エピソード2 オアシスからグランコクマまで
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向かった宿屋の前には兵士が待機していた。彼はルークたちが到着すると、敬礼する。
「解呪が成功したようです」
そう告げた。
「ありがとう、戻っていいよ」
ニッドがそう言うと兵士はもう一度敬礼して軍本部へと戻って行った。宿屋に入り、受付係に示された部屋に入る。
そこには意識を取り戻したガイとアニス、イオンがいた。
ガイの姿を見たルークは部屋に入るなり、彼のそばへ走って行った。
「ガイ!ごめん…」
「…ルーク?」
ルークがいきなり謝ってきたのでガイは一瞬きょとんとしていた。
「俺…お前にきっと嫌な思いさせてたんだと思う。だから…」
「はははっ、なんだよそれ。お前のせいじゃないよ。俺がお前のことを殺したいほど憎いのはお前のせいじゃない」
そしてガイは皆に聞かせるように静かに語り始めた。
「俺は…マルクトの人間なんだ」
ガイの最初の一言にニッドとジェイド以外が驚く。
「え?ガイってそうなの?」
アニスが首を傾げて聞いてきた。
「俺はホド生まれなんだよ。で、俺が五歳の誕生日にさ、屋敷に親戚が集まったんだ。預言士が俺の預言を詠もうとした時、戦争が始まった」
「ホド戦争…」
ティアが小さく口にした。預言にも詠まれていた大きな戦争。
「ホドを攻めたのは確かファブレ公爵ですわ」
「そう。俺の家族は公爵に殺された。家族だけじゃねえ、使用人も親戚も、あいつは俺の大事なものを笑いながら踏みにじったんだ。…だから、俺は公爵に俺と同じ思いを味あわせてやるつもりだった」
ニッドも二千年前の列強国との戦いを思い出してそれを重ね、目を伏せた。
ジェイドがガイに歩み寄る。
「貴方が公爵家に入り込んだのは復讐のため、ですか?ガルディオス伯爵家ガイラルディア・ガラン」
「…うぉっと、ご存知だったって訳か」
「ちょっと気になったので調べさせてもらいました。貴方の剣術はホド独特の盾を持たないアルバート流でしたからね」
「…アルバート流…通りで見たことあると思った…」
ニッドの小さな呟きにノルンもうんうんと大きく頷いた。
「…なら、やっぱガイは俺のそばなんて嫌なんじゃねえか?俺はレプリカとはいえファブレ家の…」
「そんなことはねーよ。そりゃ全くわだかまりがないといえば嘘になるがな」
「だけどよ」
「お前が俺についてこられるのが嫌だって言うならすっぱり離れるさ。そうでないならもう少し一緒に旅させてくれないか?まだ確認したいことがあるんだ」
「……わかった、ガイを信じる…いや、信じてくれ…かな」
「ははっ、いいじゃねえか。どっちでも」
笑い合うルークとガイを見てイオンもホッとする。
「よかった。お二人が喧嘩されるのではないかって、ひやひやしました」
「さて、いい感じに落ち着いたようですし。そろそろセントビナーへ行きましょう」
ジェイドがそう切り出したので、アニスも思い出したといった感じで手を叩いた。
「ああ、使者の方から聞きました。セントビナーに行くって。でもイオン様はカースロットを解いてお疲れだし私とここに残ります」
そう言うアニスにイオンは向き直る。
「アニス、僕なら大丈夫です。…それに、僕が皆さんと一緒に行けばお役に立てるかも知れません」
「イオン様!?」
アニスは驚き、諌めるように呼ぶ。
「アニス、それに皆さん。僕も連れて行ってください、お願いします」
そんなアニスの思いがイオンには届いているはずなのだが、彼は頑として折れることなかった。
「師匠がイオンを狙ってるならどこにいても危険だと思う。皆いいだろ」
「そうだな、連れて行ったほうがいいだろう」
「目が届くだけ身近のほうがマシということですね、仕方ないですねえ」
ジェイドとニッドが了承したのでイオンも一緒に行くことになった。
アニスだけは不満そうな顔をしていた。
「もう!イオン様のばか!」
彼女の愛のある怒りの声が部屋に響いた。
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