第二十九話 温かな心と体
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キッチンから美味しいにおいが漂ってくる
それに合わせて、小さくお腹が鳴った
楽しそうに鼻歌を歌いながら料理をする成実さんは、お母さんがよくつけていたエプロンを身につけている
……よくお似合いだったので隠し撮りしてやった
本当は手伝おうと思ったけれど、「いいから座ってろ」と言われ、カウンター越しに料理を作る成実さんを眺めていて
うちにある調理器具を確認した成実さんは、「鉄のフライパンがある……」と意外だったようで
手際よく料理を作っていく成実さんは、現代じゃないとお目にかかれなかったかもしれない
前世での成実さんが厨に立っていた記憶は、それほどないなぁ
けれど、全くないわけでもなくて、ふと思い立っては厨に向かって、余った材料で即席のおかずをつくったりしていたこともあったっけ
だから無意識に成実さんは料理が上手いと思っていたけど……
「………」
「っし、まぁこんなもんか」
スープの味付けを確認した成実さんが、満足そうに頷く
上手いという次元ではないような気がする、豪華な晩ご飯が完成してしまった……
「夕華ー、出来たぞー」
「はーい」
料理をテーブルに運んで、手を合わせる
お皿にきれいに盛られた料理は、正直に言うと
……負けました
「何これ美味しい……」
「だろ?
……なんで泣いてんだよ」
「いや……
成実さんに負けないだろうとか思ってた自分が恥ずかしくて……」
張り合う以前にすでに勝負がついていた
これは速攻で白旗だ
「そうかぁ?
俺はお前の作る料理の方が美味いと思うけどな」
「それ絶対にフィルターかかってますって……」
私に関して言えば、成実さんの発言は七割方信用ならない
極端な例で言えば……おそらく、料理で砂糖と塩を間違えても、文句を言わずに食べてくれそうなくらいには、私に死ぬほど甘い
「明日の朝は何食べたい?」
「さすがに朝は私が作りますよ」
「おー、夕華の手作り
んじゃ期待してる」
「ハードル高くしないでくださいよ!
すでにちょっと挫けてますから!」
「しょーがねーだろ、うめーんだもん、お前の料理
あ、口の端に米粒」
「えっ」
「動くなよー」
成実さんの顔が何故か近づいてきて
口の端の米粒を、事もあろうに舐めて取った
ついでに軽いキス付きで
「な、ななな……!」
「ごちそーさん」
「~~~っ!
成実さんッ!!」
「悪かったって!
そんなに怒るなよ!」
「怒ってません!
恥ずかしかっただけです!」
照れ隠しにならないだろうけど、料理を思いっ切り口に入れた
ああ、もう恥ずかしい!
成実さんはもう一度笑って、「ごめんごめん」と謝った
「風呂は沸かしてんのか?」
「この時期はシャワーで済ませちゃってます」
「そうか
じゃあ掃除する必要はねぇな」
「はい
あ、でも、湯舟に浸かりたいなら、沸かしていいですよ?」
「いや、俺も夏はシャワーで済ませてるよ
普通に暑いしな、湯舟なんざ浸かりたくねぇや」
先に食べ終えた成実さんが、手を合わせてお皿を流しに持っていく
戻ってきた成実さんは頬杖をついて、じっと私を見つめてきた
……ちょっと食べづらい
「あの……なんですか?」
「んーいや、別に
やっぱ夕華は、いつ見ても可愛いなーと思って」
「またそんなことを……」
この人は素面でこういうこと言ってくるから性質が悪い……
「私より可愛い子なんていっぱいいますよ」
「馬鹿言え
お前が可愛すぎてどうしようか考えてるうちに、朝になったこともあるってのに」
「そんなこと考えなくていいですから!
ちゃんと寝てください!」
「大丈夫だって、その次の日は休みだったから」
「そういうことじゃないですってば!」
ああもう、ネジのずれっぷりも健在だ……
もう直らない気がする
「お前はないのか、そういうのは?」
「……ないですね」
「そっかぁ……」
どことなく残念そうな成実さんに、むくっと罪悪感が生まれる
いや、別にこんなことで罪悪感を抱く必要は無いと思うんだけど……
「……成実さんが恋しくて、ちょっと眠れなかった時はありました」
「えっ」
……嘘は言ってない、言ってないはずなんだ
成実さんとは出会っていたにしろ、成実さんは記憶が無かったころだから
だから……恋しかったというよりは、心細かった、かもしれない
「今は?」
「……今?」
「もう寂しくないか?」
「寂しそうに見えましたか?」
「ちょっとだけ、な」
「……今は、寂しくないです」
良かった、と答える声は、どこまでも優しい色に満ちていた
それに合わせて、小さくお腹が鳴った
楽しそうに鼻歌を歌いながら料理をする成実さんは、お母さんがよくつけていたエプロンを身につけている
……よくお似合いだったので隠し撮りしてやった
本当は手伝おうと思ったけれど、「いいから座ってろ」と言われ、カウンター越しに料理を作る成実さんを眺めていて
うちにある調理器具を確認した成実さんは、「鉄のフライパンがある……」と意外だったようで
手際よく料理を作っていく成実さんは、現代じゃないとお目にかかれなかったかもしれない
前世での成実さんが厨に立っていた記憶は、それほどないなぁ
けれど、全くないわけでもなくて、ふと思い立っては厨に向かって、余った材料で即席のおかずをつくったりしていたこともあったっけ
だから無意識に成実さんは料理が上手いと思っていたけど……
「………」
「っし、まぁこんなもんか」
スープの味付けを確認した成実さんが、満足そうに頷く
上手いという次元ではないような気がする、豪華な晩ご飯が完成してしまった……
「夕華ー、出来たぞー」
「はーい」
料理をテーブルに運んで、手を合わせる
お皿にきれいに盛られた料理は、正直に言うと
……負けました
「何これ美味しい……」
「だろ?
……なんで泣いてんだよ」
「いや……
成実さんに負けないだろうとか思ってた自分が恥ずかしくて……」
張り合う以前にすでに勝負がついていた
これは速攻で白旗だ
「そうかぁ?
俺はお前の作る料理の方が美味いと思うけどな」
「それ絶対にフィルターかかってますって……」
私に関して言えば、成実さんの発言は七割方信用ならない
極端な例で言えば……おそらく、料理で砂糖と塩を間違えても、文句を言わずに食べてくれそうなくらいには、私に死ぬほど甘い
「明日の朝は何食べたい?」
「さすがに朝は私が作りますよ」
「おー、夕華の手作り
んじゃ期待してる」
「ハードル高くしないでくださいよ!
すでにちょっと挫けてますから!」
「しょーがねーだろ、うめーんだもん、お前の料理
あ、口の端に米粒」
「えっ」
「動くなよー」
成実さんの顔が何故か近づいてきて
口の端の米粒を、事もあろうに舐めて取った
ついでに軽いキス付きで
「な、ななな……!」
「ごちそーさん」
「~~~っ!
成実さんッ!!」
「悪かったって!
そんなに怒るなよ!」
「怒ってません!
恥ずかしかっただけです!」
照れ隠しにならないだろうけど、料理を思いっ切り口に入れた
ああ、もう恥ずかしい!
成実さんはもう一度笑って、「ごめんごめん」と謝った
「風呂は沸かしてんのか?」
「この時期はシャワーで済ませちゃってます」
「そうか
じゃあ掃除する必要はねぇな」
「はい
あ、でも、湯舟に浸かりたいなら、沸かしていいですよ?」
「いや、俺も夏はシャワーで済ませてるよ
普通に暑いしな、湯舟なんざ浸かりたくねぇや」
先に食べ終えた成実さんが、手を合わせてお皿を流しに持っていく
戻ってきた成実さんは頬杖をついて、じっと私を見つめてきた
……ちょっと食べづらい
「あの……なんですか?」
「んーいや、別に
やっぱ夕華は、いつ見ても可愛いなーと思って」
「またそんなことを……」
この人は素面でこういうこと言ってくるから性質が悪い……
「私より可愛い子なんていっぱいいますよ」
「馬鹿言え
お前が可愛すぎてどうしようか考えてるうちに、朝になったこともあるってのに」
「そんなこと考えなくていいですから!
ちゃんと寝てください!」
「大丈夫だって、その次の日は休みだったから」
「そういうことじゃないですってば!」
ああもう、ネジのずれっぷりも健在だ……
もう直らない気がする
「お前はないのか、そういうのは?」
「……ないですね」
「そっかぁ……」
どことなく残念そうな成実さんに、むくっと罪悪感が生まれる
いや、別にこんなことで罪悪感を抱く必要は無いと思うんだけど……
「……成実さんが恋しくて、ちょっと眠れなかった時はありました」
「えっ」
……嘘は言ってない、言ってないはずなんだ
成実さんとは出会っていたにしろ、成実さんは記憶が無かったころだから
だから……恋しかったというよりは、心細かった、かもしれない
「今は?」
「……今?」
「もう寂しくないか?」
「寂しそうに見えましたか?」
「ちょっとだけ、な」
「……今は、寂しくないです」
良かった、と答える声は、どこまでも優しい色に満ちていた
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