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ある日、わたしの機嫌は最高に悪かった。それもそのはず。ついこの間丸井によってもたらされた羞恥はわたしの中で一生忘れられない黒歴史になるだろう。二日間宿題もせずに頭を捻りながら丸井への復讐を考えたものの、いい案は出てこなかった。そこでわたしはとびっきりの男がいたことを忘れていたのだった。
「おいこら仁王」
「…女の子がそんな言葉遣いしちゃいかんぜよ」
「全てはあの赤髪のせいだよ」
「で、何か用か?」
聞かなくても分かってるのだろう、頬杖をついてわたしを見上げる仁王の表情はとても楽しそうだった。きっとわたしと丸井のやりとりが面白いのだろう。わたしはきょろきょろと教室の中を見渡して丸井がいないことを確認すると、こそこそ話をするときのように口元に手を添えた。
「奴の弱点を教えてください」
「弱点のう…」
顎に手を当てて考えるそぶりを見せた仁王にわたしはうずうずしてしまう。あー、早く仕返ししてやりたい。あの丸井の余裕っぷりがむかつくから、ぎゃふんと言わせてやりたくてしょうがないのだ。
「お前さん確か今日調理実習あったよな」
「うん、あるけど」
「じゃあ協力してやるき、作ったもんくれ」
「うわ、そういうの取るんだ。まあいいけどさ」
わたしは自分の鞄から今日作ったカップケーキを持ってきて仁王に渡した。ありがとさん、とだけ言って教室を出て行った仁王は弱点やら作戦やら、まったく教えてくれなかった。結局何をするのか気になるけど、まあ仁王のことだからきっと面白いことをしてくれるに違いない。カップケーキだってあげたんだし!大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせて、友達の輪の中へと戻っていった。
*
この間たなかと色々あった日から、あいつはやたらと大人しくなった。こっちとしては安心するっていうのと、嵐の前の静けさって気がするのと半々ぐらい。このまま大人しくなってくれりゃあいいんだけどなー、とか考えながらパンでも買いに行こうかと廊下を歩いていると、前方には俺に向かって歩いてくる仁王の姿。後ろ手で何かを隠しながら、心無しか楽しそうに見える。
「これ、なーんじゃ」
「は?ケーキ?」
仁王が俺の元までやってきて背中に隠していたものを見せてきたかと思うと、それは仁王の手と比べると小さいカップケーキ。今日女子が調理実習だったらしく、クラスの女子がくれたっけ。誰かにもらったのを俺に見せびらかして対抗してんのかな。いやでも仁王はそんな奴じゃねえし。あ、本命の奴から貰ったとか?いやでも本命がいるとか聞いてねえな。
「色々考えとるみたいじゃけど、これはお前さんの」
「何で俺?」
「たなかから」
「は?なんであいつから…」
俺に差し出されたカップケーキに怪訝の視線を向ける。何でいきなりあいつから俺にお菓子が送られてくんのかわからねえ。それ以前にまず怪しい。まさか俺づたいに誰かに渡せとか?いやそれなら仁王に頼んでるよな。あれ、待てよ。まさか仁王づたいに俺に?
「今までのお詫びじゃと。健気な奴じゃのう」
「うっわ、あいつ、そんなことするとか意外だな…」
お詫びってことは、今まで教科書数冊で俺を殴ってきたこととか嫌い嫌いって連呼してきたこととか、全部悪いって思ってるってことだよな。なんだよ、意外と良いとこあるんじゃねえか。仁王の用はこれだけだったのか、小さく手を振ってその場から離れていった。俺はパンを買いに行くことなんかすっかり忘れて、教室にいるであろうたなかのところへと足を進めた。
「おい、たなか」
「なによ、赤髪野郎」
「これ、さんきゅーな。俺も今までお前に悪いこと…」
俺が恥を捨てて必死に謝ってるってのに、目の前にいるこいつはきょとんとした表情を見せた後になぜか顔を両手で隠して俯いてしまった。純粋に泣いてるのかと思って焦った俺は、一歩たなかに近付いた、のに。
「お、おい…」
「あははは!はっ、お腹いたっ…」
「…何笑ってんだよぃ」
「わたし、それ仁王にあげたんだもんね」
「な!?」
そうだ。仁王の初めの楽しそうな顔を忘れてた。あんな顔をするときは何か企んでいるってことぐらいわかってたはずなのに。くっそ、嵌められた!あいつ、絶対許さねえ!
「おいこら仁王」
「…女の子がそんな言葉遣いしちゃいかんぜよ」
「全てはあの赤髪のせいだよ」
「で、何か用か?」
聞かなくても分かってるのだろう、頬杖をついてわたしを見上げる仁王の表情はとても楽しそうだった。きっとわたしと丸井のやりとりが面白いのだろう。わたしはきょろきょろと教室の中を見渡して丸井がいないことを確認すると、こそこそ話をするときのように口元に手を添えた。
「奴の弱点を教えてください」
「弱点のう…」
顎に手を当てて考えるそぶりを見せた仁王にわたしはうずうずしてしまう。あー、早く仕返ししてやりたい。あの丸井の余裕っぷりがむかつくから、ぎゃふんと言わせてやりたくてしょうがないのだ。
「お前さん確か今日調理実習あったよな」
「うん、あるけど」
「じゃあ協力してやるき、作ったもんくれ」
「うわ、そういうの取るんだ。まあいいけどさ」
わたしは自分の鞄から今日作ったカップケーキを持ってきて仁王に渡した。ありがとさん、とだけ言って教室を出て行った仁王は弱点やら作戦やら、まったく教えてくれなかった。結局何をするのか気になるけど、まあ仁王のことだからきっと面白いことをしてくれるに違いない。カップケーキだってあげたんだし!大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせて、友達の輪の中へと戻っていった。
*
この間たなかと色々あった日から、あいつはやたらと大人しくなった。こっちとしては安心するっていうのと、嵐の前の静けさって気がするのと半々ぐらい。このまま大人しくなってくれりゃあいいんだけどなー、とか考えながらパンでも買いに行こうかと廊下を歩いていると、前方には俺に向かって歩いてくる仁王の姿。後ろ手で何かを隠しながら、心無しか楽しそうに見える。
「これ、なーんじゃ」
「は?ケーキ?」
仁王が俺の元までやってきて背中に隠していたものを見せてきたかと思うと、それは仁王の手と比べると小さいカップケーキ。今日女子が調理実習だったらしく、クラスの女子がくれたっけ。誰かにもらったのを俺に見せびらかして対抗してんのかな。いやでも仁王はそんな奴じゃねえし。あ、本命の奴から貰ったとか?いやでも本命がいるとか聞いてねえな。
「色々考えとるみたいじゃけど、これはお前さんの」
「何で俺?」
「たなかから」
「は?なんであいつから…」
俺に差し出されたカップケーキに怪訝の視線を向ける。何でいきなりあいつから俺にお菓子が送られてくんのかわからねえ。それ以前にまず怪しい。まさか俺づたいに誰かに渡せとか?いやそれなら仁王に頼んでるよな。あれ、待てよ。まさか仁王づたいに俺に?
「今までのお詫びじゃと。健気な奴じゃのう」
「うっわ、あいつ、そんなことするとか意外だな…」
お詫びってことは、今まで教科書数冊で俺を殴ってきたこととか嫌い嫌いって連呼してきたこととか、全部悪いって思ってるってことだよな。なんだよ、意外と良いとこあるんじゃねえか。仁王の用はこれだけだったのか、小さく手を振ってその場から離れていった。俺はパンを買いに行くことなんかすっかり忘れて、教室にいるであろうたなかのところへと足を進めた。
「おい、たなか」
「なによ、赤髪野郎」
「これ、さんきゅーな。俺も今までお前に悪いこと…」
俺が恥を捨てて必死に謝ってるってのに、目の前にいるこいつはきょとんとした表情を見せた後になぜか顔を両手で隠して俯いてしまった。純粋に泣いてるのかと思って焦った俺は、一歩たなかに近付いた、のに。
「お、おい…」
「あははは!はっ、お腹いたっ…」
「…何笑ってんだよぃ」
「わたし、それ仁王にあげたんだもんね」
「な!?」
そうだ。仁王の初めの楽しそうな顔を忘れてた。あんな顔をするときは何か企んでいるってことぐらいわかってたはずなのに。くっそ、嵌められた!あいつ、絶対許さねえ!
