沫系
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あの頃と何も変わらなかった。私の隣にブン太が座って、目の前のお父さんとお母さんはにこにこしていて。突然のことだったのにブン太は嫌な顔ひとつせずにおいしいです、と言いながら並べられたご飯に手を付ける。そんなブン太に助けられたと思うのもまた事実で。でも、どうしよう。ブン太、気付いちゃったよね。私がまだ、別れたって言ってないこと。未練たらたらなやつ、って思われてるかもしれない。
「はな」
「え、な、なに?」
「ご飯冷めるわよ?ケーキもあるんだから早く食べなさいね」
「うん…」
なんだか、変なの。この空間だけ付き合ってた頃に戻った感じ。好き合ってたあの頃、みたいに。当たり前のようにブン太がお母さんとお父さんと話をして、笑ってる。お母さんはブン太が甘いものが好きってことが知ってから彼にだけケーキを二つ買ってくるようになったんだっけ。ずるいとか言いながらもブン太がうれしそうに食べてるのを見て、私も頬が緩んでた。
「じゃあ俺、そろそろ帰ります。ごちそうさまでした」
「あら、もう帰っちゃうの?またいつでも来てね」
「あ、はい」
ぎこちなさそうに笑って、ブン太は靴を履いて外へと出た。私は門のところまで出て、彼の後ろ姿を見守る。付き合ってた頃は別れるのが惜しくてここでよく話してたけど、今は違う。ただ、黙って見守るだけ。だけどなにか、心の中でぐるぐると渦巻いてる。
「…ブン太!」
「え?」
歩き出したブン太に向かって思わず声を掛けてしまった。ブン太は当然、驚いた様子で私を振り返る。今言わないと、ずっともやもやしたままになりそうだから。
「その、今日はごめんね」
「別に気にしてねえって。お前が言い出しにくい気持ちも分かるし、それに」
ブン太はそこで言葉を詰まらせると、一度空を見てから、その視線を、また私に重ねた。
「またこうやって迎えてもらえるとは思ってなかったから、俺は嬉しかったぜぃ」
じゃあな、そう言って笑うと、ブン太は暗闇の中に消えていった。ずるい。そんな顔されたら、勘違いしてしまう。しばらくその場で立ち尽くしたあと、お母さんやお父さんに冷やかされながらも階段を上って自分の部屋に向かった。ブン太、お父さんやお母さんは、ブン太が私の彼氏だからってだけでお気に入りだったわけじゃないよ。ちゃんと、ブン太のいいところを知って、好いてるんだから。
部屋に入ると、壁に貼ってある、付き合っていた頃にブン太と二人で撮った写真が目に入った。部屋の様子は別れる前となんにも変わってない。ブン太との思い出が詰まったこの部屋を壊すのが怖かったから。机の上に置かれてあった、ブン太に貰った指輪を人差し指と親指で挟んで、じっと見つめた。何のムードもない場で、安物だけどやるって言って、くれた指輪。少なくとも、私にとってはどんな宝石よりも輝いて見えて、大事な宝物だった。だけど私、本当は気付いてたんだよ。ブン太が自分の大好きなお菓子を我慢してこの指輪を買ってくれたこと。安物なんかじゃ、ないってこと。いつの間にか視界がじわ、と滲んで、指輪がきらりと光った。やっと、赤也くんのおかげで強くなったっておもえたのに。
ああ、そっか。
私、ブン太のことになると弱くなるんだ。
とおい記憶のあなたとわたし
情けないほどに、昔の感情が一気に蘇った
「はな」
「え、な、なに?」
「ご飯冷めるわよ?ケーキもあるんだから早く食べなさいね」
「うん…」
なんだか、変なの。この空間だけ付き合ってた頃に戻った感じ。好き合ってたあの頃、みたいに。当たり前のようにブン太がお母さんとお父さんと話をして、笑ってる。お母さんはブン太が甘いものが好きってことが知ってから彼にだけケーキを二つ買ってくるようになったんだっけ。ずるいとか言いながらもブン太がうれしそうに食べてるのを見て、私も頬が緩んでた。
「じゃあ俺、そろそろ帰ります。ごちそうさまでした」
「あら、もう帰っちゃうの?またいつでも来てね」
「あ、はい」
ぎこちなさそうに笑って、ブン太は靴を履いて外へと出た。私は門のところまで出て、彼の後ろ姿を見守る。付き合ってた頃は別れるのが惜しくてここでよく話してたけど、今は違う。ただ、黙って見守るだけ。だけどなにか、心の中でぐるぐると渦巻いてる。
「…ブン太!」
「え?」
歩き出したブン太に向かって思わず声を掛けてしまった。ブン太は当然、驚いた様子で私を振り返る。今言わないと、ずっともやもやしたままになりそうだから。
「その、今日はごめんね」
「別に気にしてねえって。お前が言い出しにくい気持ちも分かるし、それに」
ブン太はそこで言葉を詰まらせると、一度空を見てから、その視線を、また私に重ねた。
「またこうやって迎えてもらえるとは思ってなかったから、俺は嬉しかったぜぃ」
じゃあな、そう言って笑うと、ブン太は暗闇の中に消えていった。ずるい。そんな顔されたら、勘違いしてしまう。しばらくその場で立ち尽くしたあと、お母さんやお父さんに冷やかされながらも階段を上って自分の部屋に向かった。ブン太、お父さんやお母さんは、ブン太が私の彼氏だからってだけでお気に入りだったわけじゃないよ。ちゃんと、ブン太のいいところを知って、好いてるんだから。
部屋に入ると、壁に貼ってある、付き合っていた頃にブン太と二人で撮った写真が目に入った。部屋の様子は別れる前となんにも変わってない。ブン太との思い出が詰まったこの部屋を壊すのが怖かったから。机の上に置かれてあった、ブン太に貰った指輪を人差し指と親指で挟んで、じっと見つめた。何のムードもない場で、安物だけどやるって言って、くれた指輪。少なくとも、私にとってはどんな宝石よりも輝いて見えて、大事な宝物だった。だけど私、本当は気付いてたんだよ。ブン太が自分の大好きなお菓子を我慢してこの指輪を買ってくれたこと。安物なんかじゃ、ないってこと。いつの間にか視界がじわ、と滲んで、指輪がきらりと光った。やっと、赤也くんのおかげで強くなったっておもえたのに。
ああ、そっか。
私、ブン太のことになると弱くなるんだ。
とおい記憶のあなたとわたし
情けないほどに、昔の感情が一気に蘇った
