屋敷をあとにし、その足でアジトへ戻る。
リビングにはリゾットとプロシュートがいた。

「女は子供だ」

ソファへ座り、開口一番そう告げる。
2人から何言ってんだ、という視線を感じる。

「冗談言ってるわけじゃあねーぜ？オレの頭がイッちまってなきゃあなァ…」

少女は確かに出たことないと言っていた。ホルマジオは屋敷の内部のことを聞いたのだ。つまり出たことがない、というのは屋敷からではなくあの部屋から、ということだろう。

「テメー本気で言ってんのか？」

怪訝な顔でプロシュートが問う。

「ああ、ベッドに繋がれた足枷だってあった…ありゃ相当熱心だぜ」

「ちゃんと探したのかよ？」

「オレの目が節穴に見えてんならそれはプロシュート、おめーの目が節穴っつーことだぜ」

「…隠し部屋は」

「おいおいリゾット！おめーまで疑ってんのかァ？自分でも探したがそんなもんねーよ」

ホルマジオはギャングとして、そして暗殺者として未熟なわけでない。少女が嘘をついているようには見えなかった。だがその言葉をすべて鵜呑みにすることはなく、少女と別れた後も細かく探索をしていた。

「女の部屋も一番奥にあったんだ。大事なもんっつーのはよォ～、大抵の奴は奥にしまう…オレだってそうする。それによォ…大事なもんは人によって違ぇだろ？おめーにとって大事なもんがオレにとっても大事なわけじゃあねえ」

そこまでいうとようやく2人は納得したように身体の力を抜いた。


「…男はペドか？」

「さぁなァ…メローネが言うにはサド野郎なんだろ。そういうやつらはふたつみっつヤベー趣味を持ってるもんだ…ペドでもありえねえ話じゃあねえ」

その後、偵察結果を報告したホルマジオは欠伸を噛み殺しながらアジトを出ていくのだった。




ホルマジオの偵察から数日後。ヒットマンチームのアジトにはメローネ、プロシュート、ペッシがいた。

そこへ任務終わりのギアッチョが荒々しくドアを蹴り開ける。リビングを見渡し、口を開く。

「…リゾットはどこだよ」

「女のところだ」

パソコンから目を上げずにメローネが答える。

「女だァ～～～？」

瞳孔を見開き始めたギアッチョに慌ててペッシが言葉を付け足した。

「に、任務だよ…兄貴とオレも待ってるんだ…」

ギアッチョはそれを聞き舌打ちすると、ソファに身を沈めた。

「おいメローネ…リゾットはいつ出たんだよ…」

「一時間くらい前だな。そう遅くないんじゃあないか。オレが行くって言ったんだがな…」

「てめーが行くと女を殺しちまうだろうがメローネ…。それに女はまだ子供だぜ」

プロシュートの言葉にメローネの意識はパソコンから外れる。

「子供…？東洋人のか？」

「ああ。ホルマジオが言うにはなァ」

「なんでガキを殺す必要があんだァ…？」

ギアッチョの疑問はもっともで、子供の暗殺など一度も受けたことはない。

「殺すのは飼い主の方だ。ジャンニ・ウルバーノ、郊外にマンションがあんだろ」

「あの邸宅か…何であれは横になげぇんだァ～～？縦なら分かる…エレベーターがありゃ簡単に移動できるからなあ…だがあれは横だッ！横じゃあ移動に時間がかかるじゃあねぇかッ！設計したヤツはイカれてんのかッ！！そもそもなんでエレベーターは上下にしか動けねぇんだよッ！左右にも動かせクソがッ！！」

キレ散らかしながらソファのひじ掛けに拳を叩きつけるギアッチョ。見慣れた光景に反応を示す者はおらず、そのまま4人はリゾットの帰りを待つのだった。