第三十九話 両親の逆挨拶
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それは、学年末試験も終わった春休みのこと
久しぶりに伊達家にお邪魔していた私は、そこで何とも奇妙な光景に出会ってしまった
「……えーと」
リビングに通されたらこれだよ、私どうしたらいいんだ
「あの……原田さん……」
「すみません……
つい先程、夕華様の御両親が……」
「はい……今日が帰国っていうのは私も知ってましたけど……」
「何故か……我が家にいらっしゃっておりまして……」
原田さんは会った時から胃の辺りをさすっていた
兄様と小十郎さんは所要で出掛けていて不在
綱元さんは例によってこの状況を楽しんでいる
「……どうぞ」
「ありがとうございます……」
コップ一杯の水と胃薬を渡しておく
それにしても……
「いやこれ……成実さんがやるなら分かりますよ……?
なんでうちの親が頭下げてるんですか……?」
……そう、そこが奇妙な光景と私が思った原因
「娘さんを下さい!」と成実さんが言うのなら分かる
しかし現実は全く逆
「うちの娘でよければ貰ってください!」である
どういうことだ、そこまでしないと私は誰かと結婚すら出来ないと思われていたのか、全くもって心外である
「あら夕華!
ちょうど良かったわ、今あなたの永久就職先をね」
「何言ってんのこの人」
成実さんの訴える目とかち合う
これは間違いなくSOSのサインだ
「一体、何がどうなってそんな話になるの」
「妙な輩にあんたを取られるくらいなら、さっさと成実くんに貰ってもらおうと思って」
「妙な輩って……」
どう考えても豊臣様御一行しか浮かばない
そこまで根に持ってたのか
「父さん聞いたぞ
お前を巡って最上派と争ったって」
「ん?」
「あんたが政道君とがいいって言うなら止めはしないけど──」
「んん?」
「でも、あんた成実くんと付き合ってるんだし、ならもう早いとこ安全圏に匿ってもらった方が……」
「ちょっっっと待って?」
私はこれ、頭を抱えればいいのか、冷静になれと親を引っ叩けぱいいのか、どっちなんだ
成実さんは頭を抱えてため息をついた
じゃあ、私が引っ叩けばいいのか?
いや違うか
「どこからつっこめばいいのやら分からないんだけど、とりあえず落ち着いてほしい
最上派とのあれは、熾烈な親子喧嘩に巻き込まれただけだから大丈夫
豊臣さんたちも私から完全に離れてくれたから安心していい
あと私は大学出てちゃんと働きますので」
「夕華、永久就職ってそういう事じゃないと思う」
「えっ」
綱元さんが吹き出した
完全に外野で楽しんでたな、この人は……
「なぁーんだ!
ただの勘違いだったのね!」
「心配して損したな」
「いや案外、損とまではいかないもんでしたけど」
「もう!」
叩こうとした手をあっさり掴まれて、くいっと引っ張られる
前のめりになったところで受け止められ、そのまま抱えられて、成実さんの膝の上に乗せられた
「とりあえず、こいつを危険に晒すような状況はもうないので
安心してください」
「でもあなた達、このまま結婚するんでしょ?」
「うぇっ!?」
「……や、まぁ、そうですけど……」
「成実さん!」
「本当のことだろ?
そりゃ、お前が嫌なら……」
「い、嫌じゃないです、けど……」
「うん、つーか普通にお前を手放すのは俺が無理だ
諦めて俺の物になっててくれ」
この人、本当に身内の前だと遠慮というものがない
サラリとこういう、歯の浮くようなセリフを真顔で言うもんだから、こっちの心臓にとても悪い
「とすると、近いうちに成実くんのご実家に伺った方がいいわねぇ
私たちが日本にいる間になるから、今週中かしら」
「相変わらず世界飛び回ってるんすね……」
「迷惑かけちゃってごめんね
でも夕華のことを任せられる存在がいて助かってるのよ
いつかお礼しなくちゃね」
「いや、お礼とかそんなのはいいんで、あの……
こういう形だと俺の体裁が……」
……確かに、成実さんとしてはきちんと「嫁にください」と言いたいんだろう
親の方もそれは分かっているのか、「そうよね」と納得してくれた
「とはいえ、二人ともまだ学生ですし、未成年です
せめて成実が就職してからでないと」
「そうだな
俺も誰かと結婚したら、さすがにここを出ようと思ってたところだ」
「そうなんですか?」
「そりゃな
結婚してまでここにいるのもおかしいだろ、家庭があるのによ」
「それもそうか……」
「……待てるか?」
真剣な瞳の成実さんと目が合う
待てるか、とは何か──なんて、言われなくても分かる
「……私が何年間、成実さんを待ってたと思ってるんですか?」
「お前ならそう言ってくれると思ってた」
「ちゃんと待ちますよ
待つのは得意になっちゃったんです、誰かさんのお陰で」
「そりゃ俺のことか?」
「秘密です」
むう、とも、ぐっ、とも取りづらいような声を上げて成実さんが黙り込む
まぁ図星ですもんね
そんな彼を見て、とうとう私も吹き出してしまうのだった
久しぶりに伊達家にお邪魔していた私は、そこで何とも奇妙な光景に出会ってしまった
「……えーと」
リビングに通されたらこれだよ、私どうしたらいいんだ
「あの……原田さん……」
「すみません……
つい先程、夕華様の御両親が……」
「はい……今日が帰国っていうのは私も知ってましたけど……」
「何故か……我が家にいらっしゃっておりまして……」
原田さんは会った時から胃の辺りをさすっていた
兄様と小十郎さんは所要で出掛けていて不在
綱元さんは例によってこの状況を楽しんでいる
「……どうぞ」
「ありがとうございます……」
コップ一杯の水と胃薬を渡しておく
それにしても……
「いやこれ……成実さんがやるなら分かりますよ……?
なんでうちの親が頭下げてるんですか……?」
……そう、そこが奇妙な光景と私が思った原因
「娘さんを下さい!」と成実さんが言うのなら分かる
しかし現実は全く逆
「うちの娘でよければ貰ってください!」である
どういうことだ、そこまでしないと私は誰かと結婚すら出来ないと思われていたのか、全くもって心外である
「あら夕華!
ちょうど良かったわ、今あなたの永久就職先をね」
「何言ってんのこの人」
成実さんの訴える目とかち合う
これは間違いなくSOSのサインだ
「一体、何がどうなってそんな話になるの」
「妙な輩にあんたを取られるくらいなら、さっさと成実くんに貰ってもらおうと思って」
「妙な輩って……」
どう考えても豊臣様御一行しか浮かばない
そこまで根に持ってたのか
「父さん聞いたぞ
お前を巡って最上派と争ったって」
「ん?」
「あんたが政道君とがいいって言うなら止めはしないけど──」
「んん?」
「でも、あんた成実くんと付き合ってるんだし、ならもう早いとこ安全圏に匿ってもらった方が……」
「ちょっっっと待って?」
私はこれ、頭を抱えればいいのか、冷静になれと親を引っ叩けぱいいのか、どっちなんだ
成実さんは頭を抱えてため息をついた
じゃあ、私が引っ叩けばいいのか?
いや違うか
「どこからつっこめばいいのやら分からないんだけど、とりあえず落ち着いてほしい
最上派とのあれは、熾烈な親子喧嘩に巻き込まれただけだから大丈夫
豊臣さんたちも私から完全に離れてくれたから安心していい
あと私は大学出てちゃんと働きますので」
「夕華、永久就職ってそういう事じゃないと思う」
「えっ」
綱元さんが吹き出した
完全に外野で楽しんでたな、この人は……
「なぁーんだ!
ただの勘違いだったのね!」
「心配して損したな」
「いや案外、損とまではいかないもんでしたけど」
「もう!」
叩こうとした手をあっさり掴まれて、くいっと引っ張られる
前のめりになったところで受け止められ、そのまま抱えられて、成実さんの膝の上に乗せられた
「とりあえず、こいつを危険に晒すような状況はもうないので
安心してください」
「でもあなた達、このまま結婚するんでしょ?」
「うぇっ!?」
「……や、まぁ、そうですけど……」
「成実さん!」
「本当のことだろ?
そりゃ、お前が嫌なら……」
「い、嫌じゃないです、けど……」
「うん、つーか普通にお前を手放すのは俺が無理だ
諦めて俺の物になっててくれ」
この人、本当に身内の前だと遠慮というものがない
サラリとこういう、歯の浮くようなセリフを真顔で言うもんだから、こっちの心臓にとても悪い
「とすると、近いうちに成実くんのご実家に伺った方がいいわねぇ
私たちが日本にいる間になるから、今週中かしら」
「相変わらず世界飛び回ってるんすね……」
「迷惑かけちゃってごめんね
でも夕華のことを任せられる存在がいて助かってるのよ
いつかお礼しなくちゃね」
「いや、お礼とかそんなのはいいんで、あの……
こういう形だと俺の体裁が……」
……確かに、成実さんとしてはきちんと「嫁にください」と言いたいんだろう
親の方もそれは分かっているのか、「そうよね」と納得してくれた
「とはいえ、二人ともまだ学生ですし、未成年です
せめて成実が就職してからでないと」
「そうだな
俺も誰かと結婚したら、さすがにここを出ようと思ってたところだ」
「そうなんですか?」
「そりゃな
結婚してまでここにいるのもおかしいだろ、家庭があるのによ」
「それもそうか……」
「……待てるか?」
真剣な瞳の成実さんと目が合う
待てるか、とは何か──なんて、言われなくても分かる
「……私が何年間、成実さんを待ってたと思ってるんですか?」
「お前ならそう言ってくれると思ってた」
「ちゃんと待ちますよ
待つのは得意になっちゃったんです、誰かさんのお陰で」
「そりゃ俺のことか?」
「秘密です」
むう、とも、ぐっ、とも取りづらいような声を上げて成実さんが黙り込む
まぁ図星ですもんね
そんな彼を見て、とうとう私も吹き出してしまうのだった
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