王子様たちと甘いひとときを
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幼馴染の雅治のことは、ずっとずっとお兄ちゃんみたいな存在だと勘違いしていた。小さい時から辛い時には抱きしめてくれたし、甘えたい時には自分が疲れていようが相手をしてくれる。つい最近までは、そんな大人な部分に妹として惹かれているのだと勘違いしていた。
「雅治の手、あったかいね」
「そうかの?」
雅治の部屋のソファーに座る彼の膝に頭を乗せて横たわる。そんなわたしの髪を梳かすようにして撫ぜる彼の大きな手が大好き。温かくて優しくて、それだけで生きていける気さえする。そんな彼の手の甲に自分の手のひらを重ねてみると、雅治はふっと可笑しそうに笑った。
「どうして笑うの?」
「お前さんが可愛いから」
「またそういうことを簡単に…」
彼のたった一言で最も簡単に頬は紅潮する。子供扱いされてるのかなって悔しくなるけど、雅治にこの言葉をもらえる時間がいちばん好き。わたしも、わたしのように彼をドキドキさせることはあるのだろうか。この、自分の心臓が自分のものじゃなくなるかのような、こんな気持ちにさせることは。
伏せていた瞼を上げて顔を傾けると、わたしを見下ろす彼の長い睫毛が目に入った。むくりと起き上がって雅治を見つめると、彼のさらさらの髪に手を延ばした。
「髪の毛…」
「ん?」
「きれい…目も…」
欲しい、と思わず声に出していたことに対して、彼は少しだけ驚いていた。わたしもそんなことを言うつもりはなかったのに。彼の瞳を見ていると、それだけでもう何も考えられなくなってしまう。彼はそんなこと、考えもしないのだろうけれど。
「お前さん、いつからそんな臭い台詞言うようになったんじゃ」
「…え、あっ、いや…」
「目とか髪…?とか、そんな遠慮せんでええ」
「え…?」
雅治はなぜか嬉しそうに頬を緩めると、わたしの両手を掴んで、彼の頬を包ませた。なすがままだったわたしも、自ら指先を彼の頬に馴染ませる。
「おまんに全部やるき」
目の前にいる彼はどこか嬉しそうに、今度はわたしの頬を両手で包む。彼が今から何をするかなんて分かっていながらその腕を振りほどかないのは、わたしが彼に魅了されていたからに違いない。期待通りに重なった唇は、彼によって角度が変わり、わたしはそれと同時に彼の服を掴んだ。お兄ちゃんなんかじゃない、って、知らされるように目眩がする。この人はわたしのもの。絶対絶対、誰にも渡さないんだから。そういう意味を込めてわたしも彼のキスに応える。
「気持ちの良いもんじゃな」
「ば、ばか」
わたしももちろん雅治と同じ気持ちだけれど、言葉にするには少し生々しい気もする。これで終われば悩むことなんてなにもないのに。雅治は一度口付けを交わすと、なかなか離そうとはしてくれない。
「っ…長いよ、雅治」
「嫌か?」
「い、嫌じゃないけど…」
「俺の気持ちが伝わるかと思ったんじゃが…」
そうか。口数の少ない雅治にとってはキスはとびっきりの愛情表現ということなのかもしれない。反省の色なんて少しも見えない彼の表情。本当に本当に、彼には敵わない。
頭の中はだんだんと彼に支配されてしまっていく。それに気付くのにはうんと時間がかかってしまって、もう後戻りなんてできなくて。そう伝えると、いつも同じ、「それで良い」と嬉しそうに彼は言う。
「どうして?」
「嬉しいからじゃ」
「…でもね」
わたしは、笑っている雅治とは正反対で、だんだんと悲しくなっていった。雅治が嬉しいならそれで良い、ずっとそう思っていたけど、でも。
「辛いの…」
好きになればそれと同時に、わたしの中で別の気持ちが膨らんでいく。それは心配であったり、嫉妬であったり、言葉には出来ない寂しい気持ち。そんな気持ちが増えていく度に、こんな汚い心を持ってるわたしなんて、雅治は捨ててしまうんじゃないかって思ってしまう。だけど、それでも、離れたくなんかない。そんなことを考えていると、いつの間にか右手にぐっと力が入っていた。すると、雅治はわたしのその手に自身の手を重ねた。いきなりのことに驚いて、少し震えてしまった。顔をあげると同時に、耳元で優しいテノールの声が聞こえた。
「そのままで良い」
「ま、さはる」
「その病は俺にしか治せんからの」
雅治は、同じ気持ちになったりしないのかな?わたしみたいに不安になったりとか、やきもち妬いたりだとか。そう思うと悔しくなったけれど、困らせてやりたくなったけれど。その術さえもわたしは知らない。
「どうすれば良いの?」
「ずっと俺の傍にいればいつかは治るき」
わたしには雅治のその言葉で適当に言いくるめられた気がして、少しだけ悲しい気持ちになった。そんなわたしの頬に愛おしそうに手を添えると、雅治はまたわたしに優しい口付けをした。
あとから分かったのは、あの言葉が雅治にとって大きな愛情だったってこと。わたしがそれに気付くのは、まだまだ先のお話。
きっと明日も明後日も
おわりが見えないや
20260402
「雅治の手、あったかいね」
「そうかの?」
雅治の部屋のソファーに座る彼の膝に頭を乗せて横たわる。そんなわたしの髪を梳かすようにして撫ぜる彼の大きな手が大好き。温かくて優しくて、それだけで生きていける気さえする。そんな彼の手の甲に自分の手のひらを重ねてみると、雅治はふっと可笑しそうに笑った。
「どうして笑うの?」
「お前さんが可愛いから」
「またそういうことを簡単に…」
彼のたった一言で最も簡単に頬は紅潮する。子供扱いされてるのかなって悔しくなるけど、雅治にこの言葉をもらえる時間がいちばん好き。わたしも、わたしのように彼をドキドキさせることはあるのだろうか。この、自分の心臓が自分のものじゃなくなるかのような、こんな気持ちにさせることは。
伏せていた瞼を上げて顔を傾けると、わたしを見下ろす彼の長い睫毛が目に入った。むくりと起き上がって雅治を見つめると、彼のさらさらの髪に手を延ばした。
「髪の毛…」
「ん?」
「きれい…目も…」
欲しい、と思わず声に出していたことに対して、彼は少しだけ驚いていた。わたしもそんなことを言うつもりはなかったのに。彼の瞳を見ていると、それだけでもう何も考えられなくなってしまう。彼はそんなこと、考えもしないのだろうけれど。
「お前さん、いつからそんな臭い台詞言うようになったんじゃ」
「…え、あっ、いや…」
「目とか髪…?とか、そんな遠慮せんでええ」
「え…?」
雅治はなぜか嬉しそうに頬を緩めると、わたしの両手を掴んで、彼の頬を包ませた。なすがままだったわたしも、自ら指先を彼の頬に馴染ませる。
「おまんに全部やるき」
目の前にいる彼はどこか嬉しそうに、今度はわたしの頬を両手で包む。彼が今から何をするかなんて分かっていながらその腕を振りほどかないのは、わたしが彼に魅了されていたからに違いない。期待通りに重なった唇は、彼によって角度が変わり、わたしはそれと同時に彼の服を掴んだ。お兄ちゃんなんかじゃない、って、知らされるように目眩がする。この人はわたしのもの。絶対絶対、誰にも渡さないんだから。そういう意味を込めてわたしも彼のキスに応える。
「気持ちの良いもんじゃな」
「ば、ばか」
わたしももちろん雅治と同じ気持ちだけれど、言葉にするには少し生々しい気もする。これで終われば悩むことなんてなにもないのに。雅治は一度口付けを交わすと、なかなか離そうとはしてくれない。
「っ…長いよ、雅治」
「嫌か?」
「い、嫌じゃないけど…」
「俺の気持ちが伝わるかと思ったんじゃが…」
そうか。口数の少ない雅治にとってはキスはとびっきりの愛情表現ということなのかもしれない。反省の色なんて少しも見えない彼の表情。本当に本当に、彼には敵わない。
頭の中はだんだんと彼に支配されてしまっていく。それに気付くのにはうんと時間がかかってしまって、もう後戻りなんてできなくて。そう伝えると、いつも同じ、「それで良い」と嬉しそうに彼は言う。
「どうして?」
「嬉しいからじゃ」
「…でもね」
わたしは、笑っている雅治とは正反対で、だんだんと悲しくなっていった。雅治が嬉しいならそれで良い、ずっとそう思っていたけど、でも。
「辛いの…」
好きになればそれと同時に、わたしの中で別の気持ちが膨らんでいく。それは心配であったり、嫉妬であったり、言葉には出来ない寂しい気持ち。そんな気持ちが増えていく度に、こんな汚い心を持ってるわたしなんて、雅治は捨ててしまうんじゃないかって思ってしまう。だけど、それでも、離れたくなんかない。そんなことを考えていると、いつの間にか右手にぐっと力が入っていた。すると、雅治はわたしのその手に自身の手を重ねた。いきなりのことに驚いて、少し震えてしまった。顔をあげると同時に、耳元で優しいテノールの声が聞こえた。
「そのままで良い」
「ま、さはる」
「その病は俺にしか治せんからの」
雅治は、同じ気持ちになったりしないのかな?わたしみたいに不安になったりとか、やきもち妬いたりだとか。そう思うと悔しくなったけれど、困らせてやりたくなったけれど。その術さえもわたしは知らない。
「どうすれば良いの?」
「ずっと俺の傍にいればいつかは治るき」
わたしには雅治のその言葉で適当に言いくるめられた気がして、少しだけ悲しい気持ちになった。そんなわたしの頬に愛おしそうに手を添えると、雅治はまたわたしに優しい口付けをした。
あとから分かったのは、あの言葉が雅治にとって大きな愛情だったってこと。わたしがそれに気付くのは、まだまだ先のお話。
きっと明日も明後日も
おわりが見えないや
20260402
