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名無しがヒットマンチームへ移動となって初日、アジトの中を軽く案内したのはチームリーダーであるリゾットだ。一通り見て回ったのち、まだ落ち着かないソファで、名無しは周りの様子をうかがっていた。そしてふと、居合わせたチームの人が手洗い場を立ち替わる場面を目にしたその時、あることに気が付く。
「…あ」
その声にその場にいた誰もが彼女へ視線を差す。一斉に集まった視線にヒヤリとしながらも、これは重要なことだ、と唾をのんで気付いたことを口にした。
「あの…鍵がない、ですよね…?」
静まるリビングに、何のことだという空気を感じた名無しが慌てて「トイレとかッ、シャワー室とか!」と付け足す。このアジト、玄関口や窓などの外界へ繋がるところには鍵はついているのだが室内へ入れば最後、なぜか鍵のある部屋はない。
「あー…そーいやねぇよなァ~~…野郎ばっかで気にしたことなかったぜ」
ホルマジオが同意する。彼の口ぶりによると、仕事上や構造上など何かしら理由があるわけではなく、どうやら初めから鍵はなかったようだ。
「…いい機会だ。リゾット、つけてやれよ」
今更要らねえよ、なんて言いだされてしまったらと名無しは考えたが、杞憂だったようだ。彼女がお願いするまでもなく、プロシュートが提案する。リゾットはそれに対して特に考えるでもなく頷いた。
「そうだな…取り付けておく」
それから数日後には鍵は取り付けられ、名無しは快適なアジトライフを送る――はずだった。
「わあぁッ!ごめん!!!」
「あんたにそんな趣味があったとは思わなかったぜ」
「違うから!鍵をかけてください!!」
お手洗いを開ければ、これから用を足すのであろうメローネがパンツに手をかけているところに遭遇し
「よォー名無し。一緒に浴びるか?」
「ちょっ…!入ってるんなら鍵をかけてください…!」
シャワーを浴びようとすれば、ホルマジオが服を脱ぎかけているところに遭遇し
「あ“ぁ~…疲れた……ぅぎゃあ!!」
「…うるせーな…静かに寝れねえのか」
「使ってるなら鍵を…!」
任務で疲労しきり、仮眠室のベッドに倒れ込めば先に寝ていたプロシュートの上にダイレクトに乗ってしまった。
イルーゾォに至ってはそもそも鏡で移動してくる。そのくせ鉢合わせると「な“ッ…!入ってるんなら言えよ!!」と理不尽な事を言うもんだから、名無しはたまったものじゃない。ペッシ、リゾット、ギアッチョの三人は疲労がピークを越えていると忘れることもあるが、基本的にちゃんと鍵をかけてくれる。
「リーダー…ッ!鍵をかけるよう、言ってください…!」
「鍵がなくて長かったからな…まあ、あいつらもじきに慣れるだろう」
名無しは暫く過ごして分かったことがある。リゾットは仲間に甘い。任務や報酬など仕事に関することには厳しいが、それ以外は本当に甘い。結果、鍵についてはあまり取り締まってくれず、じきに慣れるという言葉を信じて待つしかなかった。
しかし珍しく酔ったギアッチョによりドアごと破壊され、取り付けから1か月も経たずにシャワールームの鍵はお陀仏となった。
後日、ギアッチョが自費で鍵付きのドアを取り付けました。
チャンチャン。
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