「ただいま…」

そっとリビングを覗く。
真正面に位置する一人掛けのソファにその人はいた。

「…怪我したのか」

まだ何も言っていないどころか、リビングにも入っていない。その位置からは絶対に見えないはず。だがリゾットは怪我にいち早く気付く。鉄分の匂いでも嗅ぎとれるのだろうか。怖い。

「あー…うん。優しく繋げてほしくて。今回はセルフじゃ無理そうで…」

リゾットのもとへ歩きつつ、あえて優しく、と言ってみる。リゾットはほんの僅かに眉を寄せた。

「痛みは軽減できない」

「…ですよね」

リゾットのメタリカは体内の鉄分から金属を生み出す。繋げてもらうとすると、金属が一度皮膚を突き破る。怪我を治すために怪我をするようなものだ。痛くないわけがない。

「大きく生成して数を減らすか、数は増えるが小さく生成するか」

選べ、と言わんばかりに目をじっと見てくる。そんなこと言われてもどちらも嫌に決まっている。選べずに黙り込んでいるとリゾットが口を開く。

「どちらにせよ一度で全て生成するから痛みは変わらない…」

ではなぜ選ばせたのだろうか。
どちらも想像してしまったじゃないか。

「…じゃあ小さく、お願いします」

「ああ」

繋げてもらうためにソファに座ろうとする。
しかし座る前に痛みが走った。

「ッ痛！」

見ると既に金属が傷をふさいでいた。

「……するならするって、言ってよ」

「すまない。だが不意の方が怖くないだろう」

「そっか……そうだね、ありがとう」

リゾットの言葉に思わず顔が綻んでしまう。なら最初から大きさや数を聞かずに繋げてほしい。と思ったがそれもリゾットなりの気遣いなのだろう。しかし痛いものは痛い。次、新しい人が入るなら痛みのないヒーリング系のスタンドでありますようにと願った。