エピソード3 ルグニカ平野からベルケント
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アルビオールで外殻大地へ戻ってきた。ダアトの近くでノエルに下ろしてもらい、徒歩で街に入った。教会の前に行くと詠師トリトハイムが人々に囲まれていた。人々は口々に不満を口にしている。
「この状況で戦いを続けるほど、インゴベルト陛下も愚かじゃなかったってことだな」
「ええ、それだけが救いですわ」
「でもこのことがもっと大勢に知られたら大混乱になるんな…」
「この先どう対処するかがわかれば、それも抑えられるはずよ」
「そういうことですね。イオン様に面会しましょう」
戦争に大陸の消失様々なことが一気起こっている、二千年後の世界は一体どうなってしまうんだとニッドとノルンは一抹の不安にかられる。
教会に入ることはできたが、この広い内部からイオンを探さなければならない。
「イオンはどこにいるんだ?」
「ご自身の私室ではありませんか?」
「でも導師のお部屋は教団幹部しか入れないわ。鍵がわりに譜陣が置かれていて侵入者対策になっているの」
『そんな時に頼れる者がいるではないか』
「そー!導師守護役のアニスちゃんにお任せ♡」
「元、だろ」
ルークがすかさずツッコミを入れた。
「ぶー。元だけど、ちゃんとお部屋に続く譜陣を発動する呪文知ってるモン」
「譜陣って隣の部屋にあっただろ?」
「そゆこと。さ、行こ〜」
アニスに続いて扉の中へ入ると、5つの譜陣が描かれていた。彼女は中心の譜陣に乗って呪文を唱えた。
「これこれ。えっと…[ユリアの御霊は導師と共に]」
唱え終わるとアニスがかき消えた。
「うわっ!消えた…!」
「心配すんな。ユリアロードと同じ原理だ」
そう言ってニッドも譜陣に乗って呪文を唱えて消えた。
「よし…行くか」
後からルークたちと合流してイオンの私室にたどり着いた。
「譜陣の前に警備を置くべきだろ…セキュリティ緩すぎる…」
『まぁそのおかげで、ここまで来れたんだがな』
セキュリティの緩さにニッドとノルンは驚く。イオンに私室に着いたのはいいが彼の姿はどこにもない。ティアが足音を聞きつけた。
「しっ!誰かくるわ!」
「ヤバ…!ここは関係者以外立ち入り禁止だよぅ!」
「隠れよう!」
奥の部屋に全員で逃げ込み息を潜める。入れ替わるようにしてモースとディストが入ってきた。
「ふむ…誰かここへ来たと思ったが、気のせいだったか」
「それより大詠師モース。先ほどのお約束は本当でしょうね。戦争再開に協力すればネビリム先生のレプリカ情報を…」
「任せておけ。ヴァンから取り上げてやる」
「ならばこの薔薇のディスト!戦争再開の手段を提案させていただきましょう。まずは導師イオンに休戦破棄の導師詔勅を出させるがよろしいかと」
「ふむ。導師は図書室にいたな。戻り次第、早速手配しよう」
ディストとモースは私室から去っていく。それを確認してジェイドたちが口を開く。
「…今の話を聞くと、モースとヴァンはそれぞれ違う目的で動いているようですね」
「ああ、なんかディストが二人の間でコウモリになってるって感じだった」
「モースは預言通り戦争を起こしたいだけ。ではヴァンの目的は?」
「外殻大地を落として人類を消滅させる…いや、ヴァンの目的は本当にそれだけなのか…」
何かしっくり来ないとニッドは眉間にしわを寄せた。
「私には、あの人が意味のない殺戮だけを目的しているように見えません。モースの目的が明快なだけに脅威を感じない」
「ならまず、明快な敵の方を片付けようぜ。インゴベルト陛下にモースの言葉を鵜呑みにしないように進言して、戦争再開させないように…」
「でも…私の言葉をお父様は信じて下さるかしら…」
ナタリアが不安げに俯いた。ルークが力を込めて言う。
「ナタリア!当たり前だろ!」
「…私、本当の娘ではないかもしれませんのよ」
誰もが黙り込んでしまったそんな中、俯いているナタリアにニッドが声をかけた。
「ナタリア。たとえ、そうでも自分の子供を大切に思わない親なんていないと思う。多少の戸惑いはあっても記憶と思い出は嘘はつかない」
「…そう…でしょうか…」
「も、もー!その時はその時だよ!それより図書室行こう!」
アニスに引っ張られるように一行はイオンがいるという図書室へと向かった。
「皆さん!?どうしてここに…」
図書室でイオンを見つけるなりルークが駆け寄った。
「イオン!外殻大地が危険なんだ!だから教えてくれ。ユリアの預言にはセフィロトの暴走は詠まれてなかったのか?」
「…なるほど、それは初耳です。実は、僕は今まで秘預言を確認したことがなかったんです」
「…!」
「え!?そうなんですか?」
アニスと一緒にニッドも衝撃を受けた。
「ええ。秘預言を知っていれば僕はルークに会った時、すぐに何者かわかったはずです。アクゼリュスのことだって…回避できたかもしれない。…ですから僕は秘預言を全て理解するためにダアトへ戻ったんです」
「(イオン…秘預言を確認したことがなかったのか…)」
「でも、その秘預言にセフィロトの暴走のことは…?」
ナタリアの言葉にニッドは我に帰る。
「ええ。詠まれていなかったはずです。念のため、礼拝堂の奥へ行って調べてみましょう」
「礼拝堂の奥?なんで?」
ルークが首を傾げる。
「譜石が安置してあります。そこで預言を確認できますから」
「イオン様!それはお体に障りますよぅ」
「止めないでください、アニス。必要なことですから」
イオンに連れられて礼拝堂の奥へ行く。そこには大きな譜石が置かれていた。
「この譜石は第一から第六までの譜石を結合して加工したものです。導師は譜石の欠片から預言を全て詠むことができます。ただ量が桁違いなのでここ数年の崩落に関する預言だけを抜粋しますね」
イオンが譜石に手をかざすと、彼の体と譜石が淡い光を発して光り出した。
詠み終えたイオンは、体力を消耗したために倒れそうになった。一番近くにいたアニスが彼を支える。
「イオン様!」
「…これが第六譜石の崩落に関する部分です」
秘預言には聖なる焔の光のこと、崩落のこと、戦争のことを詠んでくれたがやはりどこにもセフィロト暴走のことは詠まれていなかった。
「やっぱりアクゼリュス崩落と戦争のことしか詠まれていないな…」
「もしかしたらセフィロトの暴走は第七譜石に詠まれているのかもしれないな」
「ローレライの力を継ぐ者って誰のことかしら?」
「ルークに決まっているではありませんか」
『いや…ルークが生まれたのは七年前のはずだろう』
「今は新暦2018年です。2000年と限定しているのだから、これはアッシュでしょう」
「でも、アクゼリュスと一緒に消滅するはずのアッシュは生きています」
「それ以前にアクゼリュスに行ったのはルークでしょ。この預言、おかしいよ」
「確かにアッシュも後から来たが、あの時点で聖なる焔の光と呼ばれていたわけじゃないしな」
ずっと黙って考えていたニッドが思いついたように口を開いた。
「…そうだ、この預言にはルークがーレプリカの存在が抜けているんだ」
「それってつまり、俺が生まれたから預言が狂ったって言いたいのか?」
ルークが言った瞬間、神託の盾兵が駆け込んできた。
「見つけたぞ!鼠め!」
「ヤバ!」
ティアとガイと共にニッドもすばやく兵士を打ち倒す。
「皆さん!逃げてください!アニスも!」
「アルビオールへ戻りましょう」
イオンに見送られ、急いで教会を出る。だが、街の入り口にはモースと多数の神託の盾兵たちで塞がれていた。
「大詠師モース、もうオールドラントはユリアの預言とは違う道を歩んでいます」
ティアが話をしている隙にジェイドが詠唱を始めた。
「黙れティア!第七譜石を捜索することも忘れ、こやつらとなれ合いおって!いいか、ユリアの預言通りルークが死に、戦争が始まればその後繁栄が訪れるのだ」
「あいつ…一発殴らないと気が済まない…!」
ニッドは背中のノルンに手をかける。
「抵抗はおやめなさい。ジェイド、ニッド。さもないとこの女の命はありませんよ」
現れたディストが示した先には空飛ぶ椅子に乗せられたノエルの姿があった。ジェイドは詠唱を中断し、ニッドはノルンから手を離した。神託の盾兵が二人に剣を突きつける。
「はーはっはっは。いいざまですねぇ、ジェイド」
「お褒めいただいて光栄です」
「誰も褒めていませんよ」
ジェイドはいつもの調子で返している。ニッドは見損なったと言わんばかりに冷たく言い放った。
「ディスト、人質を取るなんて聖職者のやることかよ」
「なんとでも言いなさい」
「俺たちをどうする気だ」
「バチカルへ連れて行く。そこで戦争再開に役立ってもらう」
「連れて行きなさい」
ディストに命じられて武器を突きつけられたルークたちが連れて行かれる。ニッドも続こうとしたが、神託の盾兵たちに行く手を阻まれた。
「貴方はこちらですよ」
「は?なんで俺だけ」
ディストは手を出した。
「武器を渡していただきます」
「断る」
ノルンを背中に隠すようにずらしたが、人質のノエルを乗せた椅子をニッドの目の端でチラチラと動いている。
「…くっ」
あからさまな脅しをかけて来たのでニッドはノルンをディストに渡して両手を上げた。
「ニッド、賢明な判断ですね」
「脅してきたくせに」
「連れて行きなさい。ただし丁寧に」
神託の盾兵に両手を拘束されたニッドは本部へと連行された。
