汗も滴る王子様たち
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いつだって右隣は春みたいに暖かくて、ぽかぽかしていた。当たり前のように隣にいて、だけどわたしが一年早く生まれたってだけで、そんな当たり前もすぐに失ってしまった。勢いに任せて触れた掌は体温を持っていないかのような冷たさで、よく馬鹿にしてたのを覚えてる。家が近いから卒業したって今までと変わらずに会えるだろうって、甘く見てた。実際は姿を見ることすら稀にしかなくて、偶然会えたって交わす言葉は一言二言だけ。冬は、いつもよりあいつを思い出させる。あいつのいない高校生活なんて、なんの面白みもない。口からぽろりと出てしまいそうな溜息をぐっと堪えて、家へと急いだ。自転車の速度によってさらに冷たい風が頬を掠めて目を細めると、視界の先で見慣れた後ろ姿を捕らえた。何年も見てきたんだもん、間違えるわけない。
「け、いご?」
恐る恐る近付いて顔を覗き込むと、驚いている表情が少し可笑しかった。ランニングをしていたのか、ジャージ姿のまま。やっぱり、いつ見ても似合わないや。
「…お前か」
「何、その反応」
何日振り、かな。偶然だったとしてもこういう風に会えるってことは、嬉しくてたまらなかった。少なくとも、わたしにとっては。景吾はすぐに変わってしまう。あっという間に背も伸びて、男の子の成長期は笑えないほどに、景吾を景吾じゃなくならせてしまった。
「乗せてってあげよっか?」
「いらねえ」
即答すぎ、と笑ったつもりなのに、少し引き攣ったのが自分でもわかった。いらない、って言われたら、もう帰るしかないじゃない。そう思ってペダルに置いていた片方の足に力を加えようとすると、ハンドルに伸ばしていた腕をぐっと掴まれた。
「お前も歩け」
「え、…」
こんなことを言われるなんて想像もしてなかったから、ぽかんと口が開いたまま小さく頷くような情けない反応しかできなかった。あ、笑いやがったなこのやろう。だけど、本当に懐かしい。こうやって一緒に帰るなんて、去年以来だもんな。
「引退したのに鍛えてるんだ」
「当たり前だろうが。引退なんて俺には関係ねえよ」
「だろうね」
態度はずーっと、でかいまま。久しぶりに会ったんだから、少しくらいかわいらしく感動したらどうなのよ。自分だけ喜んでいる状況が面白くなくて、いつの間にか景吾が押していた自転車のハンドルに置かれた景吾の手に、あの日みたいに掌を重ねてみた。ごつごつしてておっきくて、あの日とはまるで違ってて、やっぱり、冷たかった。
「あはは、やっぱ冷たいね」
照れ隠しにふざけがちにそういっても、景吾はなんにも話さなかった。やっと自分の行動に恥ずかしさを覚えて、手を離すと、掌は冷たい空気を捕まえた。
「離すな」
「え?」
「そのままでいいって言ってんだ」
悴んだ手先をそっと
いつも冷たいはずの景吾の手がほんの少しだけ熱くなった瞬間。
┈┈┈┈┈┈┈
title by にやり
「け、いご?」
恐る恐る近付いて顔を覗き込むと、驚いている表情が少し可笑しかった。ランニングをしていたのか、ジャージ姿のまま。やっぱり、いつ見ても似合わないや。
「…お前か」
「何、その反応」
何日振り、かな。偶然だったとしてもこういう風に会えるってことは、嬉しくてたまらなかった。少なくとも、わたしにとっては。景吾はすぐに変わってしまう。あっという間に背も伸びて、男の子の成長期は笑えないほどに、景吾を景吾じゃなくならせてしまった。
「乗せてってあげよっか?」
「いらねえ」
即答すぎ、と笑ったつもりなのに、少し引き攣ったのが自分でもわかった。いらない、って言われたら、もう帰るしかないじゃない。そう思ってペダルに置いていた片方の足に力を加えようとすると、ハンドルに伸ばしていた腕をぐっと掴まれた。
「お前も歩け」
「え、…」
こんなことを言われるなんて想像もしてなかったから、ぽかんと口が開いたまま小さく頷くような情けない反応しかできなかった。あ、笑いやがったなこのやろう。だけど、本当に懐かしい。こうやって一緒に帰るなんて、去年以来だもんな。
「引退したのに鍛えてるんだ」
「当たり前だろうが。引退なんて俺には関係ねえよ」
「だろうね」
態度はずーっと、でかいまま。久しぶりに会ったんだから、少しくらいかわいらしく感動したらどうなのよ。自分だけ喜んでいる状況が面白くなくて、いつの間にか景吾が押していた自転車のハンドルに置かれた景吾の手に、あの日みたいに掌を重ねてみた。ごつごつしてておっきくて、あの日とはまるで違ってて、やっぱり、冷たかった。
「あはは、やっぱ冷たいね」
照れ隠しにふざけがちにそういっても、景吾はなんにも話さなかった。やっと自分の行動に恥ずかしさを覚えて、手を離すと、掌は冷たい空気を捕まえた。
「離すな」
「え?」
「そのままでいいって言ってんだ」
悴んだ手先をそっと
いつも冷たいはずの景吾の手がほんの少しだけ熱くなった瞬間。
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title by にやり
