第二十八章 暴かれた恐怖
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事故から一か月以上が経ち、世間は夏真っ盛り
当然、私も無事に夏休みに突入して、課題と部活の両方に追われていた
そんな折、ようやく無事に怪我も完治して、今では家に帰って一人暮らしを再開している
伊達家から帰る際に、原田さんから縋る目で見られたけど、さすがにいつまでも家を空けておくと空き巣が入りそうだしね
「うわー!」
「はっはっは、流石のエースも、一ヶ月のブランクには負けるみたいだねー」
「悔しいー!」
そんなこんなで、今日は久しぶりに部活に参加した
実に一か月半ぶりで、そりゃー腕も落ちるよね、と私に勝って嬉しそうなチームメイトを睨む
見てろよ、来月までには取り戻してやるんだからな
とにかく……せめて、大会までに鍛え直さなきゃなぁ
「今日はここまで!
礼!」
「「ありがとうございました!」」
武道場にお辞儀をして、ヘロヘロの身体に鞭を打つ
早く汗だくの道着から着替えて、家に帰ってご飯の準備に取り掛からないと……
「お疲れー」
「あ、お疲れー!」
「今日は自分の家に帰るの?」
「うん、そうだよー
今日のご飯、何にしよっかなぁ」
「カレーにしちゃおう」
「それはそっちの晩ご飯がカレーだからでしょー」
「バレた?」
自転車を押して歩く友達と並んで歩く
カレーかぁ、それもいいかなぁ
「ていうか、一時期ずーっと夕華のことを迎えに来てくれたかっこいい男の人いたじゃん?」
「あ、原田さんのこと?」
「そうそう!
どういう関係?
知り合いなんだよね?」
「原田さんかー……」
原田さんって、やっぱりかっこいい部類だよねぇ……
分かる、穏やかで優しくて、私なんかにも腰が低い、まさに紳士……
そんな原田さんと私の関係を、一言で表すなら……
「……難しいな」
「えっ、そんなに複雑な関係なの」
「んーとね、ざっくり言うと、政宗先輩のお家の使用人なんだけど」
「使用人!?」
「ほんとにざっくり言うとね?」
「そっかぁ……いいなぁ、あの政宗先輩と同じ家に住んでたなんて
夕華と政宗先輩って親戚同士なんだもんね?」
「けっこう血縁は遠いけどね
従兄妹って間柄にすら到底及ばないくらいには」
「ほぼほぼ他人じゃない?」
「ものすっごく他人」
「なのに、政宗先輩に優しくしてもらえてるんだ?」
「……ちょっと、色々あってね」
兄様が私に優しいのは、私が兄様と直接触れ合える唯一の家族だったから
そして、いつかの私の死に目に立ち会えず、何も出来なかった──そんな負い目も多少はあるだろうか
とはいえ、大半の理由は「目に入れても痛くない可愛い妹」だからだ
時々、兄様の溺愛ぶりにタジタジになってしまうけど、それでも大切にされるのは何であれ嬉しい
──自転車通学の友達と、学校近くの裏道で別れて、一人で駅まで歩く
交差点を突っ切って大通りに行くように、と何度か学校でも注意をされている道だ
細いし薄暗いし、人通りはほとんどないしで、夜に歩くには怖いけれど、ここが一番の近道でもある
「まぁ、これだけ日が高いんだし、大丈夫だよね」
ずり落ちてきた鞄の紐を肩に掛け直して、細い路地を歩いていく
──その時、背後から荒い足音が響いてきた
道を急いでいるのだろうと、私がそれとなく脇に避けたとき
「ようやく見つけたぞ!」
そんな大声が響いて、次の瞬間
「痛っ……!
何……!?」
背後から、突如として腕を掴まれた
しかも力が半端無く強くて、無理な方向に腕を捻られたせいで、関節が軋む
「誰ですか!?
離してください!」
「忘れたとは言わせないからな!
竜姫!!」
「──っ!!?」
その名は、戦国の世で呼ばれ続けた私の異名
この人、まさかあの時代の記憶がある人なの?
「よくもあの時、俺を殺してくれたな!」
「待ってください!
あの時って……!?
ぁぐっ!」
腕ごと突き飛ばされて、背中からブロック塀に思いっきり叩きつけられる
衝撃で息が一瞬詰まって、呼吸をする前に気道が締め上げられた
身長も力も相手が上
掴まれた首ごと持ち上げられ、塀に押し付けられる
肩から鞄が落ちて、地面に音を立てて転がった
スマホは──そうだった、鞄の中に入ったままだ……
「く、ぁ……!
く、るし……」
「苦しい?
何を言ってるんだ?
散々人を殺したお前が、これくらい苦しく思うわけないだろう!」
「あぁ……が……」
駄目だ……指が気道にめり込んで、息が吸えない……
窒息死させるための首の締め方としては、文句なしの満点だ
酸欠で頭が朦朧としてきて、抗おうとする力が徐々に抜けていく
細い気道で息を吸うから、呼吸するたびに引き攣る音が聞こえてくる
「妻のお腹には子供がいたんだ……!
生きて帰ると約束した!
なのに貴様は!!
大坂で!!」
大坂……
ああ、豊臣と戦った土地……
じゃあこの人は、豊臣兵だったのか
「俺の気持ちがわかるか、なぁ?
人殺しの貴様に!
何が竜姫だ、何が慈悲深く美しい姫だ!
血で穢れた悪鬼のくせに!」
「……!
や……わ、たし……」
──血で穢れた、悪鬼
心の奥深く、私がずっとしまい込んでいた、その小さな、膿のような感情
結局、私はそういう人間だったんだと、事実を突き付けられたようで
私は……皆が言ってくれるような、綺麗な人間じゃなかったんだ──
「──っ、あ」
まずい……死ぬ……
生理的な涙がどんどん零れていく
「ち、が……
す、きで、ころ、した、わけじゃ……」
「誰だってそう言うに決まってるだろう!
この、薄汚い、偽善だらけの、下衆が!!」
「ちが……
ごめ、なさ……」
「謝れば済むとでも思ったか?
この罪は貴様が死ぬまで赦されるものではない!」
「や……いや……!
うぁ……ッ!!」
更にぐっと力が籠められて、目の前が真っ暗になっていく
肺が酸素を求めて口を開いても、酸素は入ってこない
本格的に死んでしまう……
「ごめん……なさい……
助けて……
成、実、さ……」
成実さん……
助けて、お願い……
当然、私も無事に夏休みに突入して、課題と部活の両方に追われていた
そんな折、ようやく無事に怪我も完治して、今では家に帰って一人暮らしを再開している
伊達家から帰る際に、原田さんから縋る目で見られたけど、さすがにいつまでも家を空けておくと空き巣が入りそうだしね
「うわー!」
「はっはっは、流石のエースも、一ヶ月のブランクには負けるみたいだねー」
「悔しいー!」
そんなこんなで、今日は久しぶりに部活に参加した
実に一か月半ぶりで、そりゃー腕も落ちるよね、と私に勝って嬉しそうなチームメイトを睨む
見てろよ、来月までには取り戻してやるんだからな
とにかく……せめて、大会までに鍛え直さなきゃなぁ
「今日はここまで!
礼!」
「「ありがとうございました!」」
武道場にお辞儀をして、ヘロヘロの身体に鞭を打つ
早く汗だくの道着から着替えて、家に帰ってご飯の準備に取り掛からないと……
「お疲れー」
「あ、お疲れー!」
「今日は自分の家に帰るの?」
「うん、そうだよー
今日のご飯、何にしよっかなぁ」
「カレーにしちゃおう」
「それはそっちの晩ご飯がカレーだからでしょー」
「バレた?」
自転車を押して歩く友達と並んで歩く
カレーかぁ、それもいいかなぁ
「ていうか、一時期ずーっと夕華のことを迎えに来てくれたかっこいい男の人いたじゃん?」
「あ、原田さんのこと?」
「そうそう!
どういう関係?
知り合いなんだよね?」
「原田さんかー……」
原田さんって、やっぱりかっこいい部類だよねぇ……
分かる、穏やかで優しくて、私なんかにも腰が低い、まさに紳士……
そんな原田さんと私の関係を、一言で表すなら……
「……難しいな」
「えっ、そんなに複雑な関係なの」
「んーとね、ざっくり言うと、政宗先輩のお家の使用人なんだけど」
「使用人!?」
「ほんとにざっくり言うとね?」
「そっかぁ……いいなぁ、あの政宗先輩と同じ家に住んでたなんて
夕華と政宗先輩って親戚同士なんだもんね?」
「けっこう血縁は遠いけどね
従兄妹って間柄にすら到底及ばないくらいには」
「ほぼほぼ他人じゃない?」
「ものすっごく他人」
「なのに、政宗先輩に優しくしてもらえてるんだ?」
「……ちょっと、色々あってね」
兄様が私に優しいのは、私が兄様と直接触れ合える唯一の家族だったから
そして、いつかの私の死に目に立ち会えず、何も出来なかった──そんな負い目も多少はあるだろうか
とはいえ、大半の理由は「目に入れても痛くない可愛い妹」だからだ
時々、兄様の溺愛ぶりにタジタジになってしまうけど、それでも大切にされるのは何であれ嬉しい
──自転車通学の友達と、学校近くの裏道で別れて、一人で駅まで歩く
交差点を突っ切って大通りに行くように、と何度か学校でも注意をされている道だ
細いし薄暗いし、人通りはほとんどないしで、夜に歩くには怖いけれど、ここが一番の近道でもある
「まぁ、これだけ日が高いんだし、大丈夫だよね」
ずり落ちてきた鞄の紐を肩に掛け直して、細い路地を歩いていく
──その時、背後から荒い足音が響いてきた
道を急いでいるのだろうと、私がそれとなく脇に避けたとき
「ようやく見つけたぞ!」
そんな大声が響いて、次の瞬間
「痛っ……!
何……!?」
背後から、突如として腕を掴まれた
しかも力が半端無く強くて、無理な方向に腕を捻られたせいで、関節が軋む
「誰ですか!?
離してください!」
「忘れたとは言わせないからな!
竜姫!!」
「──っ!!?」
その名は、戦国の世で呼ばれ続けた私の異名
この人、まさかあの時代の記憶がある人なの?
「よくもあの時、俺を殺してくれたな!」
「待ってください!
あの時って……!?
ぁぐっ!」
腕ごと突き飛ばされて、背中からブロック塀に思いっきり叩きつけられる
衝撃で息が一瞬詰まって、呼吸をする前に気道が締め上げられた
身長も力も相手が上
掴まれた首ごと持ち上げられ、塀に押し付けられる
肩から鞄が落ちて、地面に音を立てて転がった
スマホは──そうだった、鞄の中に入ったままだ……
「く、ぁ……!
く、るし……」
「苦しい?
何を言ってるんだ?
散々人を殺したお前が、これくらい苦しく思うわけないだろう!」
「あぁ……が……」
駄目だ……指が気道にめり込んで、息が吸えない……
窒息死させるための首の締め方としては、文句なしの満点だ
酸欠で頭が朦朧としてきて、抗おうとする力が徐々に抜けていく
細い気道で息を吸うから、呼吸するたびに引き攣る音が聞こえてくる
「妻のお腹には子供がいたんだ……!
生きて帰ると約束した!
なのに貴様は!!
大坂で!!」
大坂……
ああ、豊臣と戦った土地……
じゃあこの人は、豊臣兵だったのか
「俺の気持ちがわかるか、なぁ?
人殺しの貴様に!
何が竜姫だ、何が慈悲深く美しい姫だ!
血で穢れた悪鬼のくせに!」
「……!
や……わ、たし……」
──血で穢れた、悪鬼
心の奥深く、私がずっとしまい込んでいた、その小さな、膿のような感情
結局、私はそういう人間だったんだと、事実を突き付けられたようで
私は……皆が言ってくれるような、綺麗な人間じゃなかったんだ──
「──っ、あ」
まずい……死ぬ……
生理的な涙がどんどん零れていく
「ち、が……
す、きで、ころ、した、わけじゃ……」
「誰だってそう言うに決まってるだろう!
この、薄汚い、偽善だらけの、下衆が!!」
「ちが……
ごめ、なさ……」
「謝れば済むとでも思ったか?
この罪は貴様が死ぬまで赦されるものではない!」
「や……いや……!
うぁ……ッ!!」
更にぐっと力が籠められて、目の前が真っ暗になっていく
肺が酸素を求めて口を開いても、酸素は入ってこない
本格的に死んでしまう……
「ごめん……なさい……
助けて……
成、実、さ……」
成実さん……
助けて、お願い……
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