第十六話 悲劇の始まり
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それから一月が経過した
夏真っ盛りの文月
何もしていなくても汗が滴り落ちる
それを手拭いで拭って、また生け花に集中した
「……よし」
剣山に綺麗に生けられた花を見て、うん、と頷く
我ながら上手くいった
成実さんの部屋に置いておいてもらおう
「……けほっ、こほっ」
「夕華様?」
心配そうにこちらを見つめる喜多さんに微笑んで首を振る
夏風邪でも引いちゃったかな
でも身体には何もきついところないし……
「……まさかね」
結核の予防注射は前の世界で打ってあったし……
とはいえ、それはあくまでも予防接種
この時代は、現代以上に伝染病だって流行りやすい時代だし、注意するに越したことはないか
「夕華?」
「あ、成実さん」
呼びかけられて顔を上げると、不審げな顔で成実さんが入ってきた
「風邪か?」
「まさか、体調管理には人一倍、気を遣ってるんですよ?」
「……だよな」
首を少しだけ捻って唸ると、成実さんは笑顔を見せた
「身体は?
きつくねえか?」
「大丈夫です
お腹の子も元気ですよ」
「男子だといいなー」
「海夜も弟がほしいって言ってましたしね」
「だな」
そう頷いて笑う成実さんの瞳が、生け花を映した
「お前が生けたのか?」
「はい、ついさっき完成しました
成実さんのお部屋に飾ろうと思って」
「……よく出来てるな
ちゃんとお前らしさが出てる」
「生け花、分かるんですか?」
「風流なお従兄様のおかげで、多少なりともな」
肩を竦めてそう言う成実さんに思わず笑ってしまった
確かに、兄様は周りを巻き込んでいくタイプだもんね
「じゃ、これはありがたく飾らせてもらうな」
「はい」
「ん、いい香り」
成実さんが持ち上げると、ふわりと上品な花の香りが漂う
花と成実さん……絵になるな……
「ありがとな、夕華」
「どういたしまして、です
まだ執務は終わってないんですか?」
「いや、執務自体は終わってるよ
これから海夜の相手」
「……女の子に武芸を教えるのはいかがなものかと」
「まあ仕方ねぇよな、俺の娘だもん」
「私の娘でもあるんですけど!?」
「両方とも戦場で先陣切って、敵を倒してきたもん同士だろ」
「………」
い、言い返せない……!
確かに私も、男性並みに……というか、男性以上に前に出ていたからな
まぁ、体力づくりにはもってこい……だということにしよう
生け花を持って、足取り軽く部屋を出て行く成実さんを見送る
……楽しそうにしちゃって
「……まぁ、悪いことじゃないけど」
薙刀を振り回してきた私が、武芸を女の子に教えるなって言えないか
……うん、言えないね
「夕華様、少しお休みになられますか?」
「……そうですね、この陽射しの中でお散歩は、成実さんに怒られちゃいそうですし
お茶をお願いしていいですか?
私は本でも読もうと思うので、喜多さんは……」
「私はお側に控えさせていただきますわ」
「……たまには、ご自分の時間もとってくださいね
私のことを優先してくださるのは、本当に嬉しいですし、ありがたいですけど……」
「お気遣い、痛み入ります
御心配には及びませんわ、私は夕華様と共に居る時間が、何よりも大好きですもの」
……ならば、これ以上は言うまい
どうぞ、と差し出された湯呑を受け取って、一口
……うん、美味しい
「しばらくは夕華様へのご来客も無いようでございますから、ゆっくり出来そうですわね」
「そうですね
幸村さんと佐助さんが来てくださったときの賑わいは……楽しいですけど、成実さんがちょっと大変そうでした」
数日前の、真田主従によるアポなし訪問を思い出して、苦笑いが浮かぶ
お二人とも私に対してはとっても親切で優しいんだけど……
「どうも成実さんは、佐助さんの絶好の遊び相手みたいで」
「揶揄い甲斐がありすぎるもの、問題ですわね」
「見ている分には楽しいんですけどね」
まぁ、そんな佐助さんも、海夜の前ではただの子供好きのお兄さんだ
成実さんが「佐助」と呼ぶから、つい海夜も「さしゅけ!」なんて呼んじゃうけど、そろそろ「佐助お兄様」に矯正しないと駄目だな……
「……あれ」
ふと気配を感じて外を見ると、黒い烏が空を飛んでいた
そこから降りてくる一つの影
「よっ、数日ぶりだね」
「佐助さん……!
あ、海夜と成実さんなら、今は鍛練場に居ますよ
呼んできますね、どうせ二人とも、鍛練じゃなくてチャンバラになってると思いますし」
「……お姫様がそれでいいのかなって、俺様は思うんだけど」
「誰の血を引いていると思ってるんですか……」
喜多さんが鍛練場へと急いでくれる間、手ずから淹れたお茶を佐助さんに差し出す
幸村さんは青葉城にいるらしく、こっそり抜け出して来たそうだ
しばらくすると、二人分の足音が聞こえてきて、成実さんが顔を出した
「まーたお前か……」
「お邪魔してるぜ、成ちゃん」
「だからそれはやめろっつってんだろ」
「しゃすけー!」
「こら、海夜、お行儀が悪いでしょ
佐助お兄様でしょ?」
「いやいや、俺様もうお兄様って年じゃあ……」
「えと、佐助のお兄様?」
こてん、と可愛らしく傾げられた首
我が子ながら可愛いな……と、うっかり親馬鹿を発動しかけて、ハッとして佐助さんを見上げると
「佐助の……お兄様……!」
「……こいつのこんな顔、俺は初めて見たぞ」
「そうですね……
私も初めてです……」
あの佐助さんが、目を輝かせていたことなんて、きっと後にも先にも今日のこれだけだろうな……
「政宗のおじ様に加えて、佐助のお兄様か
良かったなー佐助、梵より呼ばれ方は若いぞ」
「それは全っ然嬉しくも何ともないけど!?
呼ばれ方は若くても、どう頑張っても実年齢は俺様が上なんだからさぁ!?」
「その流れで、幸村さんのこともちゃんと呼ばせないと駄目ですね」
「そうだなー」
「佐助のお兄様、お久しぶりです!」
「うんうん、久しぶり!
ちょっと背が伸びたかな?」
抱き上げられた海夜がきゃらきゃらと笑い声をあげる
高いところは怖いかと思いきや、その辺りは成実さんの抱っこで慣れっこのようだった
……カメラがあれば、連写が止まらなかっただろうな、私
この時代にカメラが無くて本当に良かった
夏真っ盛りの文月
何もしていなくても汗が滴り落ちる
それを手拭いで拭って、また生け花に集中した
「……よし」
剣山に綺麗に生けられた花を見て、うん、と頷く
我ながら上手くいった
成実さんの部屋に置いておいてもらおう
「……けほっ、こほっ」
「夕華様?」
心配そうにこちらを見つめる喜多さんに微笑んで首を振る
夏風邪でも引いちゃったかな
でも身体には何もきついところないし……
「……まさかね」
結核の予防注射は前の世界で打ってあったし……
とはいえ、それはあくまでも予防接種
この時代は、現代以上に伝染病だって流行りやすい時代だし、注意するに越したことはないか
「夕華?」
「あ、成実さん」
呼びかけられて顔を上げると、不審げな顔で成実さんが入ってきた
「風邪か?」
「まさか、体調管理には人一倍、気を遣ってるんですよ?」
「……だよな」
首を少しだけ捻って唸ると、成実さんは笑顔を見せた
「身体は?
きつくねえか?」
「大丈夫です
お腹の子も元気ですよ」
「男子だといいなー」
「海夜も弟がほしいって言ってましたしね」
「だな」
そう頷いて笑う成実さんの瞳が、生け花を映した
「お前が生けたのか?」
「はい、ついさっき完成しました
成実さんのお部屋に飾ろうと思って」
「……よく出来てるな
ちゃんとお前らしさが出てる」
「生け花、分かるんですか?」
「風流なお従兄様のおかげで、多少なりともな」
肩を竦めてそう言う成実さんに思わず笑ってしまった
確かに、兄様は周りを巻き込んでいくタイプだもんね
「じゃ、これはありがたく飾らせてもらうな」
「はい」
「ん、いい香り」
成実さんが持ち上げると、ふわりと上品な花の香りが漂う
花と成実さん……絵になるな……
「ありがとな、夕華」
「どういたしまして、です
まだ執務は終わってないんですか?」
「いや、執務自体は終わってるよ
これから海夜の相手」
「……女の子に武芸を教えるのはいかがなものかと」
「まあ仕方ねぇよな、俺の娘だもん」
「私の娘でもあるんですけど!?」
「両方とも戦場で先陣切って、敵を倒してきたもん同士だろ」
「………」
い、言い返せない……!
確かに私も、男性並みに……というか、男性以上に前に出ていたからな
まぁ、体力づくりにはもってこい……だということにしよう
生け花を持って、足取り軽く部屋を出て行く成実さんを見送る
……楽しそうにしちゃって
「……まぁ、悪いことじゃないけど」
薙刀を振り回してきた私が、武芸を女の子に教えるなって言えないか
……うん、言えないね
「夕華様、少しお休みになられますか?」
「……そうですね、この陽射しの中でお散歩は、成実さんに怒られちゃいそうですし
お茶をお願いしていいですか?
私は本でも読もうと思うので、喜多さんは……」
「私はお側に控えさせていただきますわ」
「……たまには、ご自分の時間もとってくださいね
私のことを優先してくださるのは、本当に嬉しいですし、ありがたいですけど……」
「お気遣い、痛み入ります
御心配には及びませんわ、私は夕華様と共に居る時間が、何よりも大好きですもの」
……ならば、これ以上は言うまい
どうぞ、と差し出された湯呑を受け取って、一口
……うん、美味しい
「しばらくは夕華様へのご来客も無いようでございますから、ゆっくり出来そうですわね」
「そうですね
幸村さんと佐助さんが来てくださったときの賑わいは……楽しいですけど、成実さんがちょっと大変そうでした」
数日前の、真田主従によるアポなし訪問を思い出して、苦笑いが浮かぶ
お二人とも私に対してはとっても親切で優しいんだけど……
「どうも成実さんは、佐助さんの絶好の遊び相手みたいで」
「揶揄い甲斐がありすぎるもの、問題ですわね」
「見ている分には楽しいんですけどね」
まぁ、そんな佐助さんも、海夜の前ではただの子供好きのお兄さんだ
成実さんが「佐助」と呼ぶから、つい海夜も「さしゅけ!」なんて呼んじゃうけど、そろそろ「佐助お兄様」に矯正しないと駄目だな……
「……あれ」
ふと気配を感じて外を見ると、黒い烏が空を飛んでいた
そこから降りてくる一つの影
「よっ、数日ぶりだね」
「佐助さん……!
あ、海夜と成実さんなら、今は鍛練場に居ますよ
呼んできますね、どうせ二人とも、鍛練じゃなくてチャンバラになってると思いますし」
「……お姫様がそれでいいのかなって、俺様は思うんだけど」
「誰の血を引いていると思ってるんですか……」
喜多さんが鍛練場へと急いでくれる間、手ずから淹れたお茶を佐助さんに差し出す
幸村さんは青葉城にいるらしく、こっそり抜け出して来たそうだ
しばらくすると、二人分の足音が聞こえてきて、成実さんが顔を出した
「まーたお前か……」
「お邪魔してるぜ、成ちゃん」
「だからそれはやめろっつってんだろ」
「しゃすけー!」
「こら、海夜、お行儀が悪いでしょ
佐助お兄様でしょ?」
「いやいや、俺様もうお兄様って年じゃあ……」
「えと、佐助のお兄様?」
こてん、と可愛らしく傾げられた首
我が子ながら可愛いな……と、うっかり親馬鹿を発動しかけて、ハッとして佐助さんを見上げると
「佐助の……お兄様……!」
「……こいつのこんな顔、俺は初めて見たぞ」
「そうですね……
私も初めてです……」
あの佐助さんが、目を輝かせていたことなんて、きっと後にも先にも今日のこれだけだろうな……
「政宗のおじ様に加えて、佐助のお兄様か
良かったなー佐助、梵より呼ばれ方は若いぞ」
「それは全っ然嬉しくも何ともないけど!?
呼ばれ方は若くても、どう頑張っても実年齢は俺様が上なんだからさぁ!?」
「その流れで、幸村さんのこともちゃんと呼ばせないと駄目ですね」
「そうだなー」
「佐助のお兄様、お久しぶりです!」
「うんうん、久しぶり!
ちょっと背が伸びたかな?」
抱き上げられた海夜がきゃらきゃらと笑い声をあげる
高いところは怖いかと思いきや、その辺りは成実さんの抱っこで慣れっこのようだった
……カメラがあれば、連写が止まらなかっただろうな、私
この時代にカメラが無くて本当に良かった
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