エピソード3 ルグニカ平野からベルケント
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21話 救済
アルビオールに乗り込み、セントビナーへ戻ってきたニッドたちは崩落したかかった大地に降りる。
「マクガヴァンさんたち!みんな!大丈夫ですか?」
ルークが声をかける。見る限り、残された住民は全員いるようだ。
「おお!あんたたち!この乗り物は…」
老マクガヴァンはアルビオールを見て驚く。
「元帥、話は後にしましょう。とにかく乗ってください。みなさんも」
ジェイドがそう言い、一行は住民がアルビオールに乗り込むのを手伝う。
機体が飛び立つと同時に大地が崩落を始めた。ぼろぼろと大地が崩れて、泥の海に飲み込まれていく。セントビナーのあった大地も泥の海にしぶきを上げて着地するが、今にも沈みそうだ。
その様子を老マクガヴァンとニッドはアルビオールのブリッジから見ていた。
「瘴気…恐ろしいものだ…」
ニッドが小さく呟くのをノルンは黙って聞いていた。
「助けていただいて感謝しますぞ。しかしセントビナーは、どうなってしまうのか…」
老マクガヴァンは不安げに言った。
「今はまだ浮いていますが…しばらくするとマントルに沈んでいきます」
ニッドが静かに答える。
「そんな!なんとかならんのか!」
「ここはホドが崩落した時の状況に似ているわ。その時は結局、一月後に大陸全体が沈んだそうよ」
「ホド…そうか、これはホドの復讐なんじゃな」
そんな老マクガヴァンの言葉にティアとガイは首を傾げている。
ホド…マルクト帝国がフォミクリーの研究成果の漏洩を防ぐためにキムラスカ軍ごと消滅させたという大きな出来事のあった場所。
「…本当になんとかならないのか!」
「住むところがなくなるのはかわいそうですの…」
ルークが声を上げ、ミュウはしょんぼりして長い耳が垂れてしまっている。
「大体大地が落っこちるってだけで常識外れなのにぃ、何にも思いつかないよぉ〜超無理〜」
アニスは頭をぶんぶん振っている。
ルークは思い出したように言う。
「そうだ、セフィロトは?ここが落ちたのはヴァン師匠がパッセージリングってのを操作してセフィロトをどうにかしたからだろ?それなら復活させればいいんじゃねーか?」
「でも私たちパッセージリングの使い方を知らないわ」
ティアにそう言われ、ルークはうっと小さく声を漏らした。
「じゃ、じゃあ師匠を問いつめて…」
ヴァンとは今は敵対しているに等しい、そう簡単に教えてくれるはずはないだろう。
「おいおい、それは無理だろうよ…お前の気持ちもわかる…」
ガイに被せるようにルークは叫んだ。
「わかんねーよ!ガイにも、みんなにも!」
『ルーク!』
「落ち着け!」
ニッドとノルンが宥めてもルークは言葉を続けた。
「わかんねえって!アクゼリュスを滅ぼしたのは俺なんだからさ!でもだからなんとかしてーんだよ!こんなことじゃ罪滅ぼしにもならないことくらいわかってっけど、せめてこの街くらい…!」
「ルーク!いい加減にしなさい!焦るだけでは何もできませんよ」
今にも泣きそうなルークをジェイドが叱った。彼は驚いて口を噤み、ニッドも目を丸くした。
「ま、まあルーク。一回落ち着こう?な?」
ニッドはルークの顔を覗き込んで宥める。彼は微かに頷く。
「セフィロトのことが知りたいならユリアシティへ行くのはどうだろう?なあ、ジェイド?」
ニッドの提案にジェイドが言葉を添える。
「ええ、それがいいかもしれません。セントビナーが崩落しないという預言が狂った今なら…」
「そうだわ。今ならお祖父様も力を貸してくれるかもしれない」
行き先が決まり、アルビオールはユリアシティへ進路を取る。
「それとルーク。先ほどのあれはまるで駄々っ子ですよ。ここにいるみんなだってセントビナーを救いたいんです」
ジェイドに言われ、ルークは周りの皆を見て気づいた。
「ごめん…そうだよな…」
「まあ、気にすんなって。こっちは気にしてねえから」
ガイがさわやかに言った。
『「さぁ、ユリアシティへ行こう」』
ノルンとニッドの声が重なった。ノエルはアルビオールをユリアシティへと発進させた。
ユリアシティへ降り立った一行。街へと続く道で市長のテオドーロと数人の市民が待っていた。
「お祖父様!」
ティアが駆け寄っていく。テオドーロは静かに口を開いた。
「来ると思っていた」
「お祖父様!力を貸して!セントビナーを助けたいんです」
ティアは祈るように言った。
「それしかないだろうな。預言から外れることは我々も恐ろしいが…」
「テオドーロ市長、お話の前にセントビナーの人々を休ませてあげたいんですけど」
ニッドの提案にテオドーロは頷く。
「そうですな。こちらでお預かりしましょう」
「お世話になります…」
市長の近くにいたユリアシティ市民たちがセントビナーの住民を案内する。彼らに続いて歩き出した老マクガヴァンだが、ふと立ち止まる。
「ルーク。あまり気落ちするなよ」
「え?」
突然名前を呼ばれたルークが首を傾げる。
「ジェイドは滅多なことで人を叱ったりせん。先ほどのあれもお前さんを気に入ればこそだ」
「元帥!何を言い出すんですか」
「年寄りには気に入らん人間を叱ってやるほどの時間はない。ジェイド坊やも同じじゃよ」
そう言い残して老マクガヴァンは去っていった。
「元帥も何を言い出すのやら。…私も先に行きますよ」
メガネをかけ直してジェイドは歩いていく。
「はは。図星らしいぜ。結構かわいいとこもあるじゃねぇか。あのおっさん」
「あはは〜ホントだ🤍」
「ジェイドも元帥には敵わないんだなぁ、かわいいねぇ」
ガイとアニスとニッドが微笑んでいると、ジェイドが早足で戻って来てニッドの耳を引っ張っていく。
「覚えておいてくださいね、ニッド。戻ったら仕事を山盛りにしてあげますから」
「ぎゃー!なんで俺だけぇぇえ!」
残りのメンバーも引っ張られていくニッドの後を追って街に入った。
少しの間、休憩をするために皆はそれぞれ分かれて後に会議室に集まることにした。
ニッドは街の広場のベンチに座って街並みを眺めていた。そこへルークがやって来た。
「ニッド…」
「ルーク、ちょっと頭冷えたか?」
「う、うん…」
「じゃあ、会議室行くか」
ニッドは立ち上がり、ノルンを担ぐとルークが彼を呼び止める。
「ニッド…あの、あ、ありがとう…」
「唐突だな。どうしんだ?」
「ニッドは最初からちゃんと叱ってくれてたし、信じてくれたから」
「あぁ…」
ニッドは少し照れくさそうに目を伏せた。
「俺…叱られるのは嫌なことだと思ってたのに…」
「叱られるのはけっして嬉しいことじゃない」
「わかってるつーのっ」
「ジェイドが叱ったのも…ティアが叱ったのもルークのことを認めてルークのためを思ってのことだ。どうでもいいと思ってる奴には叱ることもない…」
『ニッドがタルタロスでルークを叱ったのもお前を思ってのことだ』
「ノルン、それは…言うな…」
ニッドが文句を言うとノルンはくすくすと笑っている。
「まぁ…叱られたら、次をどうするかが大事だ」
「う、うん」
「よし行こう」
ルークは頷き、ニッドに続いて会議室へ向かった。
