唇で紡ぐ哀
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『俺は一緒に救急車に乗ったけど、レギュラーのみんなも病院に向かってるからはなにも来て欲しい。』
電話の途中、声も携帯を持つ手も震えてしまい、もう片方の手で抑える。幸村から言われた言葉を、理解したつもりでいても心が受け入れられなかった。ブン太が事故に遭ったなんて、冗談としか思えなかったから。信じたくなかったから。電話を切ったあと、真っ白な頭ではしばらく何も考えられなかったけど、とりあえず病院に行こうと急いで服を着替え始めた。
幸村に教えてもらった大きな病院に入ると、さっき送ってもらったメールを見て部屋の番号を確認した。ばくばくとうるさい心臓を抑えるために深呼吸をしながらもエレベーターに乗り込んで5階のボタンを押す。その指すら震えてしまう。
5階に着くとブン太たちのいる部屋はエレベーターのすぐ近くにあった。丸井ブン太様、と書かれた病室のドアを開けると、部屋にいた立海のレギュラー達が全員わたしを見遣った。ブン太は部屋の隅にあるベッドの上で寝息を立てていて、少しだけ安心した。
痛くないのかな、苦しく、ないのかな。
「はな…」
「連絡、ありがとう。ブン太はどんな容態なの…?」
「3、4日で退院は出来るんだけど…」
「けど…?」
いやに深刻そうな幸村の表情に、上手く言葉が出せなかった。3日ほどで退院出来るってことはそこまでひどい事故ではなかったって、ことだよね?
半ば自分にそう言い聞かせながらも黙って幸村の返事を待った。だけど、次に聞こえてきた言葉が、わたしの世界を変えてしまったのだ。
「声を出せないんだ」
「え…?」
声が出ない?ブン太が話せない…?目の前が真っ暗になったと言っても大袈裟じゃないほど、何も考えられなくなった。はな先輩!とわたしを呼んだ大きな声で我に返ると、笑顔の赤也が視界に入った。今起こってる出来事が嘘なんじゃないかと錯覚してしまいそうなほどに。
「んな悲しそうな顔してたら丸井先輩が泣きますよ?」
「赤也…」
「ほら、笑って!」
こんなときに何無茶なことを言うんだと思いながらも、自分の両頬を両手で圧迫させてわたしを笑わせようとする赤也を見ていると、なんだか申し訳なくなってしまった。零れそうになったのは笑顔なんかじゃなくて紛れもない涙。流すもんかと瞼を腕でごしごし擦っていると、頭に誰かの大きな手がぽんと乗せられた。
「心配するな」
「や、なぎ」
「事故の衝撃が強かったからな。精神的なものから来る、一時的なものだろう」
「うん…」
柳がそう言うなら大丈夫だよ。うん、信じよう。だけど未だ眠っているブン太に近付くのが怖かった。目が覚めたとき、なんて声を掛けてあげたらいいの。
もう月の映える夜
事実を受け止めたくなかった
電話の途中、声も携帯を持つ手も震えてしまい、もう片方の手で抑える。幸村から言われた言葉を、理解したつもりでいても心が受け入れられなかった。ブン太が事故に遭ったなんて、冗談としか思えなかったから。信じたくなかったから。電話を切ったあと、真っ白な頭ではしばらく何も考えられなかったけど、とりあえず病院に行こうと急いで服を着替え始めた。
幸村に教えてもらった大きな病院に入ると、さっき送ってもらったメールを見て部屋の番号を確認した。ばくばくとうるさい心臓を抑えるために深呼吸をしながらもエレベーターに乗り込んで5階のボタンを押す。その指すら震えてしまう。
5階に着くとブン太たちのいる部屋はエレベーターのすぐ近くにあった。丸井ブン太様、と書かれた病室のドアを開けると、部屋にいた立海のレギュラー達が全員わたしを見遣った。ブン太は部屋の隅にあるベッドの上で寝息を立てていて、少しだけ安心した。
痛くないのかな、苦しく、ないのかな。
「はな…」
「連絡、ありがとう。ブン太はどんな容態なの…?」
「3、4日で退院は出来るんだけど…」
「けど…?」
いやに深刻そうな幸村の表情に、上手く言葉が出せなかった。3日ほどで退院出来るってことはそこまでひどい事故ではなかったって、ことだよね?
半ば自分にそう言い聞かせながらも黙って幸村の返事を待った。だけど、次に聞こえてきた言葉が、わたしの世界を変えてしまったのだ。
「声を出せないんだ」
「え…?」
声が出ない?ブン太が話せない…?目の前が真っ暗になったと言っても大袈裟じゃないほど、何も考えられなくなった。はな先輩!とわたしを呼んだ大きな声で我に返ると、笑顔の赤也が視界に入った。今起こってる出来事が嘘なんじゃないかと錯覚してしまいそうなほどに。
「んな悲しそうな顔してたら丸井先輩が泣きますよ?」
「赤也…」
「ほら、笑って!」
こんなときに何無茶なことを言うんだと思いながらも、自分の両頬を両手で圧迫させてわたしを笑わせようとする赤也を見ていると、なんだか申し訳なくなってしまった。零れそうになったのは笑顔なんかじゃなくて紛れもない涙。流すもんかと瞼を腕でごしごし擦っていると、頭に誰かの大きな手がぽんと乗せられた。
「心配するな」
「や、なぎ」
「事故の衝撃が強かったからな。精神的なものから来る、一時的なものだろう」
「うん…」
柳がそう言うなら大丈夫だよ。うん、信じよう。だけど未だ眠っているブン太に近付くのが怖かった。目が覚めたとき、なんて声を掛けてあげたらいいの。
もう月の映える夜
事実を受け止めたくなかった
