真っ赤な愛にくちづけ
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お昼休み、いつものようにわいわいと賑やかな教室の中でいつも通りりなとお弁当を食べていた時のこと、ふと彼女が口を開いた。
「はなってさ」
「うん?」
「丸井から好きって言ってもらったことあるの?」
「ぶっ!」
「ちょ、大丈夫?」
「だ、大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」
彼女からの急なお言葉に、思わず飲み物を吹き出しそうになってしまった。彼女は楽しそうにくすくすと笑っているけれど、わたしにとってはそれどころじゃない。
でも、考えてみると確かに好きって言ったのはわたしだけ。その時は嬉しさで頭がいっぱいになってたから考えてもいなかったけれど。
「そういえば告白した時に面白いとは言われたけど、好きとかそんなのは言われたことない…」
「ふーん。でもキスはしたんだよね?」
「う、うん…さらっと言うよね、りなは」
「そ?普通でしょ」
そう言いながらりなは何事もなかったかのように最後のおかずを美味しそうにもぐもぐと堪能している。彼女は大人だ。わたしはまだそういう言葉を口にすることさえ恥ずかしいというのに。
でも好きって言われたことはないけど、普通、好きでもない人とキスなんかしない…よね。今まで気にしていなかったものの、一度言われてしまうと考え込んでしまうのが人の性というもので。
「一回それとなくそういう話してみたら?あんたからもう一回好きって言ってみて相手の反応見てみるのも良いと思うし」
「そうだよね…ちょっと考えてみる」
わたしのお弁当を食べる箸が止まっていることに気付いたからか、りなが紙パックのジュースを飲みながら提案してくれた。反応は怖いけれど、彼女なんだからきっと大丈夫。そう思い込ませて自分を奮い立たせた。…はずだった。
5、6限目の授業は内容が頭に入らず、ブン太にどうやって話を持っていこうかずっと悩んでいた。
彼氏に「わたしのこと好き?」なんて聞くの、恥ずかしいことなのかな。それとも普通なのかな。付き合うことも初めてだし、そういうことに対する知識がないから"普通"というものが分からなかった。
結局何も聞けないまま放課後になってしまい、部活に向かったブン太をいつものベンチで待っていた。本当は5限目後の休憩時間や、部活に行くまでの時間に聞いてスッキリしてしまいたかったのに。
いつもは楽しいはずのこの時間も、悶々としてしまう。わたしのことを好いて付き合ってくれているのか、ただそれを聞くだけのことなのに、私にとっては大きな課題だった。
いつの間にか時間が経っていたようで、部活を終えたブン太がいつものように笑顔でわたしの元に走ってきてくれる。この笑顔が答えのようなものなのに、どうして彼を疑ってしまうんだろうか。わたしは彼の目を真っ直ぐに見られなかった。帰ろうとしたブン太とは違い、ベンチの前から動けないでいると、彼は頭に疑問符を浮かべてわたしの顔を覗いた。
「どうした?今日ちょっと様子変じゃねえ?」
「あ、えーと…」
「はな?」
「なんで目合わせねえの?」
「う…」
こんなにくだらないことで悩んでいるわたしは馬鹿なのかもしれない。こうしてブン太の意思で今一緒にいてくれてるのは紛れもない事実なのに。ブン太を疑っている自分に対して怒りが湧いてくるのと同時に目頭が熱くなった。
「お、おい、何泣きそうになってんだよ」
「ち、ちが…」
「何かあんなら言えよ。言われねえと俺、分かんねえから」
優しい声でそう言ってくれるブン太に甘えるように涙が溢れ出した。よしよしと頭を撫でてくれる彼がたまらなく愛おしい。ゆっくりで良いから、と優しく言ってくれた彼に頷くと、わたしはようやく口を開いた。
「ブン太って、わたしのことちゃんと好きなのかなと思って…告白だってわたしからしたし…」
わたしが勇気を振り絞ってそう言うと、ブン太は驚いたような表情をしてしばらく固まってしまったかと思うと、次の瞬間にはぷっ、と吹き出してしまった。その行動に、今度はわたしの方が固まってしまう。
「へ…?な、何で笑うの?」
「わ、わり…お前、そんなことで悩んでたのかよい?」
笑いを堪えようとしながらも涙目になっているブン太とは対照的に、わたしの涙はスーっと引いていった。あ、あれ?わたし割と真剣に悩んでたんだけど、"そんなこと"、とは?
ブン太がひーひー言いながら笑うのを見て、何だか急に馬鹿らしくなってきた。
「そ、そんなに笑うこと?」
「だって…すげえ深刻そうに悩んでたから、何のことかと思ったら」
「深刻だもん、わたしにとっては!」
「悪りぃ悪りぃ」
わたしが怒って見せてもまったくブン太には響いてないようで。だけど決して馬鹿にしているというわけではないことはわたしにだって分かる。笑いながらも愛おしそうに目を細めてわたしを見てくれるブン太への、この気持ちをどう表現すれば良いのか分からなかった。
「やっぱり可愛いよなー、お前って」
「か…!?」
「そ、なんかずっと見てて飽きねえっつーか」
面白いってそういうことだったのか、なんて冷静になれるわけもなく。恥ずかしくも嬉しい言葉に続いて、わたしがちょうど今日考えていたことをブン太が口にしてくれる。
「つーか、好きでもねえやつとキスすると思う?」
「そ、それは…」
お昼にわたしが思っていたことと全く同じことを言ってくれる。けれど、ブン太から言われるのと、自分が思うのとでは感じ方が全く違う。
ついこの間のキスを思い出して、またブン太の目を見られなくなってしまった。
「あ、思い出してんの?はなって案外やらしいんだな」
「違うよ、もう!ブン太って結構意地悪だよね」
「良いじゃん、反応可愛いからついいじめたくなんの」
笑いながらそう言われても嫌な気持ちにすらならない自分に対しても嫌気がさす。恋人って、こんなに温かくて幸せな気持ちになれるものだったなんて、知らなかった。全部全部、ブン太が初めての気持ちを教えてくれる。
ふと、彼がそっとわたしの手を取ってきゅっと握って、わたしの目を真っ直ぐ見つめてくれた。
「はな」
「うん?」
「好き。すっげー好き」
「……!」
「これで分かってくれた?」
少し照れながらもわたしの目を真っ直ぐ見ながらそう言ってくれたブン太がものすごく愛おしい。"好き"。たった二文字の言葉なのに、恥ずかしくて、でもとても心が温かくなった。
「うん!ありがとう、ブン太」
「礼言うことじゃねえだろい」
「わたしもブン太のこと大好き」
「!」
わたしが笑いながらそう言うとブン太は意外にも驚いた顔をして、口元を手で覆いながら顔を真っ赤にしてわたしから目を逸らした。その仕草に思わずわたしまで顔が赤くなる。こんなに照れてるブン太、初めて見るかもしれない。
「実際言われると破壊力半端ねえな」
ブン太でさえそういう気持ちになってくれるのならば、やっぱり想うよりも言葉にすることは大事なことなんだなって再度認識させられる。
ちゃんと両思いだとはっきり分かった今、何も怖くないような気持ちになった。
「ブン太も嬉しい?」
「うん、すっげー嬉しい」
ブン太はそう言うと、嬉しそうに笑いながらわたしに二度目のキスをしてくれた。
一歩一歩、二人で歩んで行けている気がしてとても嬉しかった。日に日にブン太のことを好きになっていくこの気持ちが、嬉しくもあり怖くもあった。
一体、いつになったらこの気持ちの底が見えるのだろう。
「はなってさ」
「うん?」
「丸井から好きって言ってもらったことあるの?」
「ぶっ!」
「ちょ、大丈夫?」
「だ、大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」
彼女からの急なお言葉に、思わず飲み物を吹き出しそうになってしまった。彼女は楽しそうにくすくすと笑っているけれど、わたしにとってはそれどころじゃない。
でも、考えてみると確かに好きって言ったのはわたしだけ。その時は嬉しさで頭がいっぱいになってたから考えてもいなかったけれど。
「そういえば告白した時に面白いとは言われたけど、好きとかそんなのは言われたことない…」
「ふーん。でもキスはしたんだよね?」
「う、うん…さらっと言うよね、りなは」
「そ?普通でしょ」
そう言いながらりなは何事もなかったかのように最後のおかずを美味しそうにもぐもぐと堪能している。彼女は大人だ。わたしはまだそういう言葉を口にすることさえ恥ずかしいというのに。
でも好きって言われたことはないけど、普通、好きでもない人とキスなんかしない…よね。今まで気にしていなかったものの、一度言われてしまうと考え込んでしまうのが人の性というもので。
「一回それとなくそういう話してみたら?あんたからもう一回好きって言ってみて相手の反応見てみるのも良いと思うし」
「そうだよね…ちょっと考えてみる」
わたしのお弁当を食べる箸が止まっていることに気付いたからか、りなが紙パックのジュースを飲みながら提案してくれた。反応は怖いけれど、彼女なんだからきっと大丈夫。そう思い込ませて自分を奮い立たせた。…はずだった。
5、6限目の授業は内容が頭に入らず、ブン太にどうやって話を持っていこうかずっと悩んでいた。
彼氏に「わたしのこと好き?」なんて聞くの、恥ずかしいことなのかな。それとも普通なのかな。付き合うことも初めてだし、そういうことに対する知識がないから"普通"というものが分からなかった。
結局何も聞けないまま放課後になってしまい、部活に向かったブン太をいつものベンチで待っていた。本当は5限目後の休憩時間や、部活に行くまでの時間に聞いてスッキリしてしまいたかったのに。
いつもは楽しいはずのこの時間も、悶々としてしまう。わたしのことを好いて付き合ってくれているのか、ただそれを聞くだけのことなのに、私にとっては大きな課題だった。
いつの間にか時間が経っていたようで、部活を終えたブン太がいつものように笑顔でわたしの元に走ってきてくれる。この笑顔が答えのようなものなのに、どうして彼を疑ってしまうんだろうか。わたしは彼の目を真っ直ぐに見られなかった。帰ろうとしたブン太とは違い、ベンチの前から動けないでいると、彼は頭に疑問符を浮かべてわたしの顔を覗いた。
「どうした?今日ちょっと様子変じゃねえ?」
「あ、えーと…」
「はな?」
「なんで目合わせねえの?」
「う…」
こんなにくだらないことで悩んでいるわたしは馬鹿なのかもしれない。こうしてブン太の意思で今一緒にいてくれてるのは紛れもない事実なのに。ブン太を疑っている自分に対して怒りが湧いてくるのと同時に目頭が熱くなった。
「お、おい、何泣きそうになってんだよ」
「ち、ちが…」
「何かあんなら言えよ。言われねえと俺、分かんねえから」
優しい声でそう言ってくれるブン太に甘えるように涙が溢れ出した。よしよしと頭を撫でてくれる彼がたまらなく愛おしい。ゆっくりで良いから、と優しく言ってくれた彼に頷くと、わたしはようやく口を開いた。
「ブン太って、わたしのことちゃんと好きなのかなと思って…告白だってわたしからしたし…」
わたしが勇気を振り絞ってそう言うと、ブン太は驚いたような表情をしてしばらく固まってしまったかと思うと、次の瞬間にはぷっ、と吹き出してしまった。その行動に、今度はわたしの方が固まってしまう。
「へ…?な、何で笑うの?」
「わ、わり…お前、そんなことで悩んでたのかよい?」
笑いを堪えようとしながらも涙目になっているブン太とは対照的に、わたしの涙はスーっと引いていった。あ、あれ?わたし割と真剣に悩んでたんだけど、"そんなこと"、とは?
ブン太がひーひー言いながら笑うのを見て、何だか急に馬鹿らしくなってきた。
「そ、そんなに笑うこと?」
「だって…すげえ深刻そうに悩んでたから、何のことかと思ったら」
「深刻だもん、わたしにとっては!」
「悪りぃ悪りぃ」
わたしが怒って見せてもまったくブン太には響いてないようで。だけど決して馬鹿にしているというわけではないことはわたしにだって分かる。笑いながらも愛おしそうに目を細めてわたしを見てくれるブン太への、この気持ちをどう表現すれば良いのか分からなかった。
「やっぱり可愛いよなー、お前って」
「か…!?」
「そ、なんかずっと見てて飽きねえっつーか」
面白いってそういうことだったのか、なんて冷静になれるわけもなく。恥ずかしくも嬉しい言葉に続いて、わたしがちょうど今日考えていたことをブン太が口にしてくれる。
「つーか、好きでもねえやつとキスすると思う?」
「そ、それは…」
お昼にわたしが思っていたことと全く同じことを言ってくれる。けれど、ブン太から言われるのと、自分が思うのとでは感じ方が全く違う。
ついこの間のキスを思い出して、またブン太の目を見られなくなってしまった。
「あ、思い出してんの?はなって案外やらしいんだな」
「違うよ、もう!ブン太って結構意地悪だよね」
「良いじゃん、反応可愛いからついいじめたくなんの」
笑いながらそう言われても嫌な気持ちにすらならない自分に対しても嫌気がさす。恋人って、こんなに温かくて幸せな気持ちになれるものだったなんて、知らなかった。全部全部、ブン太が初めての気持ちを教えてくれる。
ふと、彼がそっとわたしの手を取ってきゅっと握って、わたしの目を真っ直ぐ見つめてくれた。
「はな」
「うん?」
「好き。すっげー好き」
「……!」
「これで分かってくれた?」
少し照れながらもわたしの目を真っ直ぐ見ながらそう言ってくれたブン太がものすごく愛おしい。"好き"。たった二文字の言葉なのに、恥ずかしくて、でもとても心が温かくなった。
「うん!ありがとう、ブン太」
「礼言うことじゃねえだろい」
「わたしもブン太のこと大好き」
「!」
わたしが笑いながらそう言うとブン太は意外にも驚いた顔をして、口元を手で覆いながら顔を真っ赤にしてわたしから目を逸らした。その仕草に思わずわたしまで顔が赤くなる。こんなに照れてるブン太、初めて見るかもしれない。
「実際言われると破壊力半端ねえな」
ブン太でさえそういう気持ちになってくれるのならば、やっぱり想うよりも言葉にすることは大事なことなんだなって再度認識させられる。
ちゃんと両思いだとはっきり分かった今、何も怖くないような気持ちになった。
「ブン太も嬉しい?」
「うん、すっげー嬉しい」
ブン太はそう言うと、嬉しそうに笑いながらわたしに二度目のキスをしてくれた。
一歩一歩、二人で歩んで行けている気がしてとても嬉しかった。日に日にブン太のことを好きになっていくこの気持ちが、嬉しくもあり怖くもあった。
一体、いつになったらこの気持ちの底が見えるのだろう。
