5話 演説
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翌日目を覚ますと、元の体に戻っていた。思わず、やったぁ!と叫んでしまい、母さんにどうしたの、と聞かれてしまう。
入れ替わってたなんて言えないから、適当に誤魔化す。
着替えてギアステーションに行くと、ノボリとクダリが一番に駆け寄ってくる。
「体は大丈夫でしたか、イズリ?」
「ちゃんと休めた?」
「う、うん…もう大丈夫だ。今日から復帰するよ」
「そうですか、それはよかったです。新しいトレインももうすぐ完成するようです」
「そうか!早く戦いたいなライチ」
ライチを見れば頷いている。
俺はノボリとクダリが居るバトルサブウェイが大好きだが…Nは嫌いなんだ…。
「どうしたの?イズリ」
暗い顔になっていたのか、クダリが覗いてきた。
「なんでもないなんでもない。さ、仕事しよ」
3人でオフィスに向かう。
しばらく3人で書類を書いていたが、ノボリとクダリはそれぞれトレインに向かっていった。
オフィスの扉が開き、駅員が入ってきた。
「イズリさん!駅のホールで、プラズマ団と名乗る人たちが…」
プラズマ団と聞いてオフィスを飛び出す。ホールにたくさんの人だかりができていた。
プラズマ団のしたっぱたちが綺麗に整列している。その前でマントをきた男が演説をしている。
「ワタクシはプラズマ団のゲーチスです。
我々人間はポケモンとともに暮らしてきました。お互いを求め合い、必要とするパートナー」
ゲーチスと名乗る男は右から左へといったり来たりしている。
「そう思っておられる方が多いでしょう。ですが本当にそうなのでしょうか?」
我々人間がそう思い込んでいるだけ…と続ける。
「トレーナーは好き勝手命令しているだけ、ここバトルサブウェイもポケモンたちを戦わせています」
「ずいぶんと失礼な言い方だな。まるで、悪者扱いじゃねぇか」
俺は我慢できなくなって声を上げた。
人々が振り向く。歩き出すと誰もが道を開けた。
「3人目のサブウェイマスターよ」「あれが3人目の…」「新しいトレインに乗る子だね」
集まっていた人々は小さな声で話している。
「ほぉ、王が言っていたのはアナタですか。ワタクシは思ったことを皆さんに話しているだけですよ」
ゲーチスのおっさんは目を細めて言った。プラズマ団したっぱがゲーチスを庇うように立つ。
「バトルサブウェイは皆がポケモンと楽しむためにあるものだ。あんたの言い方は気にくわない」
ゲーチスと後数メートルというとこで、3人の忍者らしき男が一瞬で現れて道を塞いだ。
「ゲーチスさまへの冒涜は許さない」
ライチが毛を逆立てて今にもかみつきそうだ。
「よい、その者の話を聞こう」
ゲーチスがしたっぱと忍者を制した。忍者は音を立てずに消えた。
「では、アナタはバトルサブウェイはポケモンと繋がりを深めるものだと言うのですか?」
「ああ、そうだ」
「ポケモンたちは本当にそれを望んでいると思うのですか?人間は命令するだけでポケモンは傷ついているのですよ」
う…確かに実際戦っているのは人間ではない…。
民衆もそれに頷いている。
こいつの説得力に飲まれかける。
「いいですか、皆さん。未知の可能性を秘めたポケモンに、我々人間は何をすればよいのでしょう?」
ゲーチスは視線を俺から民衆に移し、問いかける。
解放、という言葉が出る。
「そうです!ポケモンを解放することです。そしてこそ人とポケモンは対等になれるのです」
そこでゲーチスの演説は終了した。
民衆が帰っていくなか、俺は何も言い返せなかったのが悔しかった。
ゲーチスはそんな俺に追い討ちをかける。
「アナタのことは王からも団員からも聞いております。ポケモンを戦わせているアナタは本当に正しい付き合いをしているのですか?」
「くっ…」
「よくお考えください」
そう言い残して、ゲーチスはしたっぱとともにギアステーションを出ていった。
俺は壁を蹴った。
言い返せない自分にも腹立つ。
ライチは心配そうに見ている。
ポケモンはものをしゃべらない。だから本当はどう思っているのかはわからない。
「イズリ、今プラズマ団が出ていったようですが…」
ノボリがギアステーションの出口を見る。
「プラズマ団の演説だった」
「演説でしたか…いつものように'ポケモン解放'の話ですか?」
「ああ…。ノボリ、あいつら何をするかわからん。俺はしばらくギアステーションに泊まる」
「わかりました、ではわたくしもクダリとともにギアステーションに泊まります」
クダリと合流してギアステーションを見張ることにした。
夜のお客さんがいない時も、気が抜けない。ああ、寝不足になりそう。
見回りを始めて、数日がたつ…。
「ずっと見回りしてきたけど、プラズマ団、動かないよね」
クダリが欠伸混じりに言う。
「あのワンダーブリッジ以来…大きな動きはありませんね」
ノボリたちの言う通り、プラズマ団に動きはない。
「ある意味、あいつら不気味だな」
「そうですねぇ…」
ホームで集まって話していると、駅員が声をかけた。
「ローテーショントレインの部品の納品がされていないと、整備士から連絡がきています」
駅員の持ってき書類をノボリが受け取る。
クダリと覗く。
「確かに部品の数が書いてあるのに、なんでだろ」
クダリが首を傾げる。
うーん…何故だろう…。
「もう一度、注文しましょう。次も納品されてないなら原因を探ってみます」
クダリが書類を駅員に返した。駅員は一礼してオフィスに向かった。
カナワタウンに行って、調べたいが…バトルサブウェイを離れるわけには行かないよな…。
「イズリは一人で行っちゃダメだよ。すぐムチャするんだから」
「え、いや…」
無茶はしてないよ…。
「さっき、カナワタウンに行こうって考えてたでしょ!」
クダリにズバリ当てられる。
鋭い…。
「そ…それは…」
「クダリの言う通りです。ワンダーブリッジの時のようにまた危険な目に遭うかもしれません」
あの時か…夢中で飛び出して行ってしまったからな…。ライチも止めてくれてたのに。
「僕とノボリ兄さんをもっと頼ってよ」
クダリの言葉にノボリが頷く。
「プラズマ団からバトルサブウェイを守るため、次は3人で行きましょう」
「ありがとう、ノボリ、クダリ」
小さい頃から一緒の二人と決意を固めた。
