ここにいるかな、といつものトラットリアに顔を出す。
しかしミスタとジョルノしかいない。

「…ブチャラティは？」

「まだですね…もう帰ってきてもおかしくないんですが」

「まーたどっかで世話焼いてんだろ」

居ないのなら仕方ない。いったんセルフで処置して、帰ってきたらジッパーしてもらおう。そう思い、処置のためにアジトへ行こうと踵を返した。

「…ん？オメー怪我してんじゃあねえか？」

「ああ、本当ですね。名無し、見せてください」

…最悪だ。見つかってしまった。
目ざとく見つけやがったミスタを恨みつつ笑顔で振り返る。

「ちょっとね。でも大丈夫、大したことないよ。セルフケアで済むから」

「大した怪我かどうかはぼくが決めます。とりあえず見せてください」

一応断ってみるが無駄な抵抗でしかない。そりゃあそうだ。ジョルノが引くわけない。ミスタがニヤニヤしながら頬杖をつく。

「治してもらえって。ジョルノなら跡も残らねーぜ？」

こいつッ…！わかっていながら仲間を売るのか…！ジョルノのゴールド・エクスペリエンスは綺麗に治るがなかなか痛い。ミスタはあの痛みを味わったというのによく人に勧められるものだ。

「名無し。雑菌が入る前に治療しましょう」

ジョルノの善意は本物だ。無下にもできない。それに彼は意外としぶとい。結局治療してもらうことになるだろう。渋々ジョルノに近寄り、怪我を見せた。

「…どこが大した怪我じゃあないんです？」

「ま、まあ、意外と痛みはなかったからさ」

ジョルノは呆れたように息をついて、怪我の前に手をかざす。

「っあ、ちょっと待っｔッ！！い”っ…た」

ジョルノの治療が嫌な理由は痛みだけではない。彼は容赦ないのだ。心の準備もさせてくれない。

「綺麗になったじゃあねーか。よかったな」

「怪我は早めに見せてください。いいですね」

「うん…ありがとう」

怪我してもジョルノとミスタには見つからないようにしようと心に決めた。