ただ、先祖を辿れば本家のどこかに流れが繋がるらしいから、一族として迎えていただけているだけ
本当に、ただそれだけ
外にいる人から見たら、ただそれだけでしかない存在の人間が、本家に最も近しい人に取り入って、あまつさえ同居までしていると見られてしまう
だから離れた方がいい
成実さんと私の生きる世界は、もう違う
私の居場所はあなたの隣ではなくなってしまった
だから手を離さなければならないのに――私はまだ、この人の隣にいたいと我儘を抱えてしまっている
夢の中で私はずっと、小さくなる成実さんの背中を見つめているだけで
追いかけることも、行かないでと声を出すことも、出来なかった
*********************
「――夕華?」
翌朝、ぼーっとしていたところに、成実さんが声をかけてきた
慌てて返事をすると、心配そうな瞳が私を見下ろしている
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です
すみません、少しぼーっとして……」
「疲れが溜まったか?
毎日勉強と部活で大変だもんな
家事は俺がやるから、お前は自分のことに集中しろ」
「……はい、すみません」
お皿洗いを交代して、脱衣場へと向かう
洗濯機が回っている
今日は成実さんの講義は十時半くらいからだって言っていたし、朝はお任せしてしまおう
「成実さん、行ってきます」
「おう、行ってらっしゃい
気を付けろよー」
家を出るには早いけど、朝練を長めにできるからちょうどいい
何かを考えようとすると、成実さんのことが浮かんでしまうから
無心になっていられる時間が、最近は好きだった
ドアを開けたところで、見慣れない人達がいるのを見かけた
平日の早朝に、ただの住宅地に用がある人なんているだろうか
心の中で首を傾げながら、その人達がいる方向とは反対方向に歩く
心配しすぎかもしれないけど、一応、成実さんには連絡しておこう
「家の近くに見かけない人達が三人いるので、成実さんが外出する時は気をつけて下さい……と
これで伝わるかな」
家事の最中のようで、既読は付かない
私と代わってくれたんだし、当然か
スマホをポケットに戻して、駅へと急ぐ
私達三年生は今年が最後の大会になるし、悔いだけは残したくない
ちょっとくらいの無茶なら、やってやるべきだろう
駅のホームには、美術館で催す特別展のポスターが貼ってあった
「華道家、長尾景虎……
ううん、聞いた事ない名前だな……
名前からして明らかに戦国武将っぽくはあるけど、気のせいかな」
残念ながら顔写真などは載っていなかったし、すぐに電車が入ってきたせいで、そのポスターは私の脳内に残ることなく消えてしまった
早朝とはいえ、通勤客はそれなりにいる
でもいつもよりは人も少ないから、空いている席が一人分あって
遠慮なくそこに座って、電車に揺られていると
いつの間にか、私はぐっすりと眠ってしまって……
はっと目が覚めたら、降りる駅なんてとっくに通り過ぎていた
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