第十九話 忍び寄る別れ
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「よっ、お二人さん!」
年が明けてしばらく経った、睦月の中旬
舞う雪と共に訪ねてきたのは、風来坊こと慶次さんだった
「慶次……!
久しぶりだな!」
「お久しぶりです……!」
成実さんに起きるのを手伝ってもらおうとしていると、慶次さんが慌てたように庭の方から手を振った
「いいって!
……身体きついんだろ?
無理して起きなくていいからさ」
「それじゃあ……
お言葉に甘えて……」
「んじゃ、ちょいと上がらせてもらうよ!」
庭から履き物を脱いで上がった慶次さん
成実さんが小姓に命じて、お茶を持ってこさせた
私の前に座った慶次さんの肩から夢吉が降りて、私にすり寄ってくる
「久しぶりね、夢吉」
夢吉も嬉しいのか、可愛く鳴いてから今度は成実さんの膝の上に乗った
「また大きくなったか?」
「小猿の成長ってのは早いもんでねぇ」
「確かに、小猿に限らず、子供の成長ってのは早いよな」
寂しそうな、それでも嬉しそうな瞳が夢吉に注がれる
恐らく、海夜や春千代のことを思い出したのだろう
「海夜、呼ぶか?」
「あの子は今、御前様と勉強中ですし、邪魔するのは良くないですよ」
「それもそうか
じゃ、春千代のほう連れてくる」
「あっ、夢吉……」
「一緒に来るか?」
夢吉は「自分も行く」と言わんばかりに、成実さんの肩に乗っかった
夢吉を連れた成実さんが部屋を出て行くと、お部屋の中は、慶次さんと私の二人だけになる
何か声をかけようと口を開く前に、慶次さんが居住いを正した
「話は、謙信とかすがちゃんから聞いたよ
色々……悪化してるんだってな……
驚いたよ、ちょっと前まで、あんなに元気だったのにさって
見舞いに来るの、遅くなっちまってごめんな」
「そんな……いいですよ
来ていただけただけでも、嬉しいですから……」
慶次さんは困ったような笑みを浮かべていた
今まで来られなかったことを責められると思っていたんだろうか
そんなことは決してないのに……
「利家さんとまつさん……どうしてますか……?」
「ああ、相変わらずだよ
子供も大きくなったもんだ
一人目で男の子産んじまうんだ、まつ姉ちゃんもやるよな」
「お元気そうで、良かったです」
「こっちも嫡男が生まれたんだよな!
俺、早く会ってみたかったんだよなー」
「もうすぐ成実さんが連れて来ますよ」
「いくつになったんだっけ?」
「数えで三つです」
その時、夢吉が部屋に入ってきて、慶次さんの肩によじ登った
「おわっと……夢吉」
「春千代、ぐっすり寝てるよ」
小声でそう言いながら、成実さんも入ってきた
数えで三つ、実年齢では約一歳半
まだまだ可愛い盛りだ
「うっわぁ……可愛いなぁ……」
起こさないように注意しながら、慶次さんが春千代を覗き込む
「佐助曰く、目元は俺に似てるんだと」
「あー、でもなんか分かるな、それ」
「この子も、成実さんに負けず劣らず、美丈夫になりますよ」
「……それ、俺も美丈夫に入るってことか?」
「成実さんが入らなきゃおかしいじゃないですか」
「確かに、成実は顔立ちが整ってるもんな
政宗とは別の意味で綺麗な顔してる」
「あいつはもう別格だろ」
「確かに、兄様ってほんと整ってますもんね……」
例えるなら顔面国宝とでも言うべきか
かっこいいと言うより、もはや美形の域だ
その時、春千代の目がぱっちりと開いた
「あ、起きた」
春千代は慶次さん初対面なんだっけ
泣き出さないかと一瞬だけ不安になったけど、それは杞憂だったようだ
「あ、目が開いたらほんと目元そっくり!」
「そこまで似てるか?」
「似てる似てる!」
首を傾げながらも、成実さんの表情は父親のそれだった
成実さんと目があって、ふわりと微笑まれる
私も笑みを返して、春千代を抱っこする慶次さんを見つめていた
と、そこへやって来た足音は──
「慶次のお兄様ー!」
「おっ!
可愛い姫様のお帰りだ」
しゃがんだ慶次さんに海夜が抱き着いて、そのまま慶次さんに抱っこしてもらった
「あ、春!
とと様、春も連れてきたんですね!」
「海夜ちゃんも、すっかりお姉ちゃんだなぁ」
「本当ですか?
海夜、お姉さん?」
「うんうん!
いやぁ、慶次兄ちゃん、驚いちまったよ」
「えへへ……」
「まだちょーっと、お転婆が目につくけどな」
「成実の血を引いちまったな!」
「やかましい!」
あんまり大声を出すと春千代が──と言いかけた瞬間
成実さんの腕の中で、案の定、春千代が泣き始めた
「こらー!
とと様、春を泣かせるなんて最低です!」
「ぐっ……!
我が娘ながら、似て欲しくないところが似たな……!」
海夜の一言に言い返せない成実さんが、慌てて春千代をあやしていく
その姿は、一城の主というよりは、育児に奮闘するただのお父さんそのものだ
「……成実、絶対にいい親父になると思ったんだよな」
「はい、いいお父さんです」
一緒になって春千代をあやす海夜も、いいお姉さんになってくれた
私は、最高の家族に恵まれたな
年が明けてしばらく経った、睦月の中旬
舞う雪と共に訪ねてきたのは、風来坊こと慶次さんだった
「慶次……!
久しぶりだな!」
「お久しぶりです……!」
成実さんに起きるのを手伝ってもらおうとしていると、慶次さんが慌てたように庭の方から手を振った
「いいって!
……身体きついんだろ?
無理して起きなくていいからさ」
「それじゃあ……
お言葉に甘えて……」
「んじゃ、ちょいと上がらせてもらうよ!」
庭から履き物を脱いで上がった慶次さん
成実さんが小姓に命じて、お茶を持ってこさせた
私の前に座った慶次さんの肩から夢吉が降りて、私にすり寄ってくる
「久しぶりね、夢吉」
夢吉も嬉しいのか、可愛く鳴いてから今度は成実さんの膝の上に乗った
「また大きくなったか?」
「小猿の成長ってのは早いもんでねぇ」
「確かに、小猿に限らず、子供の成長ってのは早いよな」
寂しそうな、それでも嬉しそうな瞳が夢吉に注がれる
恐らく、海夜や春千代のことを思い出したのだろう
「海夜、呼ぶか?」
「あの子は今、御前様と勉強中ですし、邪魔するのは良くないですよ」
「それもそうか
じゃ、春千代のほう連れてくる」
「あっ、夢吉……」
「一緒に来るか?」
夢吉は「自分も行く」と言わんばかりに、成実さんの肩に乗っかった
夢吉を連れた成実さんが部屋を出て行くと、お部屋の中は、慶次さんと私の二人だけになる
何か声をかけようと口を開く前に、慶次さんが居住いを正した
「話は、謙信とかすがちゃんから聞いたよ
色々……悪化してるんだってな……
驚いたよ、ちょっと前まで、あんなに元気だったのにさって
見舞いに来るの、遅くなっちまってごめんな」
「そんな……いいですよ
来ていただけただけでも、嬉しいですから……」
慶次さんは困ったような笑みを浮かべていた
今まで来られなかったことを責められると思っていたんだろうか
そんなことは決してないのに……
「利家さんとまつさん……どうしてますか……?」
「ああ、相変わらずだよ
子供も大きくなったもんだ
一人目で男の子産んじまうんだ、まつ姉ちゃんもやるよな」
「お元気そうで、良かったです」
「こっちも嫡男が生まれたんだよな!
俺、早く会ってみたかったんだよなー」
「もうすぐ成実さんが連れて来ますよ」
「いくつになったんだっけ?」
「数えで三つです」
その時、夢吉が部屋に入ってきて、慶次さんの肩によじ登った
「おわっと……夢吉」
「春千代、ぐっすり寝てるよ」
小声でそう言いながら、成実さんも入ってきた
数えで三つ、実年齢では約一歳半
まだまだ可愛い盛りだ
「うっわぁ……可愛いなぁ……」
起こさないように注意しながら、慶次さんが春千代を覗き込む
「佐助曰く、目元は俺に似てるんだと」
「あー、でもなんか分かるな、それ」
「この子も、成実さんに負けず劣らず、美丈夫になりますよ」
「……それ、俺も美丈夫に入るってことか?」
「成実さんが入らなきゃおかしいじゃないですか」
「確かに、成実は顔立ちが整ってるもんな
政宗とは別の意味で綺麗な顔してる」
「あいつはもう別格だろ」
「確かに、兄様ってほんと整ってますもんね……」
例えるなら顔面国宝とでも言うべきか
かっこいいと言うより、もはや美形の域だ
その時、春千代の目がぱっちりと開いた
「あ、起きた」
春千代は慶次さん初対面なんだっけ
泣き出さないかと一瞬だけ不安になったけど、それは杞憂だったようだ
「あ、目が開いたらほんと目元そっくり!」
「そこまで似てるか?」
「似てる似てる!」
首を傾げながらも、成実さんの表情は父親のそれだった
成実さんと目があって、ふわりと微笑まれる
私も笑みを返して、春千代を抱っこする慶次さんを見つめていた
と、そこへやって来た足音は──
「慶次のお兄様ー!」
「おっ!
可愛い姫様のお帰りだ」
しゃがんだ慶次さんに海夜が抱き着いて、そのまま慶次さんに抱っこしてもらった
「あ、春!
とと様、春も連れてきたんですね!」
「海夜ちゃんも、すっかりお姉ちゃんだなぁ」
「本当ですか?
海夜、お姉さん?」
「うんうん!
いやぁ、慶次兄ちゃん、驚いちまったよ」
「えへへ……」
「まだちょーっと、お転婆が目につくけどな」
「成実の血を引いちまったな!」
「やかましい!」
あんまり大声を出すと春千代が──と言いかけた瞬間
成実さんの腕の中で、案の定、春千代が泣き始めた
「こらー!
とと様、春を泣かせるなんて最低です!」
「ぐっ……!
我が娘ながら、似て欲しくないところが似たな……!」
海夜の一言に言い返せない成実さんが、慌てて春千代をあやしていく
その姿は、一城の主というよりは、育児に奮闘するただのお父さんそのものだ
「……成実、絶対にいい親父になると思ったんだよな」
「はい、いいお父さんです」
一緒になって春千代をあやす海夜も、いいお姉さんになってくれた
私は、最高の家族に恵まれたな
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