少女椿
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カタンッ
小さな音を立てて置かれるトレイ。漂う香りに思わず目を開けそうになる。気持ちを抑え、音に神経を集中させる。ほんの少しの間の後、静かな足音がドアへと向かう。その時やっと薄く目を開け後姿を盗み見た。今日は穴あきスーツの人だ。
ドアが閉まり、姿が完全に見えなくなったところでようやくベッドから降りた。教室の勉強机ほどの小さなテーブルについて、トレイを前に手を合わせる。いただきます、と小さく呟いた。ゆっくりとスプーンを口へ運びながら、整理しようとこれまでのことを思い出す。
この部屋には一日二回食事が運ばれてくる。時間はバラバラだが一回目は必ず午前中のうちだ。今日来た穴あきスーツの人、矢印帽の人、長身の人、オレンジのバンダナの人、白いスーツの人。規則性はないが一回目を5人以外の誰かが食事を運んできたことはない。この5人がその役目だと思っていいだろう。
彼らとは一言も言葉を交わしたことがなかった。(矢印帽の人だけはたまにbonjoruno!やciao!と呼びかけてきたが。)
初めの頃、少し眉をひそめた何か言いたそうな顔と目が合うことがあった。すぐに目線を下に落とし何を言われるのかと待ったが、彼らは結局何も言うことなく去っていく。その時間がどうも苦手でいつからか寝たふりをして、去るのをじっと待つようになった。
食事を終えると、この部屋唯一のドアへ目をやる。
どうしたら出られるのだろうか。
ドアに鍵はついていない。身体に枷があるわけでもない。
いやむしろそっちの方が良かったかもしれない。
それよりも厄介なものがこの部屋にはいた。黒いマントに身を包んだ人型のソレは、部屋の中の影から影へと移動していた。
小さな音を立てて置かれるトレイ。漂う香りに思わず目を開けそうになる。気持ちを抑え、音に神経を集中させる。ほんの少しの間の後、静かな足音がドアへと向かう。その時やっと薄く目を開け後姿を盗み見た。今日は穴あきスーツの人だ。
ドアが閉まり、姿が完全に見えなくなったところでようやくベッドから降りた。教室の勉強机ほどの小さなテーブルについて、トレイを前に手を合わせる。いただきます、と小さく呟いた。ゆっくりとスプーンを口へ運びながら、整理しようとこれまでのことを思い出す。
この部屋には一日二回食事が運ばれてくる。時間はバラバラだが一回目は必ず午前中のうちだ。今日来た穴あきスーツの人、矢印帽の人、長身の人、オレンジのバンダナの人、白いスーツの人。規則性はないが一回目を5人以外の誰かが食事を運んできたことはない。この5人がその役目だと思っていいだろう。
彼らとは一言も言葉を交わしたことがなかった。(矢印帽の人だけはたまにbonjoruno!やciao!と呼びかけてきたが。)
初めの頃、少し眉をひそめた何か言いたそうな顔と目が合うことがあった。すぐに目線を下に落とし何を言われるのかと待ったが、彼らは結局何も言うことなく去っていく。その時間がどうも苦手でいつからか寝たふりをして、去るのをじっと待つようになった。
食事を終えると、この部屋唯一のドアへ目をやる。
どうしたら出られるのだろうか。
ドアに鍵はついていない。身体に枷があるわけでもない。
いやむしろそっちの方が良かったかもしれない。
それよりも厄介なものがこの部屋にはいた。黒いマントに身を包んだ人型のソレは、部屋の中の影から影へと移動していた。
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