汗も滴る王子様たち
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三月になって桜が花を咲かせ始めた。今日という日も、太陽がきらきらと輝いていて、まるでわたし達を祝福してくれているみたいだった。喜ばなきゃいけないのに、こんなにも悲しいのはどうしてだろう。すっかり泣き腫らしたわたしの目を見て、奴は可笑しそうに笑った。一生会えないわけじゃない、なんていうけど、今までの「当たり前」がなくなることが、わたしには耐えられなかった。友達とつまらないことで笑い合って、先生に叱られて、おまけにもうこいつをからかったりすることもできない。わたしたちは卒業したらもう会うこともない、そんな関係だから。
二人並んで体育館の壁にもたれて、何を話すこともなく黙り込んでいた。こいつは相変わらずわたしの鳴咽を聞きながら笑っているけど。何がそんなに楽しいんだか。奴にわたしを慰める気持ちは微塵もないらしい。
「そんな悲しいん?」
「あたり、まえだよ」
「ふーん」
涙でぐちゃぐちゃな顔を見られたくなくて、体育座りをして膝に顔を埋めたまんま。ふーん、って。どうやらこれが財前が自分の三年間を締め括る言葉らしい。わたしと過ごした時間も否定されてる気がして、余計に涙が止まらない。わたしはもう友達のままは嫌だよ。中学が終わったって、財前に会いたい。高校生になった財前を、近くで見ていたい。そう思うことは贅沢なことなんだろうか。
「何年か経ったらお前のことも懐かしく思うんやろなあ」
ふと財前が発した言葉にちく、と心に痛みが走る。わたし達の今後が決定的になってしまった気がして、焦りを隠せない。しばらくの沈黙のせいで、体育館の中からまだ騒いでいる生徒の声が聞こえた。ほら、きっとあの子たちだって別れを惜しんでる。また会おうね、って、約束してるんだよ。
「ひ、どい、財前…」
「なんでやねん」
「かっ、てに、わたしのこと、思い出にしないでよ…!」
財前に懐かしく思われたって、わたしはきっと、一日も財前のことを忘れるなんて出来ないだろう。それが片思いの悲しいところだと何度も実感した。なにも言葉がかえってこないから、もうどうにでもなれと半ばやけくそ気味に言葉を続ける。
「わ、たしは、卒業したって財前と居たい…、好き、だも…」
思っていたよりも溢れ出した気持ちに、必死に口元を手で抑えた。もう終わってしまう。財前を好きでいることすらわたしにとっては許されないことになる。友達でいられないのなら、こんなこと言わなければよかったのに。虚しくも後悔はわたしの中で木霊した。こんな時にも財前はなにも言わない。ただ、ひとつ大きなため息を漏らすと、膝を抱いたままのわたしの肩を抱き寄せた。
「な、にす…」
あ、れ。財前ってこんなにあったかいんだ。そういえば、いつも近くにいたって触れることなんてなかった。それが許される関係ではないから。財前、わたしやっぱり友達なんかじゃなくて、恋人になりたいよ。
「…俺もや」
「っ……」
「あほやろお前」
さっきの言葉が厭味ってことくらい気付けや、財前はわたしを抱きしめたまま耳元で呟いた。今までよりもずっと近い体温に、わたしはそっと目を閉じた。
世界の小さな場所でわたしたちは恋を始める
二人並んで体育館の壁にもたれて、何を話すこともなく黙り込んでいた。こいつは相変わらずわたしの鳴咽を聞きながら笑っているけど。何がそんなに楽しいんだか。奴にわたしを慰める気持ちは微塵もないらしい。
「そんな悲しいん?」
「あたり、まえだよ」
「ふーん」
涙でぐちゃぐちゃな顔を見られたくなくて、体育座りをして膝に顔を埋めたまんま。ふーん、って。どうやらこれが財前が自分の三年間を締め括る言葉らしい。わたしと過ごした時間も否定されてる気がして、余計に涙が止まらない。わたしはもう友達のままは嫌だよ。中学が終わったって、財前に会いたい。高校生になった財前を、近くで見ていたい。そう思うことは贅沢なことなんだろうか。
「何年か経ったらお前のことも懐かしく思うんやろなあ」
ふと財前が発した言葉にちく、と心に痛みが走る。わたし達の今後が決定的になってしまった気がして、焦りを隠せない。しばらくの沈黙のせいで、体育館の中からまだ騒いでいる生徒の声が聞こえた。ほら、きっとあの子たちだって別れを惜しんでる。また会おうね、って、約束してるんだよ。
「ひ、どい、財前…」
「なんでやねん」
「かっ、てに、わたしのこと、思い出にしないでよ…!」
財前に懐かしく思われたって、わたしはきっと、一日も財前のことを忘れるなんて出来ないだろう。それが片思いの悲しいところだと何度も実感した。なにも言葉がかえってこないから、もうどうにでもなれと半ばやけくそ気味に言葉を続ける。
「わ、たしは、卒業したって財前と居たい…、好き、だも…」
思っていたよりも溢れ出した気持ちに、必死に口元を手で抑えた。もう終わってしまう。財前を好きでいることすらわたしにとっては許されないことになる。友達でいられないのなら、こんなこと言わなければよかったのに。虚しくも後悔はわたしの中で木霊した。こんな時にも財前はなにも言わない。ただ、ひとつ大きなため息を漏らすと、膝を抱いたままのわたしの肩を抱き寄せた。
「な、にす…」
あ、れ。財前ってこんなにあったかいんだ。そういえば、いつも近くにいたって触れることなんてなかった。それが許される関係ではないから。財前、わたしやっぱり友達なんかじゃなくて、恋人になりたいよ。
「…俺もや」
「っ……」
「あほやろお前」
さっきの言葉が厭味ってことくらい気付けや、財前はわたしを抱きしめたまま耳元で呟いた。今までよりもずっと近い体温に、わたしはそっと目を閉じた。
世界の小さな場所でわたしたちは恋を始める
