第四十一話 幸せを阻む壁
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
春休みが終わろうとしている四月の一日
私は伊達家の別邸にお邪魔していた
「……わぁ」
リクルートスーツを着て、大学生らしく腕時計も着けて、ネクタイも完璧な成実さん
高校の制服がブレザーだったおかげで、ネクタイは慣れっこらしい
……かっこいいなぁ、ドキドキしちゃう
「……おーい、夕華ー?」
「はっ!?
は、はい!」
「見とれすぎ」
喉の奥で笑った成実さんが私の頭を撫でる
見とれてなんて……いや、見とれていたか……
「成実もとうとう大学生か……
俺が歳を取るわけだ」
「ジジくせぇぞ小十郎……」
「軽く親戚のおじさん気分ですね、小十郎さん……」
「政宗様が大学に入学した時は、さながら親のように感慨深げにしておられましたがな」
「綱元!!」
「まだお東様とは対立中でしたし、大殿は海外に長期出張中でしたので、政宗様の入学式は小十郎様が保護者席で見守っておられまして」
「こいつ、確か梵の高校の卒業式もいなかったか?」
「いたぞ
そして泣いていた」
「お前泣いてやがったのか、小十郎」
「……記憶にございませんな」
「その誤魔化しは肯定だぞ」
視線が明後日の方向だった時点で肯定だと思う
でも確かに、小さい頃から兄様を見守っていたのだとしたら、感慨もひとしおなのかも
「えー、それなら、私の卒業式も来てほしいです!
……なんちゃって」
ただの冗談だった
いや、多少は本気だった
うちは両親とも海外を飛び回っているので、卒業式の日など教えたことはない
同じ理由で入学式も同様
……なので、誰かに卒業式に来て欲しいな、なんて思っていたのは事実
ただ──ここまで空気が変わってしまうとは、思っていなかっただけで
「なるほど、夕華様の……」
「卒業式か……」
「来年の三月一日……」
「あ、あれ?」
「つかぬ事をお聞きしますが、保護者の出席はひと家族につき何人までで?」
「いえ小十郎様、人数制限はないかと」
「三人までならいけるだろ」
「おい誰を抜いたんだ今?」
「「成実」」
「だろうと思ったよ!!
行くからな!?
絶対俺も行くからな!?」
来るのかー!
いや嬉しいけど、嬉しいけど保護者席が騒ぎにならないかが心配だな!?
「……一角だけ顔面国宝級が四人か……」
「顔面国宝?」
「なんで首傾げてんだよ、お前がその最たるもんだろうが、梵」
「隣で他人事のような顔をしておられますが、小十郎様も入っておられますからね?」
「いやもうここにいる皆さんのことですからね」
少なくとも、小十郎さん以外の三人は、大なり小なりイケメンである自覚があられるので、言わずもがなだけど
とびきり驚いておられるけど、小十郎さんだって充分にかっこいいんだからな……!
「さて、そろそろ行くか」
腕時計で時間を確認した成実さんが、鞄を持ってリビングを出ようとする
「くっ……!
私も行きたかった……!」
「大丈夫大丈夫、人がわんさかいすぎて、俺がどことか絶対分かんないから来なくていい」
「そもそも誰も行かねぇしな」
「昼飯の用意はしといてやるぜ」
「俺は明日から出勤なので今日という貴重な休みを謳歌するのに忙しいからな」
あー……うん、そうだよね、成実さんの扱いってこうだよね
成実さん自身も慣れっこなのか、気にした風もなく別邸を出ていった
「……ちなみになんですけど」
「Um?」
「私の入学式だったら……?」
「一番高いスーツを引っ張り出します」
「Suitを新調する」
「最前列をもぎ取りますし、成実に一眼レフと三脚を持たせます」
「意気込みが違った……」
どうして成実さんと私でこうも何もかもが違うんだ……
何が恐ろしいって、誰一人として目が笑ってないことだ
つまり全員ガチでそれをやろうとしている
……私も入学式は一人で行こうかな
「婆娑羅大にご入学となれば、入学式は毎年、四月一日ですからな
スケジュールも押さえやすいです」
「えっ、そうなんですか!?」
「政宗様も四月一日でしたし、この綱元の入学式も四月一日でしたからな
あの大学は毎年、四月一日が入学式なので」
「知らなかった……」
ってことは、私が何を言わずとも保護者の一角がとんでもないことになるわけか……
もうこれは諦めた方がいいのかもしれない
「……さて、雑談もこのくらいにして」
「だな、始めるか」
「国語と生物基礎要員が不在ですが、我々でも十分カバー可能ですからな」
「……ほんとに始めるんですね」
「受験生になってバイトも辞めたお前にゃ、時間だけはたっぷりあるからな」
「では──春休み明け一発目の実力テスト対策講座、開講です」
くそぅ……兄様は大学生真っ只中だし、日曜だから社会人も休みだし……!
逃げ場がない……!
「今日は政宗様がチョコタルトをご用意しておりますので、頑張りましょう、夕華様」
「兄様のチョコタルト!?」
「サボり魔に食わせるsweetsはねぇぞ?」
「やります!
頑張ります!!」
いい子だ、と兄様が満足そうに頷く
食べ物に釣られた感じが否めないけど、人間やっぱり頑張るには理由がいると思うんだ
兄様のチョコタルトを食べるために、頑張るぞー!!
私は伊達家の別邸にお邪魔していた
「……わぁ」
リクルートスーツを着て、大学生らしく腕時計も着けて、ネクタイも完璧な成実さん
高校の制服がブレザーだったおかげで、ネクタイは慣れっこらしい
……かっこいいなぁ、ドキドキしちゃう
「……おーい、夕華ー?」
「はっ!?
は、はい!」
「見とれすぎ」
喉の奥で笑った成実さんが私の頭を撫でる
見とれてなんて……いや、見とれていたか……
「成実もとうとう大学生か……
俺が歳を取るわけだ」
「ジジくせぇぞ小十郎……」
「軽く親戚のおじさん気分ですね、小十郎さん……」
「政宗様が大学に入学した時は、さながら親のように感慨深げにしておられましたがな」
「綱元!!」
「まだお東様とは対立中でしたし、大殿は海外に長期出張中でしたので、政宗様の入学式は小十郎様が保護者席で見守っておられまして」
「こいつ、確か梵の高校の卒業式もいなかったか?」
「いたぞ
そして泣いていた」
「お前泣いてやがったのか、小十郎」
「……記憶にございませんな」
「その誤魔化しは肯定だぞ」
視線が明後日の方向だった時点で肯定だと思う
でも確かに、小さい頃から兄様を見守っていたのだとしたら、感慨もひとしおなのかも
「えー、それなら、私の卒業式も来てほしいです!
……なんちゃって」
ただの冗談だった
いや、多少は本気だった
うちは両親とも海外を飛び回っているので、卒業式の日など教えたことはない
同じ理由で入学式も同様
……なので、誰かに卒業式に来て欲しいな、なんて思っていたのは事実
ただ──ここまで空気が変わってしまうとは、思っていなかっただけで
「なるほど、夕華様の……」
「卒業式か……」
「来年の三月一日……」
「あ、あれ?」
「つかぬ事をお聞きしますが、保護者の出席はひと家族につき何人までで?」
「いえ小十郎様、人数制限はないかと」
「三人までならいけるだろ」
「おい誰を抜いたんだ今?」
「「成実」」
「だろうと思ったよ!!
行くからな!?
絶対俺も行くからな!?」
来るのかー!
いや嬉しいけど、嬉しいけど保護者席が騒ぎにならないかが心配だな!?
「……一角だけ顔面国宝級が四人か……」
「顔面国宝?」
「なんで首傾げてんだよ、お前がその最たるもんだろうが、梵」
「隣で他人事のような顔をしておられますが、小十郎様も入っておられますからね?」
「いやもうここにいる皆さんのことですからね」
少なくとも、小十郎さん以外の三人は、大なり小なりイケメンである自覚があられるので、言わずもがなだけど
とびきり驚いておられるけど、小十郎さんだって充分にかっこいいんだからな……!
「さて、そろそろ行くか」
腕時計で時間を確認した成実さんが、鞄を持ってリビングを出ようとする
「くっ……!
私も行きたかった……!」
「大丈夫大丈夫、人がわんさかいすぎて、俺がどことか絶対分かんないから来なくていい」
「そもそも誰も行かねぇしな」
「昼飯の用意はしといてやるぜ」
「俺は明日から出勤なので今日という貴重な休みを謳歌するのに忙しいからな」
あー……うん、そうだよね、成実さんの扱いってこうだよね
成実さん自身も慣れっこなのか、気にした風もなく別邸を出ていった
「……ちなみになんですけど」
「Um?」
「私の入学式だったら……?」
「一番高いスーツを引っ張り出します」
「Suitを新調する」
「最前列をもぎ取りますし、成実に一眼レフと三脚を持たせます」
「意気込みが違った……」
どうして成実さんと私でこうも何もかもが違うんだ……
何が恐ろしいって、誰一人として目が笑ってないことだ
つまり全員ガチでそれをやろうとしている
……私も入学式は一人で行こうかな
「婆娑羅大にご入学となれば、入学式は毎年、四月一日ですからな
スケジュールも押さえやすいです」
「えっ、そうなんですか!?」
「政宗様も四月一日でしたし、この綱元の入学式も四月一日でしたからな
あの大学は毎年、四月一日が入学式なので」
「知らなかった……」
ってことは、私が何を言わずとも保護者の一角がとんでもないことになるわけか……
もうこれは諦めた方がいいのかもしれない
「……さて、雑談もこのくらいにして」
「だな、始めるか」
「国語と生物基礎要員が不在ですが、我々でも十分カバー可能ですからな」
「……ほんとに始めるんですね」
「受験生になってバイトも辞めたお前にゃ、時間だけはたっぷりあるからな」
「では──春休み明け一発目の実力テスト対策講座、開講です」
くそぅ……兄様は大学生真っ只中だし、日曜だから社会人も休みだし……!
逃げ場がない……!
「今日は政宗様がチョコタルトをご用意しておりますので、頑張りましょう、夕華様」
「兄様のチョコタルト!?」
「サボり魔に食わせるsweetsはねぇぞ?」
「やります!
頑張ります!!」
いい子だ、と兄様が満足そうに頷く
食べ物に釣られた感じが否めないけど、人間やっぱり頑張るには理由がいると思うんだ
兄様のチョコタルトを食べるために、頑張るぞー!!
1/4ページ