弱虫な僕ら
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あんなことがあってから何日か経って、ブン太とは会うことすら無くなっていった。一緒の講義だってあるんだから、もちろんすれ違うことはあるけど。見れば悲しくなるから、わたしの中で彼の存在を消すようにしていた。そうすれば悲しい気持ちなんていつか消えるから。そう言い聞かせていた。
「私ってなんで断れないかなぁ…」
仲の良い教授に頼まれたゴミ捨てだけど、本当に嫌になる。こんな些細なことでも、ため息が漏れる。ごみ袋を持ったまま外に出てごみ捨て場まで歩いていると、キャンパスの角の向こうから、声がきこえた。隠れる必要なんかなかったのに、わたしは校舎にぴっとりとくっついて、そうっと覗き込んだ。そう。この状況は入学式と同じ状況だった。まず初めに視界に飛び込んだのは、女の子が男の子の後頭部に手を回してキスをしていること。次にわかったのは、その男の子がブン太だということ。分かっていたことだとしても驚いて、目を逸らすことも、その場から離れることもできなかった。ばかばかしくて、涙なんかこれっぽっちも出なかった。やっと足が地面から離れて、わたしは元来た道へと体を向けた。もう、すべてが、なにもかもが。
「っ!」
この場から離れたくて走り出そうとした途端、前から歩いてきた人にぶつかってしまった。勢いをつけてぶつかったのはわたしなのに、転んだのはわたし。しまったと思ってゆっくり顔をあげると、そこには懐かしい面影。
「け、景吾…!?」
「ん?はなじゃねえか」
氷帝学園大学の、跡部景吾。ここにいるはずのない彼がなぜここにいるのかというと、立海のテニスサークルと合同練習といったところか。わたしたちがなぜ顔見知りなのかというと、氷帝学園に通っていた高校生の頃、わたしが転入したクラスに景吾がいたのだ。そこで俺様だけど面白い景吾とだんだん仲良くなって、男の中での一番の友達になった。
「相変わらずドジだな。大丈夫か?」
そう言ってわたしに手を伸ばした景吾の何げなく言った言葉が、身に染みた。大丈夫なんかじゃ、ない。ふいに今までのことが頭に流れこんできて、ちっとも出てこなかった涙が、 堰 を切ったように溢れだしてきた。いきなり声をあげて泣き出したわたしに、きっと景吾は困ってるに違いない。そうおもうのに、止まらなかった。
「…何かあったのか?」
その景吾の言葉にふるふると首を横に振ると、景吾は嘘つけ、とわたしと同じようにしゃがみ込んだ。そして、次に感じたのは、男の人のぬくもり。抱きしめられたとわかった瞬間、涙が一瞬、ぴたりと止まった。
「…景吾?」
「丸井か…?」
「何言って…」
「お前を泣かせてんのはあいつだろ?」
景吾の確信したような言い方がわたしを黙らせた。景吾にはブン太のことを話していたから、だいたいのことは知っている。大学に入ってから連絡は取ってなかったけど…人に心配かけてまで、わたしは。
「はな」
「……うん」
「俺と付き合え」
「え…?」
「俺を、利用しろ」
その言葉に一瞬動きが止まったけれど、すぐに景吾を見上げた。くるしそうな、表情。それと同時に景吾の顔が近くに迫ってきて、思わずぎゅっと目を閉じた。唇が優しく合わさったキスは、ブン太にされた時のものとは180度違っていた。しばらくして離れたあと、景吾はわたしを優しく抱きしめた。
「俺ならお前を泣かせたりしない」
「景吾っ…」
景吾は僅かに体を震わせながらそう言った。こんなに余裕のない景吾を見たのは初めてかもしれない。だって、景吾は、いつも自分に自信と余裕を持っていて、わたしの尊敬する人物でもあったのだ。
「…い、いよ」
すべてを忘れてしまいたくて、もう何もかもがどうでもよくなってしまった。後ろに彼がいたとも知らずに。
「私ってなんで断れないかなぁ…」
仲の良い教授に頼まれたゴミ捨てだけど、本当に嫌になる。こんな些細なことでも、ため息が漏れる。ごみ袋を持ったまま外に出てごみ捨て場まで歩いていると、キャンパスの角の向こうから、声がきこえた。隠れる必要なんかなかったのに、わたしは校舎にぴっとりとくっついて、そうっと覗き込んだ。そう。この状況は入学式と同じ状況だった。まず初めに視界に飛び込んだのは、女の子が男の子の後頭部に手を回してキスをしていること。次にわかったのは、その男の子がブン太だということ。分かっていたことだとしても驚いて、目を逸らすことも、その場から離れることもできなかった。ばかばかしくて、涙なんかこれっぽっちも出なかった。やっと足が地面から離れて、わたしは元来た道へと体を向けた。もう、すべてが、なにもかもが。
「っ!」
この場から離れたくて走り出そうとした途端、前から歩いてきた人にぶつかってしまった。勢いをつけてぶつかったのはわたしなのに、転んだのはわたし。しまったと思ってゆっくり顔をあげると、そこには懐かしい面影。
「け、景吾…!?」
「ん?はなじゃねえか」
氷帝学園大学の、跡部景吾。ここにいるはずのない彼がなぜここにいるのかというと、立海のテニスサークルと合同練習といったところか。わたしたちがなぜ顔見知りなのかというと、氷帝学園に通っていた高校生の頃、わたしが転入したクラスに景吾がいたのだ。そこで俺様だけど面白い景吾とだんだん仲良くなって、男の中での一番の友達になった。
「相変わらずドジだな。大丈夫か?」
そう言ってわたしに手を伸ばした景吾の何げなく言った言葉が、身に染みた。大丈夫なんかじゃ、ない。ふいに今までのことが頭に流れこんできて、ちっとも出てこなかった涙が、
「…何かあったのか?」
その景吾の言葉にふるふると首を横に振ると、景吾は嘘つけ、とわたしと同じようにしゃがみ込んだ。そして、次に感じたのは、男の人のぬくもり。抱きしめられたとわかった瞬間、涙が一瞬、ぴたりと止まった。
「…景吾?」
「丸井か…?」
「何言って…」
「お前を泣かせてんのはあいつだろ?」
景吾の確信したような言い方がわたしを黙らせた。景吾にはブン太のことを話していたから、だいたいのことは知っている。大学に入ってから連絡は取ってなかったけど…人に心配かけてまで、わたしは。
「はな」
「……うん」
「俺と付き合え」
「え…?」
「俺を、利用しろ」
その言葉に一瞬動きが止まったけれど、すぐに景吾を見上げた。くるしそうな、表情。それと同時に景吾の顔が近くに迫ってきて、思わずぎゅっと目を閉じた。唇が優しく合わさったキスは、ブン太にされた時のものとは180度違っていた。しばらくして離れたあと、景吾はわたしを優しく抱きしめた。
「俺ならお前を泣かせたりしない」
「景吾っ…」
景吾は僅かに体を震わせながらそう言った。こんなに余裕のない景吾を見たのは初めてかもしれない。だって、景吾は、いつも自分に自信と余裕を持っていて、わたしの尊敬する人物でもあったのだ。
「…い、いよ」
すべてを忘れてしまいたくて、もう何もかもがどうでもよくなってしまった。後ろに彼がいたとも知らずに。
