第四十二話 祝われる幸せ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「誕生日を教えてください!!」
四月上旬のとある夜
大学から帰ってきた成実さんに向かって、私はおかえりの直後に言った
「……は?」
「ですから、成実さんの誕生日を教えてください!」
「誕生日?
あれ、教えてなかったっけ」
「教えてもらってません」
いや、再会して相当な時間が経ってるのに知らなかった私も私なんだけど……
どうせ成実さんも私の誕生日は知らないだろうから、この期にお互いの誕生日を知っておこうと思ったわけだ
誕生日をお祝いするなんて、前世では風習がなかったから
「そっか、教えてなかったか
俺は六月の五日だ」
「へえ、六月五日……あれ?
あのー成実さん、私の教えてもらった記憶が間違いなければ、その日付って前世の成実さんの命日では……」
「……そうなんだよな
なぜか生まれ変わったら命日が誕生日になっちまってさ……」
なんて複雑な心境にさせられる誕生日になってしまったんだろう……
おめでとうって言われても素直に喜べないよね、さすがに……
「まあ、うちの両親はそんなこと知らないし、祝ってもらえること自体は嬉しかったから、気にしてねぇよ
むしろほら、俺は前世じゃ出生日が分からなかったからさ
たとえそれがかつての俺の命日だとしても、この世に生まれてきた日がはっきりしてるのは、嬉しいもんだよ」
「……そっか、そうですよね」
ソファに荷物を置いた成実さんが頷く
六月の五日、成実さんの誕生日
なんだか、更に成実さんを近くに感じられる気がした
「お前は?」
「私の誕生日は、五月の七日です」
「お前は前世の時と同じなんだな」
「あれ、そうでしたっけ?」
「そうだよ
お前が教えてくれたじゃねぇか
育ての親に預けられた時に、お前に関することが書かれたメモみたいなのが入ってたって
そのメモにお前の生まれた日も書いてあったんだろ」
「そう……でしたかね
すみません、前世の記憶は、戦国の世を生きた頃しかもう残ってないんです
前世の私が育った現代の記憶は、何一つ覚えていなくて……」
「そっか……
それでもいいさ、俺が知ってる夕華は、俺と一緒に戦国の世を駆け抜けた夕華だけなんだ
それに、現代の記憶が残ってたら、今のお前が混乱するだろ?」
「確かにそうかもしれないです
残ってなくて正解だったかもしれないですね」
乱世の頃の記憶は、現代とは明らかに違うから前世の記憶だと分かるけど、前世の私が経験した現代の記憶まで持っていたら、今世の私が混乱してしまったかもしれない
そういう意味では、乱世の頃の記憶だけで助かったと言えるだろう
「そっか、お前は五月か……
……来月じゃねぇか!!」
「あ、そうですね」
「忘れてたのかよ!?」
「誰かに祝ってもらったことが少ないので……小学生の頃から割と家で一人でしたし」
両親は私が小さい頃から海外を飛び回っていたから、誕生日はおろか、学校行事にだって参加したことはない
幸いにも私は先天的に前世の記憶があったから、一人でも生活はしていけたけれど、小学生が一人で暮らすのはきっと危ないことだっただろう
その証拠に、目の前の成実さんの表情が凍り付いている
「小学生が一人で?
親戚は、お前のじいちゃんやばあちゃんは!?」
「母方の祖父母は、母が結婚する時にはどちらも亡くなっていたそうで
父方の祖母は遠方に住んでいるので、私が一人だと知らなかったのかもしれません」
「なっ……!
……ああ、そうだった、末席の前当主夫妻は早死にしたって記録に残ってたな」
「あ、それでもお盆とお正月は父方の祖母の家に帰る時もありましたよ」
「帰らない時もあったのか?」
「ここ数年は本家の集まりに行くようになったので……」
「ばあさんが来たりしなかったのか」
その問いに、私はゆるゆると首を振った
そうしたくても出来なかったのだ
「父方の祖母は、足が悪いんです」
「そんな……
だからお前、そんなに小さい頃からずっと一人で……」
「育児放棄じゃないかって、警察が来たこともありましたね
あとは児相が来たりもしたっけな……」
我ながら大変な人生を送ってきたものだ
多分、私という人間はそういう星の下に生まれてしまうのだろう
でも私は、特にそれを嘆いたことも、悲しんだこともない
一人だったおかげで、自分がやりたいことを心置きなくやれたし、進路だって自分の好きなように選べた
担任には家庭の事情を話していたから、とても親身になってくれたし
「……もっと早く、お前と再会したかった」
「そうですね……
頼れる大人が近くにいなかったのは、確かに危なかったと思います
出会えたのであれば、早くに出会いたかったです
でも……私は、あのタイミングで出会えたからこそ、意味があったんだとも思うんです」
私達の恋は、子供がするものではない
大人に近かった高校生同士だったからこそ、続きを始められた
きっと、成実さんに会うまでは海夜が私を守ってくれたんだ
「だから成実さん、私が祝ってもらえなかった分まで、成実さんにお祝いしてほしいです
私も成実さんの誕生日、いっぱいお祝いしますから!」
何をしてあげたら喜ぶだろう、今の成実さんは
そんなことを考えるのも嬉しくて、楽しくて
海夜の誕生日だって祝わなかったわけじゃないけど、やっぱり成実さんは特別だから
世界で一番大好きな、私の恋人だから……
「……当たり前だ!
こうなりゃ梵たちも巻き込んでやる
伊達家の姫様が誕生日を祝われたことがないなんて、家中がひっくり返る大騒動だからな!」
「あ、でもお手柔らかに……」
「全力で祝ってやるから覚悟しろ」
「ひ、ひええ……」
分かっていたけど、こうなるよね……
でも、それだけ皆が私のことを大切に思ってくれてるんだって証拠だと思うから……甘んじてお祝いされておこう
四月上旬のとある夜
大学から帰ってきた成実さんに向かって、私はおかえりの直後に言った
「……は?」
「ですから、成実さんの誕生日を教えてください!」
「誕生日?
あれ、教えてなかったっけ」
「教えてもらってません」
いや、再会して相当な時間が経ってるのに知らなかった私も私なんだけど……
どうせ成実さんも私の誕生日は知らないだろうから、この期にお互いの誕生日を知っておこうと思ったわけだ
誕生日をお祝いするなんて、前世では風習がなかったから
「そっか、教えてなかったか
俺は六月の五日だ」
「へえ、六月五日……あれ?
あのー成実さん、私の教えてもらった記憶が間違いなければ、その日付って前世の成実さんの命日では……」
「……そうなんだよな
なぜか生まれ変わったら命日が誕生日になっちまってさ……」
なんて複雑な心境にさせられる誕生日になってしまったんだろう……
おめでとうって言われても素直に喜べないよね、さすがに……
「まあ、うちの両親はそんなこと知らないし、祝ってもらえること自体は嬉しかったから、気にしてねぇよ
むしろほら、俺は前世じゃ出生日が分からなかったからさ
たとえそれがかつての俺の命日だとしても、この世に生まれてきた日がはっきりしてるのは、嬉しいもんだよ」
「……そっか、そうですよね」
ソファに荷物を置いた成実さんが頷く
六月の五日、成実さんの誕生日
なんだか、更に成実さんを近くに感じられる気がした
「お前は?」
「私の誕生日は、五月の七日です」
「お前は前世の時と同じなんだな」
「あれ、そうでしたっけ?」
「そうだよ
お前が教えてくれたじゃねぇか
育ての親に預けられた時に、お前に関することが書かれたメモみたいなのが入ってたって
そのメモにお前の生まれた日も書いてあったんだろ」
「そう……でしたかね
すみません、前世の記憶は、戦国の世を生きた頃しかもう残ってないんです
前世の私が育った現代の記憶は、何一つ覚えていなくて……」
「そっか……
それでもいいさ、俺が知ってる夕華は、俺と一緒に戦国の世を駆け抜けた夕華だけなんだ
それに、現代の記憶が残ってたら、今のお前が混乱するだろ?」
「確かにそうかもしれないです
残ってなくて正解だったかもしれないですね」
乱世の頃の記憶は、現代とは明らかに違うから前世の記憶だと分かるけど、前世の私が経験した現代の記憶まで持っていたら、今世の私が混乱してしまったかもしれない
そういう意味では、乱世の頃の記憶だけで助かったと言えるだろう
「そっか、お前は五月か……
……来月じゃねぇか!!」
「あ、そうですね」
「忘れてたのかよ!?」
「誰かに祝ってもらったことが少ないので……小学生の頃から割と家で一人でしたし」
両親は私が小さい頃から海外を飛び回っていたから、誕生日はおろか、学校行事にだって参加したことはない
幸いにも私は先天的に前世の記憶があったから、一人でも生活はしていけたけれど、小学生が一人で暮らすのはきっと危ないことだっただろう
その証拠に、目の前の成実さんの表情が凍り付いている
「小学生が一人で?
親戚は、お前のじいちゃんやばあちゃんは!?」
「母方の祖父母は、母が結婚する時にはどちらも亡くなっていたそうで
父方の祖母は遠方に住んでいるので、私が一人だと知らなかったのかもしれません」
「なっ……!
……ああ、そうだった、末席の前当主夫妻は早死にしたって記録に残ってたな」
「あ、それでもお盆とお正月は父方の祖母の家に帰る時もありましたよ」
「帰らない時もあったのか?」
「ここ数年は本家の集まりに行くようになったので……」
「ばあさんが来たりしなかったのか」
その問いに、私はゆるゆると首を振った
そうしたくても出来なかったのだ
「父方の祖母は、足が悪いんです」
「そんな……
だからお前、そんなに小さい頃からずっと一人で……」
「育児放棄じゃないかって、警察が来たこともありましたね
あとは児相が来たりもしたっけな……」
我ながら大変な人生を送ってきたものだ
多分、私という人間はそういう星の下に生まれてしまうのだろう
でも私は、特にそれを嘆いたことも、悲しんだこともない
一人だったおかげで、自分がやりたいことを心置きなくやれたし、進路だって自分の好きなように選べた
担任には家庭の事情を話していたから、とても親身になってくれたし
「……もっと早く、お前と再会したかった」
「そうですね……
頼れる大人が近くにいなかったのは、確かに危なかったと思います
出会えたのであれば、早くに出会いたかったです
でも……私は、あのタイミングで出会えたからこそ、意味があったんだとも思うんです」
私達の恋は、子供がするものではない
大人に近かった高校生同士だったからこそ、続きを始められた
きっと、成実さんに会うまでは海夜が私を守ってくれたんだ
「だから成実さん、私が祝ってもらえなかった分まで、成実さんにお祝いしてほしいです
私も成実さんの誕生日、いっぱいお祝いしますから!」
何をしてあげたら喜ぶだろう、今の成実さんは
そんなことを考えるのも嬉しくて、楽しくて
海夜の誕生日だって祝わなかったわけじゃないけど、やっぱり成実さんは特別だから
世界で一番大好きな、私の恋人だから……
「……当たり前だ!
こうなりゃ梵たちも巻き込んでやる
伊達家の姫様が誕生日を祝われたことがないなんて、家中がひっくり返る大騒動だからな!」
「あ、でもお手柔らかに……」
「全力で祝ってやるから覚悟しろ」
「ひ、ひええ……」
分かっていたけど、こうなるよね……
でも、それだけ皆が私のことを大切に思ってくれてるんだって証拠だと思うから……甘んじてお祝いされておこう
1/4ページ
