お菓子大好き丸井くん
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部室でボールを拭くマネージャーの私の耳には、いろんな声が届く。だけどやっぱり集中しなくても勝手に聞こえてきてしまうのはブン太の声で、少しだけ悔しかった。
「いよいよっスね」
「ああ、絶対告るぜぃ」
「プレゼントは何渡すか決めたんスか?」
「あー、まだだ」
クリスマスに近づくにつれて、ブン太の気持ちが高ぶっていってるのを、自分の目で見て確信している。なんでも、クリスマスに好きな子に告白するんだと言って、いろんな人とその話題で盛り上がっていた。周りの部員たちだって、ブン太のことを応援しているのが目に見えてわかった。泥のついたボールを眺めてため息をつくと、ふいにブン太がわたしに目をやった。
「女子的には何貰ったら嬉しいんだよ?」
「…知らない。“俺をプレゼント”とかやってみれば?」
「んなの嫌われるに決まってんだろぃ」
本当、可愛くない女だな、わたし。嫌われちゃえばいいのに、なんて言ったらブン太、怒っちゃうだろうな。そんな考えごと消してしまいたくて、ボールを拭く手の力を強くした。
「クリスマスにテニス部のメンバーで遊ぶんじゃけど、お前さんも来るか?」
「行かない!むさ苦しいし」
「失礼な奴じゃ」
部活が終わったあとには、仁王からの誘いを受けた。むさ苦しい、なんて言って、ブン太がいたら絶対行くに決まってるのに。あーあ、苛々して堪らない。ブン太に、彼女が出来ちゃう。わたしの気持ちを誰かが知るはずもないから、みんなは楽しそうに笑ってる。どうしよう、苦しいよ。クリスマスなんて、来なきゃいいのに。
ついにやってきてしまった最悪な日。商店街にはクリスマスソングばかり流れて、どの店もきれいに飾られていた。友達はみんな彼氏と予定が入っていて、お母さんはお父さんと二人で買い物に出かけた。こんな近場でもカップルばかりで余計に虚しさを募らせた。やっぱり家にいた方がよかったのかな。だけどブン太のことがずっと頭から離れないで、なにかに集中することなんてできなかった。幸村め、なんで都合よくクリスマスに部活休みにしたわけ?部活があったらブン太だって告白だの何だの言ってないで、部活に出て一緒にいられたのに。あるお菓子屋さんの前に置かれたかごの中には、何種類かのお菓子の詰め合わされていて、かわいくラッピングされていた。手にとってみると、どれもブン太の好きそうなものばかり。自分で食べようかな、そんなことを思いながらぼうっとしていると、突然後ろから聞こえた声に、思わず袋をかごの中に戻した。
「こんなとこにいた」
「ブ、ン太」
「何しけた顔してんだよぃ」
ブン太、今日は「すきなやつ」に会うんじゃなかったの?そんなこと思いながらも、少しだけ期待してる自分がいた。
「…もしかして、ふ、振られたの?」
「振られるわけねえだろぃ」
「…そうだよね」
「お前は?サンタさんにプレゼントは貰えたのかよ?」
「っ、…馬鹿じゃないの」
自分が好きな人と上手くいったからって、人のこと子供扱いしすぎだと思う。このまま話しているともっともっと自分のことが嫌いになりそうで、今にも滲み出そうな涙ごと、ブン太に背を向けた。
「んじゃ、俺をプレゼントしてやるよ」
「な、何っ、」
走り出そうかと足に力を入れた途端、身体全体がいきなり温かくなったかと思うと、ブン太に後ろから強い力で抱きしめられていた。何が何だか分からなくて、恥ずかしさから込み上げてくる熱を抑えながらもがいていると、少しだけブン太の腕の力が弱くなった。
「ちょっと、ブン太っ…」
「…やっぱりこれ、嫌われんじゃねえの」
耳元から直接脳に響くブン太の声に、思いきり目をぎゅっと瞑りながらも今の状況を理解しようと、必死に頭を回転させた。ていうかここ、商店街、だよね。さっきからいろんな人と目が合うんですけど。
「俺、お前が好きだ」
「…え、う、嘘だ!」
「嘘なわけねえだろぃ」
今起こってることが全部夢なんじゃないかって考えると怖くなったけど、しっかりと暖かいもん。これはちゃんとしたブン太の体温。とりあえず商店街から抜け出したくて、ブン太の腕からすり抜けて彼を商店街から連れ出した。
「…ブン太」
「何だよ」
「そろそろ手離してくれないかな」
「お前から掴んだんだろぃ」
確かにあの時はただ恥ずかしさから逃れたくて、ブン太の手を掴んで必死に歩き続けた、けど。ブン太ってこんなに、甘えただっけ。
「返事聞くまで離さねえ」
「う、…」
この状況で返事を聞かせろ、ってなんかずるい気がする。見慣れた公園で、ブン太はベンチに座って、指先を優しく握られたまま、その前に立つわたし。ブン太のことが好きじゃないなら、振り払ってでも逃げてるに決まってるのに。
「す」
「す?」
「すきじゃ、ない」
「…ふうん」
「…の反対」
しゅん、と落ち込むブン太を見ると胸がぎゅうっと苦しくなって、指先しか繋がっていなかったブン太の手を両手で覆った。
「手、冷たい」
「ずっとお前のこと探してたからだろぃ」
「ありがとう」
嬉しかったってことを伝えたくて、ブン太の頬に軽く唇を落とした。ぽかんと口を開けているブン太は、いつも自分の事を「天才的」と口にするような自信満々な姿とは180度違った。
「…プレゼント」
「え?」
「結局何買えばいいか分からなくてよ」
「いらないよ、何も」
「あのなぁ、男としては…」
「だってもう、貰ったもん」
ずっとずっと、欲しかったもの。
発展途上の心臓なのです
こんなのまだまだ、序の口なんだから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
title by にやり
2008年クリスマス夢
「いよいよっスね」
「ああ、絶対告るぜぃ」
「プレゼントは何渡すか決めたんスか?」
「あー、まだだ」
クリスマスに近づくにつれて、ブン太の気持ちが高ぶっていってるのを、自分の目で見て確信している。なんでも、クリスマスに好きな子に告白するんだと言って、いろんな人とその話題で盛り上がっていた。周りの部員たちだって、ブン太のことを応援しているのが目に見えてわかった。泥のついたボールを眺めてため息をつくと、ふいにブン太がわたしに目をやった。
「女子的には何貰ったら嬉しいんだよ?」
「…知らない。“俺をプレゼント”とかやってみれば?」
「んなの嫌われるに決まってんだろぃ」
本当、可愛くない女だな、わたし。嫌われちゃえばいいのに、なんて言ったらブン太、怒っちゃうだろうな。そんな考えごと消してしまいたくて、ボールを拭く手の力を強くした。
「クリスマスにテニス部のメンバーで遊ぶんじゃけど、お前さんも来るか?」
「行かない!むさ苦しいし」
「失礼な奴じゃ」
部活が終わったあとには、仁王からの誘いを受けた。むさ苦しい、なんて言って、ブン太がいたら絶対行くに決まってるのに。あーあ、苛々して堪らない。ブン太に、彼女が出来ちゃう。わたしの気持ちを誰かが知るはずもないから、みんなは楽しそうに笑ってる。どうしよう、苦しいよ。クリスマスなんて、来なきゃいいのに。
ついにやってきてしまった最悪な日。商店街にはクリスマスソングばかり流れて、どの店もきれいに飾られていた。友達はみんな彼氏と予定が入っていて、お母さんはお父さんと二人で買い物に出かけた。こんな近場でもカップルばかりで余計に虚しさを募らせた。やっぱり家にいた方がよかったのかな。だけどブン太のことがずっと頭から離れないで、なにかに集中することなんてできなかった。幸村め、なんで都合よくクリスマスに部活休みにしたわけ?部活があったらブン太だって告白だの何だの言ってないで、部活に出て一緒にいられたのに。あるお菓子屋さんの前に置かれたかごの中には、何種類かのお菓子の詰め合わされていて、かわいくラッピングされていた。手にとってみると、どれもブン太の好きそうなものばかり。自分で食べようかな、そんなことを思いながらぼうっとしていると、突然後ろから聞こえた声に、思わず袋をかごの中に戻した。
「こんなとこにいた」
「ブ、ン太」
「何しけた顔してんだよぃ」
ブン太、今日は「すきなやつ」に会うんじゃなかったの?そんなこと思いながらも、少しだけ期待してる自分がいた。
「…もしかして、ふ、振られたの?」
「振られるわけねえだろぃ」
「…そうだよね」
「お前は?サンタさんにプレゼントは貰えたのかよ?」
「っ、…馬鹿じゃないの」
自分が好きな人と上手くいったからって、人のこと子供扱いしすぎだと思う。このまま話しているともっともっと自分のことが嫌いになりそうで、今にも滲み出そうな涙ごと、ブン太に背を向けた。
「んじゃ、俺をプレゼントしてやるよ」
「な、何っ、」
走り出そうかと足に力を入れた途端、身体全体がいきなり温かくなったかと思うと、ブン太に後ろから強い力で抱きしめられていた。何が何だか分からなくて、恥ずかしさから込み上げてくる熱を抑えながらもがいていると、少しだけブン太の腕の力が弱くなった。
「ちょっと、ブン太っ…」
「…やっぱりこれ、嫌われんじゃねえの」
耳元から直接脳に響くブン太の声に、思いきり目をぎゅっと瞑りながらも今の状況を理解しようと、必死に頭を回転させた。ていうかここ、商店街、だよね。さっきからいろんな人と目が合うんですけど。
「俺、お前が好きだ」
「…え、う、嘘だ!」
「嘘なわけねえだろぃ」
今起こってることが全部夢なんじゃないかって考えると怖くなったけど、しっかりと暖かいもん。これはちゃんとしたブン太の体温。とりあえず商店街から抜け出したくて、ブン太の腕からすり抜けて彼を商店街から連れ出した。
「…ブン太」
「何だよ」
「そろそろ手離してくれないかな」
「お前から掴んだんだろぃ」
確かにあの時はただ恥ずかしさから逃れたくて、ブン太の手を掴んで必死に歩き続けた、けど。ブン太ってこんなに、甘えただっけ。
「返事聞くまで離さねえ」
「う、…」
この状況で返事を聞かせろ、ってなんかずるい気がする。見慣れた公園で、ブン太はベンチに座って、指先を優しく握られたまま、その前に立つわたし。ブン太のことが好きじゃないなら、振り払ってでも逃げてるに決まってるのに。
「す」
「す?」
「すきじゃ、ない」
「…ふうん」
「…の反対」
しゅん、と落ち込むブン太を見ると胸がぎゅうっと苦しくなって、指先しか繋がっていなかったブン太の手を両手で覆った。
「手、冷たい」
「ずっとお前のこと探してたからだろぃ」
「ありがとう」
嬉しかったってことを伝えたくて、ブン太の頬に軽く唇を落とした。ぽかんと口を開けているブン太は、いつも自分の事を「天才的」と口にするような自信満々な姿とは180度違った。
「…プレゼント」
「え?」
「結局何買えばいいか分からなくてよ」
「いらないよ、何も」
「あのなぁ、男としては…」
「だってもう、貰ったもん」
ずっとずっと、欲しかったもの。
発展途上の心臓なのです
こんなのまだまだ、序の口なんだから。
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title by にやり
2008年クリスマス夢
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