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足が重い…。私はある人物に会うためネアポリスを一人、歩いていた。
そういえば彼は最近、幹部に昇格したと聞いた。しかし私が属するヒットマンチームに関わる幹部ではない。リーダーであるリゾットを通さずに直接呼び出されるなんて、私は一体何をしたのだろう。全く身に覚えがないからこそ怖い。
彼は街の人たちから慕われる、優しい人物という認識だが、仕事に対してはどうか分からない。めちゃめちゃ厳しかったらどうしよう…。もう少しで訪れる未来を想像して身震いする。
やがて指定された店に到着し、その姿を奥の席に見つけた私は早足で向かい、彼の前に立つ。そして「すみませんでしたッ!!」と頭を下げた。こういうのは初めが肝心だ。潔く自分の非を認めて早め早めに謝罪した方が後に響かない。非が何か、というのが重要ではあるが。
「えっと…その…正直!身に覚えはないんですけどッ私、何かしたんですよね!?ご迷惑をおか、け…」
頭を上げてようやく見た彼の表情は思っていたものと違った。微笑んだまま目を点にして首を僅かに傾げている。いつも眉間に皺を寄せて険しい顔をしているうちのチームとは違う、柔らかな表情だ。人を咎める表情なんて欠片もない。
「…なにか、あったか…?」
「あ、あれ…?今日、私が呼ばれたのって…」
「ああ、チームの移動について君と直接話したくてな」
「…そうでしたか…てっきり何かしでかしたのかと…」
なんと恥ずかしい…勝手に思い違いをして、店中に聞こえそうな大声で謝罪してしまった。掛けてくれ、と優しく勧められた席に赤らむ顔を隠すように少し俯きながら座る。
テーブルの上にはいくつか料理がすでに並べられており、また一つ店員が料理を運んできた。幹部に呼び出されるとあって今朝は食事が喉を通らなかった。そのせいもあり、匂いに触発されてお腹が鳴る。
「昼はまだだろう?好きなのを食べてくれ」
「いえいえ…!そんな、いただくわけにはいきません。お構いなく!」
彼は腹の音にも顔色一つ変えず、目の前の料理をすすめてくれる。お腹は空いているし、料理もすごく美味しそうだ。しかし無遠慮にもらうわけにもいかない。
「いや、どうせオレ一人では食べきれない。…それとも何か苦手なものがあるか?」
「いえ!全部大好物です!」
「そうか。それは良かった」
にっこりと笑う彼に、しまったと思った。勢いで素直に答えてしまった。すこし迷った後、ここまできて食い下がるのも失礼だよな、と心の中で言い訳をして言葉に甘えてカラトリーを手に取り、視線を感じつつ料理を口にする。うん、美味しい。
「あ…そういえば何の話でしたっけ」
いくらか食べ進めたところで、食事をしに来たんじゃなかったと彼を見ると、彼は頬杖をついて黙って私を見ていた。一瞬目が合った後、私の顔を見てふっと笑うと「オレたちのチームに来てくれないか」と言いながら片手を伸ばして、私の頬をそっと拭った。どうやら頬にソースがついていたらしい。…なんとスマートな。さりげない行動に感心していると、彼の携帯が鳴った。
「すまない…急ぎの用が出来てしまった」
電話を終えて戻ってきた彼は、申し訳なさそうに眉を下げた。そして、また日を改めると言って店を足早に出て行く。幹部って大変だな…なりたくはないな。なんて縁のない事を考えながらその背を見送る。
その後、一人で食事を終えた私が支払いをと店員を呼ぶと「ブチャラティさんから頂いてます」と断られた。ごちそうになって礼もちゃんと言えずに申し訳ないなと思いつつ、美味しいご飯をお腹いっぱい食べられた私は彼の勧誘も忘れ、ほくほく顔で帰宅した。
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