少女椿
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「オレの仲間はどうやら正直者らしいぜ…」
目の前に広がる大きな建物はプロシュートの言う通り、早い帰宅を許してはくれなさそうだった。高さはそこまでないものの、横へ延びる外壁はこの土地一帯を占めていた。
大まかで構わないとリゾットは言っていたが能力で縮むとなれば――人には通れない場所を通れるとしても――通常より倍の時間がかかる。しかし内部の人間に見つかるわけにはいかないため、ホルマジオは能力でその身を縮めた。リゾットが能力で偵察に来た方がはえーじゃねえか…。ため息をつきながら窓の隙間から身を滑り込ませた。
屋敷の中は外から見た通りの広さだった。だがその広さに見合わず、使用人は数人程度しかいない。能力を使わずとも偵察できそうなほどに隙がある。もっとも、ばれてしまっては後が面倒なので解除することはないのだが。
アパートメントかというほどに並ぶ部屋は、綺麗に維持されてはいるもののそのほとんどが使われていなかった。
「…おっといけねェー…忘れちまうところだったな」
実行経路や構造、大体の人数を把握すると念押しされていた女探しにかかる。どうやらこの屋敷の持ち主は留守のようだった。それなら動きやすい。鉢合わせてしまっても殺してしまえば問題ないのだが、やはり後が面倒である。
部屋を一つ一つ見て回る。
結局すみずみまで探索する羽目になってしまった。
「…あー…妖精。フェアリーだ。お伽話で聞かされただろ?」
小さなホルマジオを見て固まっている少女に話しかける。ふと入った部屋に少女がいるなんて思いもしておらず、しっかり目が合ってしまった。…少女で助かった。子供ならいくらか無茶でも誤魔化しがきく。
「…妖精…」
「そうだ。飛んだり魔法を使ったりするよォ、あの妖精だ。この国にはたくさんいるんだがな…。見たのは初めてか?そいつは幸運だぜ。大人になると見えなくなっちまうんだ妖精ってのはなァ…」
この発言をほかの奴が聞いていたら心底馬鹿にされてしまう。誰もいないことにほっとしつつ、やっぱりリゾットが良かったじゃねえかと思う。
「あなたは飛ばないの?」
「羽がねェからなァ…。妖精つってもタイプは様々だ」
「…魔法は?」
「そうだな…おまえをオレくらいに小さくできるぜ。ちょっとピリっとするけどよォ…」
ホルマジオは得意げに笑う。
息をのんだ少女が魔法をかけて、とお願いした。
「おい…ピリっとするっつったじゃあねーか。それに十分小せえ。もっとデカくなったらかけてやるよ…」
それしても。リゾットの言う女はどこにいるのだろうか。ホルマジオは困っていた。少女と悠長にお喋りしているわけにはいかない。部屋はここが最後で、あとはすべて探索済みだ。隠し部屋などが無ければ女はいない。メローネが女は東洋人だと言っていたが…。
まさかな、と思いながら少女に尋ねる。
「嬢ちゃんよォ~…ここで東洋の女はみたことあるか?東洋ってのはアジアだ…。ヨーロッパでもアメリカでもねェ…分かるか?」
少女は何も言わずじっとホルマジオを見つめている。
「見たところ嬢ちゃんは東洋人だ…。自分に似た女を教えてもらいてぇんだ」
そこでようやく目線を外した少女は俯き、ふるふると首を横に振った。
「そーか…じゃあこのウチに隠し部屋はあるか?屋根裏とか地下室とかよォ…暗くてホコリっぽい陰気くせェ部屋だ」
少女はもう一度首を振る。
「…わからない。出たことない、から」
ホルマジオはその言葉に眉を寄せた。そしてベッドの足に妙なものが延びていることに気付く。ベッドの上で座っている少女。その膝に掛かるブランケットを勢いよく捲り上げる。細い鎖の先には枷が繋がり、ベッドの上に転がっていた。少女の足についてこそいないものの、明らかに異様なそれ。
点と点が線になりひとり納得したホルマジオはまたな、と少女に別れを告げた。
目の前に広がる大きな建物はプロシュートの言う通り、早い帰宅を許してはくれなさそうだった。高さはそこまでないものの、横へ延びる外壁はこの土地一帯を占めていた。
大まかで構わないとリゾットは言っていたが能力で縮むとなれば――人には通れない場所を通れるとしても――通常より倍の時間がかかる。しかし内部の人間に見つかるわけにはいかないため、ホルマジオは能力でその身を縮めた。リゾットが能力で偵察に来た方がはえーじゃねえか…。ため息をつきながら窓の隙間から身を滑り込ませた。
屋敷の中は外から見た通りの広さだった。だがその広さに見合わず、使用人は数人程度しかいない。能力を使わずとも偵察できそうなほどに隙がある。もっとも、ばれてしまっては後が面倒なので解除することはないのだが。
アパートメントかというほどに並ぶ部屋は、綺麗に維持されてはいるもののそのほとんどが使われていなかった。
「…おっといけねェー…忘れちまうところだったな」
実行経路や構造、大体の人数を把握すると念押しされていた女探しにかかる。どうやらこの屋敷の持ち主は留守のようだった。それなら動きやすい。鉢合わせてしまっても殺してしまえば問題ないのだが、やはり後が面倒である。
部屋を一つ一つ見て回る。
結局すみずみまで探索する羽目になってしまった。
「…あー…妖精。フェアリーだ。お伽話で聞かされただろ?」
小さなホルマジオを見て固まっている少女に話しかける。ふと入った部屋に少女がいるなんて思いもしておらず、しっかり目が合ってしまった。…少女で助かった。子供ならいくらか無茶でも誤魔化しがきく。
「…妖精…」
「そうだ。飛んだり魔法を使ったりするよォ、あの妖精だ。この国にはたくさんいるんだがな…。見たのは初めてか?そいつは幸運だぜ。大人になると見えなくなっちまうんだ妖精ってのはなァ…」
この発言をほかの奴が聞いていたら心底馬鹿にされてしまう。誰もいないことにほっとしつつ、やっぱりリゾットが良かったじゃねえかと思う。
「あなたは飛ばないの?」
「羽がねェからなァ…。妖精つってもタイプは様々だ」
「…魔法は?」
「そうだな…おまえをオレくらいに小さくできるぜ。ちょっとピリっとするけどよォ…」
ホルマジオは得意げに笑う。
息をのんだ少女が魔法をかけて、とお願いした。
「おい…ピリっとするっつったじゃあねーか。それに十分小せえ。もっとデカくなったらかけてやるよ…」
それしても。リゾットの言う女はどこにいるのだろうか。ホルマジオは困っていた。少女と悠長にお喋りしているわけにはいかない。部屋はここが最後で、あとはすべて探索済みだ。隠し部屋などが無ければ女はいない。メローネが女は東洋人だと言っていたが…。
まさかな、と思いながら少女に尋ねる。
「嬢ちゃんよォ~…ここで東洋の女はみたことあるか?東洋ってのはアジアだ…。ヨーロッパでもアメリカでもねェ…分かるか?」
少女は何も言わずじっとホルマジオを見つめている。
「見たところ嬢ちゃんは東洋人だ…。自分に似た女を教えてもらいてぇんだ」
そこでようやく目線を外した少女は俯き、ふるふると首を横に振った。
「そーか…じゃあこのウチに隠し部屋はあるか?屋根裏とか地下室とかよォ…暗くてホコリっぽい陰気くせェ部屋だ」
少女はもう一度首を振る。
「…わからない。出たことない、から」
ホルマジオはその言葉に眉を寄せた。そしてベッドの足に妙なものが延びていることに気付く。ベッドの上で座っている少女。その膝に掛かるブランケットを勢いよく捲り上げる。細い鎖の先には枷が繋がり、ベッドの上に転がっていた。少女の足についてこそいないものの、明らかに異様なそれ。
点と点が線になりひとり納得したホルマジオはまたな、と少女に別れを告げた。