エピソード3 ルグニカ平野からベルケント
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一行はメジオラ高原に到着する。激しい砂嵐の向こうに崖の上に引っかかったアルビオールが見えた。
「あれ…なんかやばそう。今にも落ちそうじゃん」
アニスがアルビオールを見て言う。
「まずいですね。下手をすれば私たちがたどり着く前に落ちるかもしれません」
「お、落ちたらどうなる?」
ルークが恐る恐る聞いた。
「まず操縦士は助からないだろうな…」
『浮遊機関も壊れる可能性がある』
ニッドとノルンの答えにミュウは驚いたようにぴんと耳を張る。
「大変ですの!』
「発射装置は機体の両側から打ち込まなきゃならない。二手に分かれよう」
「どう分かれましょうか…貴方は誰と行きたいの?」
ティアはルークを振り返る。
「二手に分かれるなら俺は…ティアかな…」
「私?もちろん構わないわ」
「あと…ニッドと一緒がいい」
ルークに指名されたニッドは速攻で了承する。
「ああ、いいぜ。じゃあジェイドはそっちを頼むな」
「ええ、ですがそちらは3人だけで大丈夫ですか?」
「3人じゃないさ!」
ノルンを掲げてニッドが言って先に走り出した。
「そうでしたね…」
ニッドの後ろ姿を見てジェイドが呟いた。
メジオラ高原の奥へ進んでいく。アルビオールもはっきり見えるようになってきた。
もう少しだ、そう思った途端に大きな物音が聞こえた。
「な…なんだ?」
ルークが足を止める。ティアとニッドは警戒してあたりを見渡す。魔物の咆哮が響いた。
「魔物だわ!かなり近い!」
『皆後ろだ!』
ティアのあとにノルンが警告の声を上げる。
ルークが剣を抜いてティアも杖を構え、戦闘を開始する。ティアが詠唱している間にルークとニッドは前衛で攻撃を食らわせる。どれだけ攻撃してもダメージがないのか魔物は怯まない。
「ダメージが通ってないのか…氷柱月華!」
術技の氷柱で動きを止め、ニッドはルークの方を見る。
「時間がない。ルーク、先に行け!」
「先にって…俺は音機関は扱えないんだぞ!」
「装置を固定して回路を繋ぐだけだ。大丈夫、ルークならできるさ!ティア、ルークを連れて先に行ってくれ!」
ルークに装置を持たせて軽く説明する。ティアはそれをよく見て覚えて頷いた。
「…はい。行きましょう、ルーク」
ティアに腕を引かれてルークは歩き出す。
「ここは通さない!」
2人の行った道にニッドが立ちはだかる。ルークはニッドの背中を振り返るがやがてティアに続いて走り出した。
「ノルン!秘奥義を使う!」
『封印術が解除できたのか、よし!イースカミエータ!』
ノルンが譜術を発動し、魔物が錯乱している間に詠唱を開始する。
「聖なる水の竜よ、契約者の名のもとに、その力を示せ」
『我、その力を示さん!」
『「アイシクルセイバー!」』
魔物の頭上と足下に譜陣が展開する。そこから水柱が現れて、同時に敵を貫いた。
魔物が音素に還るのを見てニッドは不意に胸を抑え、倒れそうになった。
『どうした!?』
「……ちょっと疲れただけだ。大丈夫、ノルン」
『本当か…?』
「心配しすぎだって。…それより急ごう」
まだ胸は苦しかったがそれでも立ち上がってすぐにルークたちを追った。
アルビオールが完全に見える位置に到着したルークとティア。
「間に合った!けど、ニッドはまだ来ないな…」
「ルーク、ガイたちも到着したみたい。急がないと、アルビオールが崖から落ちてしまうわ」
「…俺できるかな…」
ルークは発射装置を見つめ、ニッドの言葉を思い出す。少しだけ勇気が湧いてきた。
「…いや、大丈夫!」
発射装置を構え、ガイたちとタイミングを合わせて発射する。アルビオールを固定し無事に崖から降ろした。
「な?できただろ?」
安堵した時、後ろからニッドの声がした。ルークが振り返るとボロボロになった彼が立っていた。
「ニッド!」
「准将、大丈夫ですか?」
「かすり傷だ。それより、アルビオールのところへ行こう」
「ああ!」
皆と合流してアルビオールから操縦士を助け出す。
「助けてくださってありがとうございます」
操縦士のギンジは皆に一礼する。
「ケガはないか?」
「はい、おかげさまで」
「話はあとにしましょう。浮遊機関も回収できたし時間も惜しいわ」
ティアがそう言った。
「ギンジ、動けるか?」
「はい、おいらは大丈夫です」
浮遊機関を回収し、ギンジを連れて一行はシェリダンに戻った。
シェリダンに着いたところ、ギンジは浮遊機関を持って先にドックへ戻っていった。
ルークたちも少し遅れてドックへ向かう、その途中街でキムラスカ兵に見つかってしまった。
「お前たちか!マルクト船籍の船で海を渡ってきた非常識な奴らは!」
「む!そこの2人、マルクトの軍人か!」
「まずい…!」
「とにかく逃げよ!」
ルークとアニスの声でみんなはドック目掛けて走り出す。
「捕まえろ!」
キムラスカ兵たちに追いつかれる前にドックに駆け込んだ。ドック内ではイエモンたちが最後の作業を行っていた。
「おお!帰ってきよった!今アストンが浮遊機関を取り付けておるぞ!」
イエモンが皆のもとへやって来て言った。その瞬間、ドアが大きく揺れた。
「怪しい奴!ここを開けろ!」
外からキムラスカ兵が叫んでいる。
「くっ…ドアが蹴破られる…!」
「ニッド!もっと力入れて押さえろ!」
ニッドとガイで扉を押さえる。
「なんの騒ぎだい?」
その音を聞いたタマラが腰に手を当てて聞いた。
「キムラスカの兵士に見つかってしまいました」
タマラはニッドとジェイドを見て納得する。
「そうか、あんたたちマルクトの軍人さんだったね」
「この街はもともとマルクトの陸艦も扱っとるからのう。開戦寸前でなければ咎められることもなかったんじゃが…」
イエモンの言葉で思い出したようにタマラが言った。
「陸艦と言えば、あんたたちの陸艦からごっそり部品をいただいたよ。製造中止になった奴もあったんで技師たちも大助かりじゃ」
「おかげでタルタロスは航行不能です」
イオンが苦笑いする。
「でもアルビオールがちゃんと飛ぶなら、タルタロスは必要ないですよねぇ」
そう言ったアニスの言葉が聞こえていたようで怒ったアストンが昇降機で上がってきた。
「“ちゃんと飛ぶ”とはなんじゃ!わしらの夢と希望を乗せたアルビオールは、けして墜落なぞせんのじゃ」
「墜落してたじゃん…」
ルークが小さくぼやいた。ニッドもルークに同意する。無意識に手を緩めた瞬間、ドアが再び大きく揺れた。
「やばい…っ!」
力を入れ直して必死にドアを守るが、そろそろ限界だ。
「おおーい!早くしてくれ!扉が壊される!」
ガイが声を上げる。
「アルビオール二号機の準備は!?」
ドアを押さえながらニッドが聞くと、アストンは力強く頷いた。
「うむ完成じゃ!二号機の操縦士も準備完了しているおるぞ」
「外の兵士はこちらで引き受けるぞい」
イエモンが胸を張って言うがナタリアは心配そうにしている。
「ですが…外の兵士はかなり気が立っていますわ。私が名を明かして…」
「時間がないんでしょう?私たちに任せてください」
「年寄りを舐めたらいかんぞ!さあ、おまえたちは夢の大空へ飛び立つがいい!」
ガイとニッドは一斉に扉から離れ、仲間と昇降機に飛び乗る。その瞬間、キムラスカ兵が突入してくる、彼らの前にイエモンたちが立ちはだかる。
「後は頼みます!」
昇降機が降りて見えなくなる前にルークが3人に叫んだ。
「この先はいかせんぞ!わしらシェリダンめ組にかけて!」
答えの代わりにそんな声が聞こえた。昇降機を降り、アルビオールの下へ行くと、1人の女性操縦士が待っていた。
「お待ちしておりました」
ルークは首を傾げる。
「さっき言ってた操縦士って君のことか…」
ニッドが思い出したように言うとルークも納得したようだ。
「はい、私は二号機専属操縦士ノエル。初号機操縦士ギンジの妹です。兄に代わって皆さんをセントビナーへお送りします」
「よろしく頼む!」
「さあ、行きましょう!」
ノエルに続いて一行はアルビオールに乗り込み、セントビナーへと急いだ。
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