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ギャングに休日があるのかと言われると曖昧だが、それは任務のない日だった。街を歩いていると見覚えのある原色が視界に入る。自然とそちらへ目を向けると、ばっちり彼と目が合った。
「あーまいった…こりゃ大変だなァ~~…どーしよーかなァーーー?」
目が合ったまま、こちらにまで聞こえる大きな声で彼は言う。あからさまな困った態度にほいほい捕まっていいのか少し考えたが、同じ組織の人間だ。知らない仲でもないし、いっかと彼の傍まで寄った。
「どうしたんですかミスタさん」
「お~名無しじゃねえか~!ちょうどいいぜ」
確実に私に気付いていたはずの彼は、今気づいたかのような素振りで肩を組んでくる。
「ブチャラティに連絡取りてーんだがよォ…携帯忘れちまって。ちょーっと貸してくれねえ?」
なんだ、そんなことか。もっと承諾を渋るような内容かと思っていた私は安心し、もちろんですと携帯を差し出す。それを手にした彼は慣れた手つきで操作し、耳に当てた。
「よォーブチャラティ!これ、名無しの番号な。後でオレにも教えろよ~?」
「っ!?ちょ、ミスタッん」
楽しむようにそう言う彼に口を出そうとしたが、肩に回る手で口を塞がれてしまう。しかし用があったのは本当らしく、そのまま話を続けるので邪魔しないように素直に従った。暫くして通話を終えた彼が携帯を私に返し、口を塞ぐ手を離してニッと笑う。肩に乗ったままの腕がちょっと重い。
「これならチームが違ってもいつでもオレと話せるな」
「普通に聞いてくれても教えますよ…」
「まあまあ、連絡しなきゃあなんねえのは本当だったしよ」
急なことに驚いただけで、番号を教えること自体は構わないのに。宥めるような口調で返す彼に、回りくどいなあとため息をついた。私も用があるのでもう行きますよ、と肩に乗る腕を解いたその時、視界の端に何かが映った。
「何だよミスタァ~…チームが違っても、ってヨォ~…」
「名無しが断ってもいーってのかヨー!」
何の前触れもなく、ふよふよと周りに浮かびだした小さな何か。目を丸くして見ていると、複数のそれはそれぞれ喋り出す。
「あッ!おいピストルズ!!出てくるんじゃあねえ!」
「うえ~ん名無しがチームに来ないよォ~~…」
「泣くなNo.5!まだ来ないと決まったわけじゃあねえだろ!」
「名無し~~オレ達のチームに来いヨー!」
「ったく雰囲気ぶち壊しやがってよォー」
その複数の生物(?)と彼がやいやい言い合っているのを呆然と見つめる。彼の発言にぷんすこしている者もいれば、泣いてる者もいて、私に話しかけてる者もいる。…これは彼のスタンドだろうか。姿かたちは同じだが性格は様々なようで、表情も一人一人違う。スタンドってこんなにも感情豊かなのか。
「…賑やかですね」
「賑やか過ぎんのも大変だぜ?」
なんだか可愛くて、私は顔を綻ばせる。そんな私と違い、彼は参ったというように額に手を当てた。
「あーもう、行くぞ!おまえら全員戻れ!…じゃあな名無し、携帯助かったぜ!」
「なァー名無し、チームに来るダロー?」
「うん…考えとくね。…あっほら、ミスタさんもう行っちゃうよ」
先を行くミスタさんの元へ向かいながら、彼らは最後まで小さな身体で大きく手を振る。それに手を振り返しながら、どんな誘いよりも彼らの勧誘が一番効くかもしれない、と思った。