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Ciao.柔らかな挨拶をかけてきた彼は、私が言うのもなんだけどギャングに見えなかった。でもちゃんとブチャラティさんとこのチームだというのだから驚きだ。
「あなた、暗殺したことないんでしょう?」
「!!……どうしてその事を…」
まだ出会って数分、彼はそんなことを言い出した。今、私の最大の悩み…ヒットマンチームに属していながら暗殺の任務を未だ成功させていないこと。どうして彼が知っているのか分からないけど、私が知らないところでチームの交流があるのか。も、もしかして勧誘のこと、リーダーも承知の上だったり…。
「向いてないんですよ」
「う……気にしてるんです…わざわざ痛いところ突かないでください…向いてないなんて私が一番分かってますよ…」
勝手な憶測をしている私をよそにぐさりと刺してきた、彼の言葉に項垂れる。
「あなたはぼくらのチームに来るべきだ…あなたも、こちらの方が合っていると思っているんじゃあないですか?」
彼の言う通りなのは分かっている。フーゴさんに説明してもらった内容は、もちろん簡単な仕事だというわけじゃない。これは精神的な問題だった。人の命を奪うことに比べたら…確かに私には彼らのチームの方が向いているかもしれない。そう理解していても、私は簡単に移動を決めらない。
「確かに、そうかもしれません…でもだからこそ今のチームで頑張りたいというか…せめて、一回くらい成功したい…このままチームを移動すればいいって話じゃないと思うんです…!」
ペッシと私の成長を何も言わず待ってくれているリーダーに、何もできないままチームを去りたくない。それにあの金髪男前にマンモーナと呼ばれっぱなしでたまるか。プロシュートに認めさせたいし、リーダーに褒められたい。成功したくらいでリーダーが褒めるかは分からないが、その時はホルマジオにでも褒めてもらおう。初めて入ったこのチームに、私は少なからず思い入れがあった。
いろいろ悩んだ結果、私はやっぱり移動しないことに決めていた。威勢よく自分の熱意を伝えると、何か考えるような彼の目がじっと私を見つめる。
「…そういう所です。あなたの諦めないその姿勢にぼくらは惹かれたんだ」
真剣なまなざしで独り言のように呟くと、彼はにっこり笑って今度はハッキリこう言った。
「ますますあなたが欲しくなりました」
あれ、なんだか思っていたのと違う反応だ。「そうですか…それじゃあ仕方ないですね」じゃないの…?自分では断ったつもりだったが、もしかして遠まわしで伝わってないのかもしれないと、改めて移動しない旨を伝える。すると彼は分かっていますと頷いた。
「その上であなたが欲しいと言っているんです…あいにくぼくは諦めが悪い。どちらが先に折れるか根気比べですね。…ああでも、今日はここまでかな」
時計を一瞥し、それじゃあまたと私の前から去っていく。いろいろ悩んで考えて答えを出したはずが、なぜか振出しに戻った。なんなら火に油を注いでしまったような気がする。私は呼び止めることも出来ないまま、今はただ去っていく後姿を呆然と見ていた。
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