沫系
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今思えば、この時もまだ、私の心は彼に支配されていたんじゃないかと思う。
「先輩、これうまいっスね」
「…うん」
「先輩?」
「……」
昼休み、今日はお弁当を食べた後にこの間のように赤也くんとばったり鉢合わせした。ううん、私はどこかで赤也くんに会えることを期待していたのかもしれない。そのまま中庭のベンチに並んで座ると、彼が食堂で買ったというチョコレートのお菓子を食べていた。これ、この間ブン太が女の子たちと騒いでたやつだ。こんな風にこの間のことがずっと頭から離れないでいた。このお菓子は味なんてわからないまま喉を通っていく。赤也くんの声も、右から左に抜けていってる気がする。最低だ、私。いつでも私情を挟んで勝手に落ち込んで、色んな人に迷惑を掛けてる。ブン太だって、こんな私に愛想を尽かしたのかもしれない。
「はな先輩!」
「あ、ご、ごめん…」
はっとして顔をあげると、悲しそうな表情の赤也くんが目に入った。また、傷付けてしまった。ごめんね、と繰り返すと、切原くんは私を宥めるようににかっと笑った。今の私にとって切原くんのこの笑顔が一番ほっとする存在だと、最近気付いた。ずるいとわかっていても、この笑顔だけは失いたくない。
「そんなに謝らないで下さいよ。それより先輩」
「どうしたの?」
「今日、どっか行きましょうよ」
「どこか…?」
「そ、俺、今日部活休みなんス!」
そう言って笑顔を輝かせた彼に私は思わず拍子抜けした。もちろん、悪い意味ではなくて。私が慌てて口を開こうとした途端、それを遮るようにチャイムが昼休みの終わりを告げた。それと同時に立ち上がった赤也くんは、走りにも似た早い足取りで校舎へと向かった。
「んじゃ、放課後下足ロッカーで待ってて下さいよ!」
「あ…行っちゃった」
どうしよう。ただでさえ今日は悲しませるようなことしてしまったのに、遊びになんて行ったらもっと嫌われるようなことになるかもしれない。赤也くんには嫌われたくないのに。そんなことを考えながら思わず出そうな溜息を飲み込んで、私もベンチから立ち上がると、急いで教室へと向かった。嫌いな数学の授業なのに、何故かこんな日に限って時間が経つのは早く、悩む間もなくあっという間に放課後がやってくる。心の準備、出来てないよ。約束を破ることはしたくないから、私は恐る恐る下足ロッカーへと向かう。所々出っ張った壁に隠れながらも歩いていくと、赤也くんがロッカーに凭れたまんまぼうっとどこかを見つめていた。あれ、なんか疲れてるように見えるけど。
「赤也くん」
「あ、先輩!」
赤也くんは私を見つけると、昼休みと少しも変わらない笑顔で私の手を引いた。突然のことに何を言うこともできなくて、ただその手に引かれて学校を出た。不思議と、嫌、って感情は湧いてこなかった。赤也くんの手が温かかったから。誰かに、彼の手に似ている。自分でも気付かないうちに、もう少しだけこの体温を感じていたいと願っていた。
恋愛と記憶
私の中の彼は、いつか、「他の誰か」に塗り替えられるのかな
「先輩、これうまいっスね」
「…うん」
「先輩?」
「……」
昼休み、今日はお弁当を食べた後にこの間のように赤也くんとばったり鉢合わせした。ううん、私はどこかで赤也くんに会えることを期待していたのかもしれない。そのまま中庭のベンチに並んで座ると、彼が食堂で買ったというチョコレートのお菓子を食べていた。これ、この間ブン太が女の子たちと騒いでたやつだ。こんな風にこの間のことがずっと頭から離れないでいた。このお菓子は味なんてわからないまま喉を通っていく。赤也くんの声も、右から左に抜けていってる気がする。最低だ、私。いつでも私情を挟んで勝手に落ち込んで、色んな人に迷惑を掛けてる。ブン太だって、こんな私に愛想を尽かしたのかもしれない。
「はな先輩!」
「あ、ご、ごめん…」
はっとして顔をあげると、悲しそうな表情の赤也くんが目に入った。また、傷付けてしまった。ごめんね、と繰り返すと、切原くんは私を宥めるようににかっと笑った。今の私にとって切原くんのこの笑顔が一番ほっとする存在だと、最近気付いた。ずるいとわかっていても、この笑顔だけは失いたくない。
「そんなに謝らないで下さいよ。それより先輩」
「どうしたの?」
「今日、どっか行きましょうよ」
「どこか…?」
「そ、俺、今日部活休みなんス!」
そう言って笑顔を輝かせた彼に私は思わず拍子抜けした。もちろん、悪い意味ではなくて。私が慌てて口を開こうとした途端、それを遮るようにチャイムが昼休みの終わりを告げた。それと同時に立ち上がった赤也くんは、走りにも似た早い足取りで校舎へと向かった。
「んじゃ、放課後下足ロッカーで待ってて下さいよ!」
「あ…行っちゃった」
どうしよう。ただでさえ今日は悲しませるようなことしてしまったのに、遊びになんて行ったらもっと嫌われるようなことになるかもしれない。赤也くんには嫌われたくないのに。そんなことを考えながら思わず出そうな溜息を飲み込んで、私もベンチから立ち上がると、急いで教室へと向かった。嫌いな数学の授業なのに、何故かこんな日に限って時間が経つのは早く、悩む間もなくあっという間に放課後がやってくる。心の準備、出来てないよ。約束を破ることはしたくないから、私は恐る恐る下足ロッカーへと向かう。所々出っ張った壁に隠れながらも歩いていくと、赤也くんがロッカーに凭れたまんまぼうっとどこかを見つめていた。あれ、なんか疲れてるように見えるけど。
「赤也くん」
「あ、先輩!」
赤也くんは私を見つけると、昼休みと少しも変わらない笑顔で私の手を引いた。突然のことに何を言うこともできなくて、ただその手に引かれて学校を出た。不思議と、嫌、って感情は湧いてこなかった。赤也くんの手が温かかったから。誰かに、彼の手に似ている。自分でも気付かないうちに、もう少しだけこの体温を感じていたいと願っていた。
恋愛と記憶
私の中の彼は、いつか、「他の誰か」に塗り替えられるのかな
