閑話四
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「──最っ悪だ」
伊達家──の別邸に戻るなり、俺はそう悪態をついて頭を抱えた
まさか帰りの電車で入れ違いになることになるなんて思うか?俺は思わなかった
いや、そりゃあ、やましい事をしていたわけではないんだけど
……俺の実家に帰ってただけで
当然だが、俺にもちゃんと実家ってものがある
とはいえ普段の生活は別邸で過ごしてるから、盆と正月に顔を出す程度
俺がなぜ、別邸で生活しているかと言うと──まぁ、幼い頃の名残が半分と、前世の習慣が半分
もちろん、俺に別邸で生活してくれって言ってきたのは大殿──現当主の輝宗様で、輝宗様は梵が少しでも心穏やかに過ごせるようにって意味で俺に頼んだんだろう
それに「護衛」の意味を付けちまったのは、相変わらず梵には過保護な小十郎
それも梵とお東様の関係が修復されて、必要なくなったし
もうそろそろ別邸住まいも辞めていいんじゃねぇか?という話がふらっと浮上したわけで
……話が逸れた、と一人で押し問答をしていると、リビングから声が掛かった
「成実、そこで何やってる?」
「小十郎……」
「オメェ、まさか……」
「ああ違う!
違うぞ、確かに本邸に一瞬呼ばれたのは間違いねぇが、やらかしたのはそっちでじゃない!」
「やらかしたのは事実なんだな」
「うぐっ……まぁ……」
いや無理だ、小十郎相手に隠し事なんざ通用しねぇ
俺ってやつは顔に出やすいらしいしな……
「俺、夕華と帰りの電車で入れ違いになってさぁ……」
「それが?」
「……あの電車、夕華の親父さんとお袋さんが一緒に乗ってた気がするんだよな」
「は?」
「おい小十郎?
お前、あいつの親がどういう性格してるか分かってるよな?」
何を「話が見えねぇ」みたいな顔をしていやがる
俺だって知ってるんだぞ、夕華の両親──厳密にはお袋さんの性格が、限りなく伊達家の血筋だって
つまり何が起きるか
「俺がぶっ飛ばされるか、夕華とセットで揶揄われるか……」
「あのご夫妻、帰国なされておられたのか」
「んー、多分……いや、俺もちょっと自信なくなってきた……
けどあれは俺の記憶が正しけりゃ、夕華の両親なんだけど──」
……問題は、夕華にそれを伝えられずに終わってることと、多分あいつも親に俺と付き合ってるって言ってないこと
こりゃバレた時がひと騒動あるぞ……
「で、何が最悪だったんだ?」
「見りゃ分かるだろ!?
この格好だよ!!
あいつと電車で入れ違いになるって分かってたら、こんなダセェ学校指定ジャージで出歩かねぇっつーの!」
「そもそも何故それを選んだんだ」
「体育の授業がなくなったせいで、使わなくなっちまってさ
もはや部屋着と化してた」
「……やましいことはしちゃいねぇだろうな?」
「とことん信用ねぇのな、俺」
してねぇよ、高校に置き去りにしてた剣道の道具を取りに行っただけで、なんだこの言われよう
俺が、前世を含めて夕華一筋数十年のこの俺が?
夕華以外の女に手を出すとでも思ったのか?
「はぁ……風呂入ってくる」
「まだ掃除もしてねぇぞ」
「最っ悪だ……」
……掃除当番、俺だった
* * *
「──たっだいまー!」
「元気にしてたか?」
元気な声と穏やかな低い声が一緒になってリビングに入ってくる
その姿は、紛れもなく私の両親だった
「おかえり……あれ!?
帰国、今日だっけ!?」
「本当は来週の予定だったけど、早めに帰って来られそうでね
はい、お土産」
「ありがと……」
大量の紙袋がテーブルを陣取って、お母さんが洗面所へ向かう
かと思いきや、洗面所から顔だけ出したお母さんは
「あんた、成実くんと仲が良いのね?」
「へっ!?」
「ほら、帰りの電車!
入れ違いになったの、成実くんだったでしょ」
「どこから乗ってたの!?
って空港からか……」
そんで同じ電車に乗ってたのか……
「一緒に乗ってたなら、声掛けてくれたら良かったのに」
「んー?
お友達と楽しそうにしてたから、あとで声掛けようと思ったのよ
まさか駅に着いたら、お友達は自転車で、あなたがタクシーで走り去るとは思わなかったけど」
「……大量に買いすぎたもので……」
歩いて帰りたくなかったんだ……
だってめちゃくちゃ重いもん……
「成実くんと付き合ってる?」
「うぇっ!?」
「えっ」
動揺したのは、私だけでなくお父さんも
「夕華に……彼氏……!?」
「そりゃ、こーんなに可愛くて優しい女の子よ?
モテなきゃおかしいでしょ、あなた」
「おかしくはないよ!?
生まれて一度も告白されたことなかったし!」
「なかったってことは、とうとう告白されたのね」
「げ、言質……!」
「相手は誰だ?
学校の人か、クラスメイトか?」
「え、ええと……」
私に彼氏が出来たのがそんなにショックなのか、お父さん……
なんて必死な目を……
「……し、成実さんです」
「成実くん?」
「伊達成実さんです!
分家の、第二席の!
実元さんの一人息子の!」
「大物!!」
「成実くんを仕留めるなんて……恐ろしい子……」
仕留める──と言うより、ようやく出会えたと言う方が正しい
私が彼と初めてお付き合いしたのは、それこそ私が本家の姫だった乱世の頃
……それでも、今や分家の末席の家の人間なのだから、不釣り合いなのは確かか
「……大丈夫だよ、二人とも
ちゃんと、自分の立場は分かってるから──」
これから成実さんは、沢山の分家の女性陣との縁談が舞い込むだろう
伊達家は、一族の中で婚姻を繰り返して、同族会社を築き上げてきた
……あの頃とは真逆だ、乱世の頃は他家との婚姻で版図を広げてきたから
だから──私には覚悟が必要なのだ
いつ成実さんと切り離されてもいいように、別れるための覚悟が──
伊達家──の別邸に戻るなり、俺はそう悪態をついて頭を抱えた
まさか帰りの電車で入れ違いになることになるなんて思うか?俺は思わなかった
いや、そりゃあ、やましい事をしていたわけではないんだけど
……俺の実家に帰ってただけで
当然だが、俺にもちゃんと実家ってものがある
とはいえ普段の生活は別邸で過ごしてるから、盆と正月に顔を出す程度
俺がなぜ、別邸で生活しているかと言うと──まぁ、幼い頃の名残が半分と、前世の習慣が半分
もちろん、俺に別邸で生活してくれって言ってきたのは大殿──現当主の輝宗様で、輝宗様は梵が少しでも心穏やかに過ごせるようにって意味で俺に頼んだんだろう
それに「護衛」の意味を付けちまったのは、相変わらず梵には過保護な小十郎
それも梵とお東様の関係が修復されて、必要なくなったし
もうそろそろ別邸住まいも辞めていいんじゃねぇか?という話がふらっと浮上したわけで
……話が逸れた、と一人で押し問答をしていると、リビングから声が掛かった
「成実、そこで何やってる?」
「小十郎……」
「オメェ、まさか……」
「ああ違う!
違うぞ、確かに本邸に一瞬呼ばれたのは間違いねぇが、やらかしたのはそっちでじゃない!」
「やらかしたのは事実なんだな」
「うぐっ……まぁ……」
いや無理だ、小十郎相手に隠し事なんざ通用しねぇ
俺ってやつは顔に出やすいらしいしな……
「俺、夕華と帰りの電車で入れ違いになってさぁ……」
「それが?」
「……あの電車、夕華の親父さんとお袋さんが一緒に乗ってた気がするんだよな」
「は?」
「おい小十郎?
お前、あいつの親がどういう性格してるか分かってるよな?」
何を「話が見えねぇ」みたいな顔をしていやがる
俺だって知ってるんだぞ、夕華の両親──厳密にはお袋さんの性格が、限りなく伊達家の血筋だって
つまり何が起きるか
「俺がぶっ飛ばされるか、夕華とセットで揶揄われるか……」
「あのご夫妻、帰国なされておられたのか」
「んー、多分……いや、俺もちょっと自信なくなってきた……
けどあれは俺の記憶が正しけりゃ、夕華の両親なんだけど──」
……問題は、夕華にそれを伝えられずに終わってることと、多分あいつも親に俺と付き合ってるって言ってないこと
こりゃバレた時がひと騒動あるぞ……
「で、何が最悪だったんだ?」
「見りゃ分かるだろ!?
この格好だよ!!
あいつと電車で入れ違いになるって分かってたら、こんなダセェ学校指定ジャージで出歩かねぇっつーの!」
「そもそも何故それを選んだんだ」
「体育の授業がなくなったせいで、使わなくなっちまってさ
もはや部屋着と化してた」
「……やましいことはしちゃいねぇだろうな?」
「とことん信用ねぇのな、俺」
してねぇよ、高校に置き去りにしてた剣道の道具を取りに行っただけで、なんだこの言われよう
俺が、前世を含めて夕華一筋数十年のこの俺が?
夕華以外の女に手を出すとでも思ったのか?
「はぁ……風呂入ってくる」
「まだ掃除もしてねぇぞ」
「最っ悪だ……」
……掃除当番、俺だった
* * *
「──たっだいまー!」
「元気にしてたか?」
元気な声と穏やかな低い声が一緒になってリビングに入ってくる
その姿は、紛れもなく私の両親だった
「おかえり……あれ!?
帰国、今日だっけ!?」
「本当は来週の予定だったけど、早めに帰って来られそうでね
はい、お土産」
「ありがと……」
大量の紙袋がテーブルを陣取って、お母さんが洗面所へ向かう
かと思いきや、洗面所から顔だけ出したお母さんは
「あんた、成実くんと仲が良いのね?」
「へっ!?」
「ほら、帰りの電車!
入れ違いになったの、成実くんだったでしょ」
「どこから乗ってたの!?
って空港からか……」
そんで同じ電車に乗ってたのか……
「一緒に乗ってたなら、声掛けてくれたら良かったのに」
「んー?
お友達と楽しそうにしてたから、あとで声掛けようと思ったのよ
まさか駅に着いたら、お友達は自転車で、あなたがタクシーで走り去るとは思わなかったけど」
「……大量に買いすぎたもので……」
歩いて帰りたくなかったんだ……
だってめちゃくちゃ重いもん……
「成実くんと付き合ってる?」
「うぇっ!?」
「えっ」
動揺したのは、私だけでなくお父さんも
「夕華に……彼氏……!?」
「そりゃ、こーんなに可愛くて優しい女の子よ?
モテなきゃおかしいでしょ、あなた」
「おかしくはないよ!?
生まれて一度も告白されたことなかったし!」
「なかったってことは、とうとう告白されたのね」
「げ、言質……!」
「相手は誰だ?
学校の人か、クラスメイトか?」
「え、ええと……」
私に彼氏が出来たのがそんなにショックなのか、お父さん……
なんて必死な目を……
「……し、成実さんです」
「成実くん?」
「伊達成実さんです!
分家の、第二席の!
実元さんの一人息子の!」
「大物!!」
「成実くんを仕留めるなんて……恐ろしい子……」
仕留める──と言うより、ようやく出会えたと言う方が正しい
私が彼と初めてお付き合いしたのは、それこそ私が本家の姫だった乱世の頃
……それでも、今や分家の末席の家の人間なのだから、不釣り合いなのは確かか
「……大丈夫だよ、二人とも
ちゃんと、自分の立場は分かってるから──」
これから成実さんは、沢山の分家の女性陣との縁談が舞い込むだろう
伊達家は、一族の中で婚姻を繰り返して、同族会社を築き上げてきた
……あの頃とは真逆だ、乱世の頃は他家との婚姻で版図を広げてきたから
だから──私には覚悟が必要なのだ
いつ成実さんと切り離されてもいいように、別れるための覚悟が──
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