エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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外は雨が降っている。ルークが何かを見て固まっていて、ニッドは瞬時にルークの視線の先を辿る。そこには大きな陸艦、そして見覚えのある赤い髪、更に神託の盾兵が数名。その中にイオンの姿があった。ルークは剣を抜いて走る。
「待て!ルーク!」
制止も聞かずにルークは斬りかかる。
「イオンを返せっ!」
「お前かっ…!」
ルークの剣を受け止めたのは彼と同じ赤い髪の《鮮血のアッシュ》だ。他の仲間は何事かと驚いて駆け寄ってきたが、誰も何も言えない。
アッシュの髪は雨のせいで下りている、そのため対峙する2人は鏡のよう。
その様をジェイドが真剣な目で見ている。ニッドもその場を動けなかった。
アッシュはルークの剣を弾いて距離を取る。
「アッシュ!今はイオンが優先だ!」
《烈風のシンク》が現れる。
「わかっている!」
シンクにぶっきらぼうに返事をし、アッシュは剣を収める。
「いいご身分だな、女をちゃらちゃら連れて」
ルークに吐き捨てるように言ってアッシュはイオンを連れてタルタロスへ走っていく。その後ろに譜陣が出現する。
「ま、待て!」
ルークは気づかずに後を追おうとする。その腕をニッドが掴んで止めると、同時に譜陣が発動して視界を遮った。バランスを崩したルークはしゃがみこんだままだ。
「…あいつ……俺と同じ顔…」
「…」
混乱して呟くルークをニッドは黙って見つめた。
「どういうこと…」
ナタリアも同じく混乱しているのか状況を聞こうとしてくる。
「ところで…イオン様が連れて行かれましたが」
ジェイドがそう言うとアニスがはっとする。
「…あああ!しまった!」
「イオンも連れて行かれたし、六神将に会った時点で囮作戦は失敗だな」
ニッドは肩を竦める。
「バチカルに戻って船を使った方がいいんじゃないか?」
ガイがそう提案するが、ナタリアは首を横に振る。
「無駄ですわ。お父様はまだマルクトを信じていませんもの。囮の船を出港させた後、海からの侵略に備えて港を封鎖したはずです」
「陸路を行ってイオン様を捜しましょう。仮にイオン様が命を落とせば今回の和平に影響が出る可能性もゼロではないわ」
「そうですよ!イオン様を捜してください!ついでてもいいですから!」
『イオンはついで、なのか…』
ノルンはニッドの背中で小さく呟く。
「決めて下さいルーク。イオン様を捜しながら陸路を行くか、或いはナタリアを陛下に引き渡して港の封鎖を解いてもらうというのも…」
ジェイドの言葉にナタリアは目を丸くしてルークの腕を引っ張る。
「そんなの駄目ですわ!ルーク!わかっていますわね!」
ルークは心底面倒くさそうに頭を抱える。
「あー!うるさい!大体なんで俺が決めるんだよ」
「さっき、親善大使は俺だって言ってただろ」
ニッドが腰に手を当ててルークに言う。言われたルークはニッドを睨んでいる。
「あんたも、イヤミな奴だな。…陸路!ナタリアを連れて行かないと色々やばいからな」
「イオン様、どこへ連れて行かれたんだろう…」
アニスがぽつりと呟く。
「陸艦の立ち去った方角を見ると東ですね」
「東の方角はちょうどオアシスがあるな…」
ジェイドの後にニッドが続ける。
アニスはルークのそばに寄ってきて彼の腕を引っ張る。
「私たちもオアシスへ寄る予定でしたよね!ルーク様、追いかけてくれますよね!」
「ああ…」
ルークの返事は元気がない。皆は静かにオアシスへ向けて歩き出す。
「謁見の間でティアが詠んだ第六譜石…あれはこう続くんだ。…ND2018 ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へ向かう」
『そこで若者は力を災いとしキムラスカの武器となって…か』
ニッドは不安を抱えたまま、皆を追った。
