真っ赤な愛にくちづけ
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あっという間にやってきたバレンタインの季節に、わたしが張り切らないわけがなかった。わたしにとっては絶対に受け取ってくれる人がいることが初めてだったから。ちょっと張り切りすぎちゃったかな、なんて。
きっと丸井くんはたくさんの人からチョコを貰うんだろうな。そう思うと胸がちくりと痛むけれど、彼女はわたしなんだから気にすることはないはず。
モヤモヤとした思考を振り払いながらも、きちんとラッピングしたチョコレートケーキを丸井くんに差し出した。
「ど、どうぞ!」
丸井くんに向かって大げさに手渡すと、丸井くんはいつもと違い少し照れくさそうに笑って受け取ってくれた。え、なに、今きゅんとしちゃったよ。
「さんきゅー!」
「う、うん」
うわあ、思ってたよりも照れ臭いかも。それはきっと丸井くんの態度が想像していたのと違ったから。貰い慣れてるだろうし手慣れた感じで受け取られるかと思ってたのに、違った。
「今日、予定ある?」
「ないよ、何も」
「じゃあ一緒に帰ろうぜぃ。部活待っててくれるか?」
「うん、わかった!」
じゃあねと丸井くんと別れて自分の教室へ戻ったとき、きっとにやけていたに違いない。丸井くんから帰りを誘ってくれたのはなにげに初めてなのだ。今まではいつもわたしが一緒に帰ろうねって誘っていたから。どうしよう、もしかして今日初めてのキスとかするのかな。付き合って一ヶ月は経つんだし。どうしよう、なんか緊張してきた。よし、このテンションで午後の授業乗り切ろう。
*
あっという間に放課後になって、またベンチで待っておこうと思いながら下足ロッカーで靴を履き換えていた時。同じクラスの友達が手にラッピングされた箱を持ってふらりと現れた。あ、誰かにあげるのかな。
「はな…」
「どうしたの?」
「お願い、わたしの代わりに仁王くんにチョコ渡して!」
「え、ええ!何でわたしが…!」
「はななら仁王くんと話したことあるでしょ!」
そう言いながら彼女はわたしにチョコを押し付けるとすばやく走り去ってしまった。そんな無茶な…!話したことあるって言っても丸井くんがいるとき限定なのに。もちろん仁王くんと話すのが嫌ってわけじゃないけれど、わたし伝いで渡すのがなんだか複雑な気持ちだった。校舎の角に隠れながらこっちを見る友達に観念して、仁王くんのもとに行こうと決めた。
「あの、仁王くん」
「お、はなか」
「これ、あの、わたしの友達からなんだけど…」
「ありがとさん。どの子かの」
「あの建物の陰に隠れてる子です」
テニスコート付近の中庭にいた仁王くんに駆け寄ってチョコを渡すと、自分の任務を終えたように妙にほっとした。仁王くんはわたしに軽く手を振って友達の方へと向かっていく。わたしはまたベンチまで戻ると丸井くんの部活の終わりを待つのだった。
*
「お疲れさま、丸井くん」
「……」
「…丸井くん?」
いつもと同じように部活を終えた丸井くんがベンチまでやってきて、わたしも立ち上がった。なのに丸井くんは何も話さないで不機嫌そうな顔をしていた。部活でなにか嫌なことでもあったのだろうかと思ったけれど、丸井くんが発した言葉によってそれは違うのだと分かった。
「お前、仁王にもチョコあげたのかよ」
「え?何の話…」
「…わけわかんねえ」
それだけ言うと丸井くんはわたしの横を通ってその場を離れてしまった。仁王くんにも、って、もしかして友達のチョコのこと誤解されたの?残されたわたしは真っ白な頭で考えてみたけど、丸井くんに突き放されたような感覚がとても悲しかった。
家に真っ直ぐ帰る気になれなくてとぼとぼと道を歩いていると、ふと視界に入った公園に入ることにした。ベンチに座ると頭に浮かぶのはさっきまでの丸井くんの表情とか言葉とか。
誤解を解こうと思って、連絡先から丸井くんの番号を表示したまま通話ボタンを押せずにいた。だって、そもそも出てくれないかもしれない。そんなことを考えながらもやもやしていると手の中の携帯がぶるぶると震えた。…丸井くんからだ。おそるおそる通話ボタンを押した。
「もしもし…」
『今どこ?』
「あの…お、怒ってないの?」
『…それより早く会いてえんだけど』
さっきとはまったく違う丸井くんの優しい声が聞こえて、思わず涙が滲みにそうになる。自然と震え始めた手でスマホを握りしめると、今自分がいる場所を伝えた。すぐに行く、と言って丸井くんが電話を切ってから10分ほど経って、公園の入口に丸井くんの姿が目に入った。まださっき見たままの格好だったから、家には帰ってないのかな。
「ま、丸井くん…」
「…仁王に聞いた」
「え…」
「あのチョコ、誤解だったって」
「あ、うん…」
「…悪かったな」
丸井くんは罰がわるそうに頭を掻くと、わたしがさっきまで座っていたベンチに腰を落とした。お前も座れよ、と促されて、わたしもまた同じように丸井くんの隣に座る。
それと同時に訪れたのはしばしの沈黙。その沈黙を先に破ったのは丸井くんだった。
「…さっき気付いたけど、俺妬いてたのかもしんねぇ」
「え、ま、丸井くんが?」
「俺が妬いたら変?」
「変じゃないけど…嬉しい」
「嬉しい?」
「わ、わたしだけじゃなかったんだって…」
わたしがそう言うと、丸井くんは目をぱちくりさせた。彼もわたしがやきもちを妬いていたなんて想像していなかったらしい。重い女って思われたくなくて、何も考えないようにしていたから。
「どう妬いてたんだよ?」
「チョコいっぱい貰うだろうなって…丸井くん、甘いもの好きだし」
「もらってねーけど?」
「え!?」
「彼女いんのに他のヤツから貰うわけねえじゃん」
そういうといつもの笑顔でわたしに笑いかけてくれた。なんだ、丸井くん、そんなふうにわたしのこと考えてくれていたんだ。思わず涙が滲みそうになった顔を見られたくなくてぱっと顔を俯かせると、丸井くんはベンチから立ち上がった。
しばらくその場を歩き回ったあとに、座ったままのわたしに向き合う形で立ち止まる。すると丸井くんはわたしの目線の高さに身体を屈めて、ベンチに座るわたしの両頬を両手で包み込んだ。
「ま、丸井くん…?」
「黙って」
そう言われたかと思うと、次の瞬間には軽いリップ音と唇に熱い感触。それがキスだと気付いたときにはわたしたちの距離はもうさっきと同じものに戻っていた。
「──っ!」
「もーらい」
無邪気に笑う彼の言葉に恥ずかしさを覚えて、顔が真っ赤になっているに違いない。だけど恥ずかしさなんかよりも誤解を解けたこととか、はじめてキスしたことの嬉しさの方が大きかった。
泣きそうなほどに愛おしい
きっとしあわせって、こういうことなの
きっと丸井くんはたくさんの人からチョコを貰うんだろうな。そう思うと胸がちくりと痛むけれど、彼女はわたしなんだから気にすることはないはず。
モヤモヤとした思考を振り払いながらも、きちんとラッピングしたチョコレートケーキを丸井くんに差し出した。
「ど、どうぞ!」
丸井くんに向かって大げさに手渡すと、丸井くんはいつもと違い少し照れくさそうに笑って受け取ってくれた。え、なに、今きゅんとしちゃったよ。
「さんきゅー!」
「う、うん」
うわあ、思ってたよりも照れ臭いかも。それはきっと丸井くんの態度が想像していたのと違ったから。貰い慣れてるだろうし手慣れた感じで受け取られるかと思ってたのに、違った。
「今日、予定ある?」
「ないよ、何も」
「じゃあ一緒に帰ろうぜぃ。部活待っててくれるか?」
「うん、わかった!」
じゃあねと丸井くんと別れて自分の教室へ戻ったとき、きっとにやけていたに違いない。丸井くんから帰りを誘ってくれたのはなにげに初めてなのだ。今まではいつもわたしが一緒に帰ろうねって誘っていたから。どうしよう、もしかして今日初めてのキスとかするのかな。付き合って一ヶ月は経つんだし。どうしよう、なんか緊張してきた。よし、このテンションで午後の授業乗り切ろう。
*
あっという間に放課後になって、またベンチで待っておこうと思いながら下足ロッカーで靴を履き換えていた時。同じクラスの友達が手にラッピングされた箱を持ってふらりと現れた。あ、誰かにあげるのかな。
「はな…」
「どうしたの?」
「お願い、わたしの代わりに仁王くんにチョコ渡して!」
「え、ええ!何でわたしが…!」
「はななら仁王くんと話したことあるでしょ!」
そう言いながら彼女はわたしにチョコを押し付けるとすばやく走り去ってしまった。そんな無茶な…!話したことあるって言っても丸井くんがいるとき限定なのに。もちろん仁王くんと話すのが嫌ってわけじゃないけれど、わたし伝いで渡すのがなんだか複雑な気持ちだった。校舎の角に隠れながらこっちを見る友達に観念して、仁王くんのもとに行こうと決めた。
「あの、仁王くん」
「お、はなか」
「これ、あの、わたしの友達からなんだけど…」
「ありがとさん。どの子かの」
「あの建物の陰に隠れてる子です」
テニスコート付近の中庭にいた仁王くんに駆け寄ってチョコを渡すと、自分の任務を終えたように妙にほっとした。仁王くんはわたしに軽く手を振って友達の方へと向かっていく。わたしはまたベンチまで戻ると丸井くんの部活の終わりを待つのだった。
*
「お疲れさま、丸井くん」
「……」
「…丸井くん?」
いつもと同じように部活を終えた丸井くんがベンチまでやってきて、わたしも立ち上がった。なのに丸井くんは何も話さないで不機嫌そうな顔をしていた。部活でなにか嫌なことでもあったのだろうかと思ったけれど、丸井くんが発した言葉によってそれは違うのだと分かった。
「お前、仁王にもチョコあげたのかよ」
「え?何の話…」
「…わけわかんねえ」
それだけ言うと丸井くんはわたしの横を通ってその場を離れてしまった。仁王くんにも、って、もしかして友達のチョコのこと誤解されたの?残されたわたしは真っ白な頭で考えてみたけど、丸井くんに突き放されたような感覚がとても悲しかった。
家に真っ直ぐ帰る気になれなくてとぼとぼと道を歩いていると、ふと視界に入った公園に入ることにした。ベンチに座ると頭に浮かぶのはさっきまでの丸井くんの表情とか言葉とか。
誤解を解こうと思って、連絡先から丸井くんの番号を表示したまま通話ボタンを押せずにいた。だって、そもそも出てくれないかもしれない。そんなことを考えながらもやもやしていると手の中の携帯がぶるぶると震えた。…丸井くんからだ。おそるおそる通話ボタンを押した。
「もしもし…」
『今どこ?』
「あの…お、怒ってないの?」
『…それより早く会いてえんだけど』
さっきとはまったく違う丸井くんの優しい声が聞こえて、思わず涙が滲みにそうになる。自然と震え始めた手でスマホを握りしめると、今自分がいる場所を伝えた。すぐに行く、と言って丸井くんが電話を切ってから10分ほど経って、公園の入口に丸井くんの姿が目に入った。まださっき見たままの格好だったから、家には帰ってないのかな。
「ま、丸井くん…」
「…仁王に聞いた」
「え…」
「あのチョコ、誤解だったって」
「あ、うん…」
「…悪かったな」
丸井くんは罰がわるそうに頭を掻くと、わたしがさっきまで座っていたベンチに腰を落とした。お前も座れよ、と促されて、わたしもまた同じように丸井くんの隣に座る。
それと同時に訪れたのはしばしの沈黙。その沈黙を先に破ったのは丸井くんだった。
「…さっき気付いたけど、俺妬いてたのかもしんねぇ」
「え、ま、丸井くんが?」
「俺が妬いたら変?」
「変じゃないけど…嬉しい」
「嬉しい?」
「わ、わたしだけじゃなかったんだって…」
わたしがそう言うと、丸井くんは目をぱちくりさせた。彼もわたしがやきもちを妬いていたなんて想像していなかったらしい。重い女って思われたくなくて、何も考えないようにしていたから。
「どう妬いてたんだよ?」
「チョコいっぱい貰うだろうなって…丸井くん、甘いもの好きだし」
「もらってねーけど?」
「え!?」
「彼女いんのに他のヤツから貰うわけねえじゃん」
そういうといつもの笑顔でわたしに笑いかけてくれた。なんだ、丸井くん、そんなふうにわたしのこと考えてくれていたんだ。思わず涙が滲みそうになった顔を見られたくなくてぱっと顔を俯かせると、丸井くんはベンチから立ち上がった。
しばらくその場を歩き回ったあとに、座ったままのわたしに向き合う形で立ち止まる。すると丸井くんはわたしの目線の高さに身体を屈めて、ベンチに座るわたしの両頬を両手で包み込んだ。
「ま、丸井くん…?」
「黙って」
そう言われたかと思うと、次の瞬間には軽いリップ音と唇に熱い感触。それがキスだと気付いたときにはわたしたちの距離はもうさっきと同じものに戻っていた。
「──っ!」
「もーらい」
無邪気に笑う彼の言葉に恥ずかしさを覚えて、顔が真っ赤になっているに違いない。だけど恥ずかしさなんかよりも誤解を解けたこととか、はじめてキスしたことの嬉しさの方が大きかった。
泣きそうなほどに愛おしい
きっとしあわせって、こういうことなの
