沫系
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「先輩、動物好きっスか?」
「え、うん」
「じゃ、決まりっスね」
繋がっていた手はいつの間にか離れて、私たちは電車に乗ろうと駅のホームへと向かっていた。動物園に行くのだろうか、赤也くんが少し遠めの駅の切符を二枚買うと、私に一枚手渡した。先を急ごうとした赤也くんは、立ち止まった私を振り返った。
「自分で払うよ、私」
「俺が誘ったんだから気にしないでくださいよ」
笑顔でそう言われて、私はそれ以上何も言えなかった。赤也くんは気付いているんだろうか。彼に笑顔を向けられると私は何も言えなくなること。ずるいよ。これじゃあどっちが年上で先輩なのか分からなくなる。電車に揺られているときも赤也くんは何も言わなかった。それが今の私にとっては心地よくて、いつの間にか気持ちいい揺れに身を任せて、意識を手放してしまっていた。
「…せんぱい」
「ん…」
「大丈夫っスか?もう着きますよ」
「あ、寝ちゃってたんだ…ごめんね」
「いいっスよ、そんなの」
赤也くんに促されて電車から出ると、少しだけひんやりした風が頬を掠めた。こんなに遠いところ、滅多に来ないなあ、なんて思いながら辺りをきょろきょろ見回していると、それを見た赤也くんは可笑しそうに笑った。二人で迷いながらもたどり着いた動物園の入場券までも、赤也くんが払ってくれた。
「…先輩としての威厳が」
「先輩はそんなもん持たなくていいっスよ。持ってんのは真田副部長くらいっス」
「それは確かに…」
妙に納得させられて園内に入っていくと、平日だからか人があまりいなくて、その様子に赤也くんは喜んでいるようだった。人込みが好きではない私も少しほっとした。
「うわ、すっげ…」
「…真田くんみたい」
ものすごい威嚇をして周りを寄せ付けないライオンは、どこか真田くんと似たようなオーラを発していた。恐ろしくてこんなこと本人には言えないけれど。あそこのパンダは一生懸命ずっと笹を食べつづけていた。あの食い意地はブン太、みたい。また彼のことを思い出して、意識を揺らしてしまった。
「あれ、先輩好きそうっスね」
「え、ど、どれ?」
またさっきみたいに手を引かれてついてきた場所には、少し大きめの柵に囲まれた中にうさぎが何匹もいた。走り回ったり身を寄せ合って眠っていたり。柵の表にはふれあいコーナーと書かれていた。運がよかったのか、誰もいないその中に赤也くんはわたしを促した。
「か、可愛い…」
「んじゃ、いっぱい遊んで来てあげて下さいよ」
「あれ、赤也くんは?」
「あ、俺はいっス」
微妙に顔を引き攣らせた赤也くんを不思議に思って、足元に丸くなっていたうさぎを抱き上げて、赤也くんに近づいた。それと同時に赤也くんも少しづつ後ろに下がる。あ、もしかして…。私はうさぎを地面に下ろすと、一度柵から外に出た。
「なんで?こんなに可愛いのに」
「いや、俺は…」
「大丈夫だよ、入ろ」
「ちょ、先輩!」
赤也くんの腕を力いっぱい引いて、うさぎたちの待つ柵の中に入っていった。私がしゃがみ込むと、赤也くんも渋々と同じようにしゃがみ込んだ。僅かに顔が青くなっている赤也くんを見て悪いことしたかな、なんて少しだけ反省した。赤也くんを横目で見ながらそんなことを考えていると、うさぎが遠慮がちに寄ってきて、しゃがみ込む赤也くんの膝や背中に両手を乗せたり顔を擦り寄せたりしてした。赤也くんはうわ!と大声を出して驚いていたけど、私はその姿を見て思わず口元が緩んでしまう。
「は、離れろ!」
「赤也くん懐かれすぎじゃない?」
うさぎが赤也くんにじゃれつく姿を見ていると、思わず声に出して笑ってしまっていた。そんな私を見て赤也くんは少し驚いたような表情を見せた後、ふっと笑った。
「やっと笑った」
「え…?」
「俺、そっちのが先輩に合ってると思うっスよ」
膝上のうさぎをがしがしと撫ぜながら笑顔でそう言う赤也くんを見ると、なぜかじわりと涙が滲んだ。そんな情けない表情を見られたくなくて、うさぎを抱き上げてそのままぎゅっと抱きしめた。
「あ、りがとう」
口から出たお礼の言葉はあまりにも弱々しいものだったけれど。
ためいきに混じる
強くなれそうな気が、した
「え、うん」
「じゃ、決まりっスね」
繋がっていた手はいつの間にか離れて、私たちは電車に乗ろうと駅のホームへと向かっていた。動物園に行くのだろうか、赤也くんが少し遠めの駅の切符を二枚買うと、私に一枚手渡した。先を急ごうとした赤也くんは、立ち止まった私を振り返った。
「自分で払うよ、私」
「俺が誘ったんだから気にしないでくださいよ」
笑顔でそう言われて、私はそれ以上何も言えなかった。赤也くんは気付いているんだろうか。彼に笑顔を向けられると私は何も言えなくなること。ずるいよ。これじゃあどっちが年上で先輩なのか分からなくなる。電車に揺られているときも赤也くんは何も言わなかった。それが今の私にとっては心地よくて、いつの間にか気持ちいい揺れに身を任せて、意識を手放してしまっていた。
「…せんぱい」
「ん…」
「大丈夫っスか?もう着きますよ」
「あ、寝ちゃってたんだ…ごめんね」
「いいっスよ、そんなの」
赤也くんに促されて電車から出ると、少しだけひんやりした風が頬を掠めた。こんなに遠いところ、滅多に来ないなあ、なんて思いながら辺りをきょろきょろ見回していると、それを見た赤也くんは可笑しそうに笑った。二人で迷いながらもたどり着いた動物園の入場券までも、赤也くんが払ってくれた。
「…先輩としての威厳が」
「先輩はそんなもん持たなくていいっスよ。持ってんのは真田副部長くらいっス」
「それは確かに…」
妙に納得させられて園内に入っていくと、平日だからか人があまりいなくて、その様子に赤也くんは喜んでいるようだった。人込みが好きではない私も少しほっとした。
「うわ、すっげ…」
「…真田くんみたい」
ものすごい威嚇をして周りを寄せ付けないライオンは、どこか真田くんと似たようなオーラを発していた。恐ろしくてこんなこと本人には言えないけれど。あそこのパンダは一生懸命ずっと笹を食べつづけていた。あの食い意地はブン太、みたい。また彼のことを思い出して、意識を揺らしてしまった。
「あれ、先輩好きそうっスね」
「え、ど、どれ?」
またさっきみたいに手を引かれてついてきた場所には、少し大きめの柵に囲まれた中にうさぎが何匹もいた。走り回ったり身を寄せ合って眠っていたり。柵の表にはふれあいコーナーと書かれていた。運がよかったのか、誰もいないその中に赤也くんはわたしを促した。
「か、可愛い…」
「んじゃ、いっぱい遊んで来てあげて下さいよ」
「あれ、赤也くんは?」
「あ、俺はいっス」
微妙に顔を引き攣らせた赤也くんを不思議に思って、足元に丸くなっていたうさぎを抱き上げて、赤也くんに近づいた。それと同時に赤也くんも少しづつ後ろに下がる。あ、もしかして…。私はうさぎを地面に下ろすと、一度柵から外に出た。
「なんで?こんなに可愛いのに」
「いや、俺は…」
「大丈夫だよ、入ろ」
「ちょ、先輩!」
赤也くんの腕を力いっぱい引いて、うさぎたちの待つ柵の中に入っていった。私がしゃがみ込むと、赤也くんも渋々と同じようにしゃがみ込んだ。僅かに顔が青くなっている赤也くんを見て悪いことしたかな、なんて少しだけ反省した。赤也くんを横目で見ながらそんなことを考えていると、うさぎが遠慮がちに寄ってきて、しゃがみ込む赤也くんの膝や背中に両手を乗せたり顔を擦り寄せたりしてした。赤也くんはうわ!と大声を出して驚いていたけど、私はその姿を見て思わず口元が緩んでしまう。
「は、離れろ!」
「赤也くん懐かれすぎじゃない?」
うさぎが赤也くんにじゃれつく姿を見ていると、思わず声に出して笑ってしまっていた。そんな私を見て赤也くんは少し驚いたような表情を見せた後、ふっと笑った。
「やっと笑った」
「え…?」
「俺、そっちのが先輩に合ってると思うっスよ」
膝上のうさぎをがしがしと撫ぜながら笑顔でそう言う赤也くんを見ると、なぜかじわりと涙が滲んだ。そんな情けない表情を見られたくなくて、うさぎを抱き上げてそのままぎゅっと抱きしめた。
「あ、りがとう」
口から出たお礼の言葉はあまりにも弱々しいものだったけれど。
ためいきに混じる
強くなれそうな気が、した
