エピソード3 ルグニカ平野からベルケント
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エンゲーブに入ったニッドたちは村を束ねるローズ夫人を訪ねる。
「大佐!戦線が北上するって噂は本当ですか!」
夫人は先に家に入ってきたジェイドを見て開口一番に言った。
「そう容易くは突破されはしないと思いますが、この村が極めて危険な状態なのは確かです」
「どうしたもんですかねえ…グランコクマに避難したくてももう首都防衛作戦に入っているらしくて…」
「ええ。グランコクマに入るのは不可能です。あの街は戦時下には要塞となりますから」
「どこみちこの大陸は危険です。ケセドニアにまで逃げられれば…」
#ニッドは#言葉に詰まるが、アニスとイオンはそれを肯定するようにお互いに頷き合う。
「あそこは自由商人さんたちの街ですから、安心ですよね」
「ええ、アスターなら受け入れてくれるでしょう」
「この街の全員をアルビオールに乗せるのは無理です。かといって徒歩で戦場を移動するのは危険でしょう」
「子供と年寄りだけでも、そのアルなんとかで運んでもらえませんか?残りはここでキムラスカ軍に投降して…」
「それでは崩落の危険が残っています」
ニッドが前に出てきて言った。
「崩落って…ここがセントビナーやアクゼリュスみたいに消えるってことですか?」
「残念ながらその通りです」
「…じゃあケセドニアまで逃げますよ。幸い橋も直りましたし」
「アルビオールはノエルが居るから大丈夫だけど、ケセドニアまで逃げるには、戦場を横切らなきゃダメだ。民間人だけじゃ危険だから俺たちも徒歩組を護衛しないか?」
「…そうですね…」
ニッドの提案にジェイドも肯定してはいるものの多少の不安はあるようで考えてから言った。
「ただ私たちだけでは心許ない。エンゲーブの駐留軍に話をつけてきます。…せめて我々の後方を一個小隊が護ってくれれば…」
ジェイドはそう呟きながら歩き出す。外へ出ると村の入り口で子供もや老人がノエルの誘導でアルビオールに乗り込んでいた。
ニッドたちのところにも徒歩組が集まっている。駐留軍と話をしていたジェイドも合流してきた。
「もしも予定より搬送が早く終わった場合、こちらに来てくれることになっています。まあ…あまり期待しない方がいいと思いますが」
『そうだな。アルビオールも何往復するからわからないからな…』
「…イオンも徒歩組か、体は大丈夫か?あんまり無理はするなよ」
アニスの隣にいるイオンにニッドが声をかける。
「僕は大丈夫です、ありがとうございますニッド」
イオンは明るく答えた。
「徒歩組は全員揃ったようですから、我々も出発しましょう」
ジェイドを先頭にニッドたちはエンゲーブを出発した。
移動を始めて1日、ここまでは戦場の兵との遭遇もなく怪我人は出たもののエンゲーブの住民は無事だった。
野営地に着いたので住民たちを休ませ、ニッドたちも順番に見張りをする。
ジェイドの後に見張りの順番がやって来きた。ノルンを担いで、一通り危険がないか見て回る。
「何もなし」
一周して先頭に戻ってきた彼の元にイオンが声をかけてきた。
「ニッド、一緒に見張りをしてもいいでしょうか?」
「いいけど、イオン…ちゃんと寝ないとまた倒れるよ」
「それはニッドも同じですよ」
イオンがくすと笑い、ニッドの隣に座った。ノルンを降ろしたニッドも座る。
「…戦場を横切るなんて本当にとんでもないよな」
「そうですね、でもこのまま居ても崩落の危険がありますから…」
イオンに頷いてニッドは目を伏せた。
「…聞いてもいいですか?」
少しの沈黙のあと静かにイオンが口を開いた。
「あぁ…」
「ニッドもユリアも…預言についてどう思っているのですか?」
「…姉さんは言ってたんだ。預言は幸せに生きるための道標のようなものだと。俺もそう思う…預言が命より重いものなんておかしい」
「そうですよね…」
『戦争を止められるかどうか、今はルークたちを信じるしかあるまい。我々はエンゲーブの民を無事に送り届けることに専念しよう』
「はい。ノルンの言う通りですね」
「…」
ニッドが小さく譜歌を口ずさむ。それを聞きながらイオンたちは夜明けを迎えた。
