第二十七話 大親友の恋路
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三年生の転校生、という珍しさのせいか、石田先輩の噂はお昼休みになる頃には二年生の方にも伝わっていた
とはいえ、こっちに回ってくる頃には、やれ「前の学校で悪さをして退学になった」だの、「触れた者すべて皆殺しにする超ヤンキー」だのと、あること無いこと尾ひれがついていて
それを耳にするたび、海夜がため息をついて眉根を寄せる──といいうのを、午前中だけで何度か繰り返した
「もう言っちゃえばいいのに、私の彼氏だーって」
「絶対に嫌よ」
お弁当を抱えながら、教室を出て階段を上る
からかい半分にそう言えば、ムッとした顔がそう一蹴した
屋上に繋がるドアを開けて外に出る
そこには、すでに石田先輩が立っていた
「遅い、私を待たせるとはどういう了見だ」
「はいはい」
「む、二年の方が屋上まで遠いんですから、遅くなるのは当たり前です」
海夜には流され、私にはそう文句を言われた石田先輩は、フンと鼻を鳴らして日陰へと逃げた
「感じ悪ーい」
「とはいえ、私たちが教室を出るのが遅かったのは事実だもの」
「でも、それだって提出物の回収を忘れてた先生が悪いじゃん
先生ってば、授業が終わってから思い出すんだもん」
あーあ、と呟いて私も日陰に入る
それからお弁当を広げて、海夜の手を借りて地面に座った
「いっただっきまーす」
「あら、美味しそうなお弁当ね」
「うん!
今日のは喜多さんお手製!
兄様がぶん投げたせいで、ちょっと中身が散乱してるけど、まぁ美味しいものは美味しいってやつだ」
ぱくん、とお箸でおかずを挟んで口に運ぶ
美味しい……慣れ親しんだ味だ
こんな美味しいお弁当を毎日食べてるなんて、兄様も成実さんもずるいなぁ……
「それにしてもあなた、この受験期で忙しい時に、よくもまぁ転校してきたわね、本当」
喜多さんのお弁当に感動している私の横で、ため息と共に海夜がそう呟いた
その言葉に激しく同意したい
「本当だよね……
あと半年ちょっとで卒業じゃないですか、石田、先輩」
「その名字との間は何だ?」
「呼び慣れないんですよ、察し悪いな」
「三成……仮にも夕華は、元はと言えば敵である伊達軍の将だったのよ
それに、将来を誓った相手があなたに一撃でやられちゃってるんだから、すぐに好印象を持てるわけないでしょう」
「私はあの頃の貴様のことなど覚えていない」
「はぁーそうですか!
まったく、物覚えの悪さもピカイチだなー!?
表に出ますか!?」
「喧嘩っ早いのはお兄さん譲りね、本当に
私は止めたわよ
生徒会役員の問題行動なんて、やめた方がいいと思うけれどね」
「うっ、そうだった」
くそう、まさか会計職という肩書がこんなところで足かせになるなんて……
いや、本気でケンカしようとは思ってないけど
「……貴様は伊達の将だったのか」
「いや、名字を聞けば分かるでしょうよ」
「教えろ
私亡き後、秀吉様と半兵衛様はどうされたのだ」
つい、お弁当を食べていた箸が止まった
記憶にもある、豊臣戦
かつてない程の熾烈を極めた激戦は、終わってみれば連合軍の圧勝だった
「……別に、話してもいいですけど
結果がどうであっても、私たちを恨まないでくださいよ
私たちだって、日の本を良くしようと立ち上がったんですから」
「日の本を正しく統べられるのは秀吉様だけだ
私はそう信じていた
だからこそ、秀吉様亡き後、日の本が亡国と化さなかったかどうかを聞いている」
日の本が亡国に……か
兄様の理想がある限り、それは無かっただろう
「さぁ……私も長く生きたわけじゃないですからね
はっきりとは言えませんけど、でも……良い世でしたよ、戦もなくて
民はみんな幸せそうに笑顔で暮らして、兄様も嬉しそうでした
……私も、短い間しかその平和を生きられなかったけれど、本当に幸せでした」
たった、六年
兄様が理想とした、誰もが笑って暮らせる世
その太平の世を生きられたのは、たったそれだけ
「短い間って……あなた……」
「あぁ、まぁね……
そのあと、六年後に死んじゃったんだ
病気になっちゃって」
「そんな……」
「詳しい病名は分かんないけど、多分……癌でね
おかしいよね、そんなに不健康な生活をした記憶はないのに
だから私はこう考えてる
多分、結核……労咳の予防接種はしてたから、かかるはずない
まぁでも、所詮は予防接種だからね……
かかっちゃったんだろうなぁ、多分
それでも予防接種してた分だけ、症状は軽かったと思うんだ
……決定打になったのは、癌によって引き起こされた、また別の病じゃないかな
もともと、労咳自体が不治の病だった戦国の世でしょ
そのうえまた別の病が発症しちゃったら、そりゃあ一年半で死んじゃうよね」
医学には詳しくないから、当時の私が死んだ原因は分からない
それでも、少し症状を思い出して調べてみれば、大抵はそれが「癌」であると分かった
……おそらく、転移だってしていた
満身創痍だった、あの時の私
あの成実さんでさえ、その後の数十年をかけても、私を喪った事実に区切りをつけることはできなかった
「一年半も闘ってたのね……」
「ほとんど気力だったと思うよ
でも、出来る限り生きていたかった
だって、し……成実さん、との、子供もいたし」
言って自分で恥ずかしくなってきた……
まぁ仕方ないよね、うん仕方ない
ほら、その証拠に海夜が固まってる
「お兄様も手を出すのが早いことで……」
「いやー、あれでも随分と『待て』をした方だよ
足かけ二年は、成実さんの禁欲生活期間だったからね
まぁ、どこかで息抜きくらいはしてただろうけど」
「花街とか?」
「ううん、成実さんはそういうところは行きたがらなかった
『媚びる女は好きじゃねぇんだよ!』って言ってたから」
成実さんは、奥州では知らぬ者はいないほどの豪勇だった
彼の室にと願う女性は、両手では足りない程だっただろう
ふと海夜を見ると……何故か海夜が、ため息をついて額を押さえていた
「……夕華」
「なに?」
「お兄様、絶対に息抜きしてないわよ」
「えっ」
「男の息抜きなんて、せいぜい花街でしょう
それにすら行かなくて、さらには伽女も呼ばなかったんでしょ?」
「うん、むしろ夜中まで執務やってて、止めるのに苦労した」
「……お兄様にとっては、それが息抜きだったのかもしれないわね……」
「え……」
執務が……息抜き……!?
現代だったらとんだ社畜だぞ……!?
「それを無理やりにまで止めるとは、貴様はどこの鬼畜だ?」
「だって、そんなこと一度も言われなかった……」
「言うわけないじゃないの」
「ですよねー!
……成実さんごめんなさい……」
どうしよう、今さら謝っても遅いかもしれないけど、本当どうしよう
……解決策が見つからないまま、お弁当を食べ終え、お昼休みが終わった
とはいえ、こっちに回ってくる頃には、やれ「前の学校で悪さをして退学になった」だの、「触れた者すべて皆殺しにする超ヤンキー」だのと、あること無いこと尾ひれがついていて
それを耳にするたび、海夜がため息をついて眉根を寄せる──といいうのを、午前中だけで何度か繰り返した
「もう言っちゃえばいいのに、私の彼氏だーって」
「絶対に嫌よ」
お弁当を抱えながら、教室を出て階段を上る
からかい半分にそう言えば、ムッとした顔がそう一蹴した
屋上に繋がるドアを開けて外に出る
そこには、すでに石田先輩が立っていた
「遅い、私を待たせるとはどういう了見だ」
「はいはい」
「む、二年の方が屋上まで遠いんですから、遅くなるのは当たり前です」
海夜には流され、私にはそう文句を言われた石田先輩は、フンと鼻を鳴らして日陰へと逃げた
「感じ悪ーい」
「とはいえ、私たちが教室を出るのが遅かったのは事実だもの」
「でも、それだって提出物の回収を忘れてた先生が悪いじゃん
先生ってば、授業が終わってから思い出すんだもん」
あーあ、と呟いて私も日陰に入る
それからお弁当を広げて、海夜の手を借りて地面に座った
「いっただっきまーす」
「あら、美味しそうなお弁当ね」
「うん!
今日のは喜多さんお手製!
兄様がぶん投げたせいで、ちょっと中身が散乱してるけど、まぁ美味しいものは美味しいってやつだ」
ぱくん、とお箸でおかずを挟んで口に運ぶ
美味しい……慣れ親しんだ味だ
こんな美味しいお弁当を毎日食べてるなんて、兄様も成実さんもずるいなぁ……
「それにしてもあなた、この受験期で忙しい時に、よくもまぁ転校してきたわね、本当」
喜多さんのお弁当に感動している私の横で、ため息と共に海夜がそう呟いた
その言葉に激しく同意したい
「本当だよね……
あと半年ちょっとで卒業じゃないですか、石田、先輩」
「その名字との間は何だ?」
「呼び慣れないんですよ、察し悪いな」
「三成……仮にも夕華は、元はと言えば敵である伊達軍の将だったのよ
それに、将来を誓った相手があなたに一撃でやられちゃってるんだから、すぐに好印象を持てるわけないでしょう」
「私はあの頃の貴様のことなど覚えていない」
「はぁーそうですか!
まったく、物覚えの悪さもピカイチだなー!?
表に出ますか!?」
「喧嘩っ早いのはお兄さん譲りね、本当に
私は止めたわよ
生徒会役員の問題行動なんて、やめた方がいいと思うけれどね」
「うっ、そうだった」
くそう、まさか会計職という肩書がこんなところで足かせになるなんて……
いや、本気でケンカしようとは思ってないけど
「……貴様は伊達の将だったのか」
「いや、名字を聞けば分かるでしょうよ」
「教えろ
私亡き後、秀吉様と半兵衛様はどうされたのだ」
つい、お弁当を食べていた箸が止まった
記憶にもある、豊臣戦
かつてない程の熾烈を極めた激戦は、終わってみれば連合軍の圧勝だった
「……別に、話してもいいですけど
結果がどうであっても、私たちを恨まないでくださいよ
私たちだって、日の本を良くしようと立ち上がったんですから」
「日の本を正しく統べられるのは秀吉様だけだ
私はそう信じていた
だからこそ、秀吉様亡き後、日の本が亡国と化さなかったかどうかを聞いている」
日の本が亡国に……か
兄様の理想がある限り、それは無かっただろう
「さぁ……私も長く生きたわけじゃないですからね
はっきりとは言えませんけど、でも……良い世でしたよ、戦もなくて
民はみんな幸せそうに笑顔で暮らして、兄様も嬉しそうでした
……私も、短い間しかその平和を生きられなかったけれど、本当に幸せでした」
たった、六年
兄様が理想とした、誰もが笑って暮らせる世
その太平の世を生きられたのは、たったそれだけ
「短い間って……あなた……」
「あぁ、まぁね……
そのあと、六年後に死んじゃったんだ
病気になっちゃって」
「そんな……」
「詳しい病名は分かんないけど、多分……癌でね
おかしいよね、そんなに不健康な生活をした記憶はないのに
だから私はこう考えてる
多分、結核……労咳の予防接種はしてたから、かかるはずない
まぁでも、所詮は予防接種だからね……
かかっちゃったんだろうなぁ、多分
それでも予防接種してた分だけ、症状は軽かったと思うんだ
……決定打になったのは、癌によって引き起こされた、また別の病じゃないかな
もともと、労咳自体が不治の病だった戦国の世でしょ
そのうえまた別の病が発症しちゃったら、そりゃあ一年半で死んじゃうよね」
医学には詳しくないから、当時の私が死んだ原因は分からない
それでも、少し症状を思い出して調べてみれば、大抵はそれが「癌」であると分かった
……おそらく、転移だってしていた
満身創痍だった、あの時の私
あの成実さんでさえ、その後の数十年をかけても、私を喪った事実に区切りをつけることはできなかった
「一年半も闘ってたのね……」
「ほとんど気力だったと思うよ
でも、出来る限り生きていたかった
だって、し……成実さん、との、子供もいたし」
言って自分で恥ずかしくなってきた……
まぁ仕方ないよね、うん仕方ない
ほら、その証拠に海夜が固まってる
「お兄様も手を出すのが早いことで……」
「いやー、あれでも随分と『待て』をした方だよ
足かけ二年は、成実さんの禁欲生活期間だったからね
まぁ、どこかで息抜きくらいはしてただろうけど」
「花街とか?」
「ううん、成実さんはそういうところは行きたがらなかった
『媚びる女は好きじゃねぇんだよ!』って言ってたから」
成実さんは、奥州では知らぬ者はいないほどの豪勇だった
彼の室にと願う女性は、両手では足りない程だっただろう
ふと海夜を見ると……何故か海夜が、ため息をついて額を押さえていた
「……夕華」
「なに?」
「お兄様、絶対に息抜きしてないわよ」
「えっ」
「男の息抜きなんて、せいぜい花街でしょう
それにすら行かなくて、さらには伽女も呼ばなかったんでしょ?」
「うん、むしろ夜中まで執務やってて、止めるのに苦労した」
「……お兄様にとっては、それが息抜きだったのかもしれないわね……」
「え……」
執務が……息抜き……!?
現代だったらとんだ社畜だぞ……!?
「それを無理やりにまで止めるとは、貴様はどこの鬼畜だ?」
「だって、そんなこと一度も言われなかった……」
「言うわけないじゃないの」
「ですよねー!
……成実さんごめんなさい……」
どうしよう、今さら謝っても遅いかもしれないけど、本当どうしよう
……解決策が見つからないまま、お弁当を食べ終え、お昼休みが終わった
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