エピソード2 オアシスからグランコクマまで
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第四石碑のある丘まで走ってきた一行はそこで今後のことを話し合う。
「追っ手は来ないみたいだな」
ガイが周囲を見渡して言った。
「公の場でイオン様を拉致するような真似はできないんだと思うわ」
「でもぉ、この後どうしますかぁ?戦争始まりそうでマジヤバだし…」
「バチカルへ行って伯父上を止めればいいじゃないか?」
「忘れたの?陛下にはモースの息がかかっているのよ」
「残念ですが、ティアの言う通りかもしれません。お父様はモースを信頼しています」
ナタリアは肩を落として暗い顔をしている。
「私はセントビナーが崩落するという話も気になります」
「その話、俺もジェイドと同じく気になるな…」
腕を組んで考え込んでいたニッドが口を開いて言った。
『ならば、グランコクマへ行くのはどうだ?』
「ええ、ノルン。そうですわね!マルクトのピオニー陛下にお力をお借りしましょう。あの方は戦いを望んでおりませんし、ルグニカに崩落の兆しがあるなら陛下の耳に何か届いているのでは」
「それでいいんじゃないですかぁ?」
アニスがジェイドたちを振り返る。
「よし、じゃあ決まりだな。でもマルクトに行くのに船はどうする?」
「アッシュがタルタロスを残してくれたみたいだ」
「まずはダアト港へ向かいましょう」
ニッドとジェイドが先に歩き出して皆もそれに続いた。
港へ行く道の途中。ジェイドがルークに声をかけた。
「ルーク、脈を見せてもらってもいいですか?」
「あん?いいけど…」
少しの間、ルークの脈を見たジェイドが考え深げに言った。
「ふむ…問題なさそうですね」
「大佐?ルークに何か?」
ティアが首を傾げて聞いた。
「完全同位体のレプリカというのは私も初めてなんです。今は存在が安定していますが、いつどのようなことが起こるか、ちょっと予測ができないものですから」
「え、俺…おかしくなっちまうのか?」
「大丈夫、元からおかしいですから」
ジェイドがさらっとそう言った。ルークは不満げな顔をしている。
「どーゆー意味だ…」
「私も定期的に貴方の健康を気にするようにしますが、貴方も自分で何か異変に気付いたらすぐに知らせてください。わかりましたね」
「うん。ありがとう、ジェイド」
ルークのお礼の一言に当のジェイドも皆が驚いた。
「ジェイドが驚いてる、レアだな」
『そうだな』
「何か言いましたか?」
彼の眼鏡が光りニッドとノルンに鋭い言葉が飛んでくる。2人は明後日の方を向いてやり過ごす。
「それにしてもルークが…お礼…ですか…」
「ど、どうしてみんないちいち驚くんだ!」
「それが日頃の行いってもんだ」
「行いですの!」
ガイとミュウによって放たれた言葉がルークにぐさっと刺さる。
「う…黙れブタザル…」
ルークの必死の反撃にミュウがしょんぼりする。
「にしてもさ、またこの面子が揃ったな」
ニッドがどこか嬉しそうに言った。
「まあ、成り行き上ですがね」
ジェイドは肩をすくめる。
「これもローレライの導きなのでしょうか」
「そうですわね。ユリアの預言に関わる者、各国の重要な立場の人間…偶然ではない気がしますわ」
「これも預言に記されているのかな」
「預言かぁ…」
ナタリアたちの話を聞いてニッドはぼんやり思う。例え預言に記されているとしても、皆とまたこうして集まれるのは嬉しい。
「それにしても…ルーク、髪を切ったせいでしょうか。随分雰囲気が違いますわ」
「そ、そうか?」
ナタリアはルークを見、そう言われたルークは自分の髪を触った。
「貴方なりに色々と思うところがあったのかもしれませんね。まあ、今更という気もしますが」
「人の性格は一朝一夕には変わらないもんね」
ジェイドとアニスの言葉がルークにぐさっと刺さる。
「うっ…」
ダメージがあったようでルークは肩を落とした。
「アニス、ジェイド。僕は貴方たちの言葉に素直に頷けませんね」
イオンがルークを庇うようなことを言うのでニッドも彼を見た。
「ルークは元々優しかった。ただ、それを表に出す方法をよく知らなかったのです」
イオンの言う通り、問題ある発言もあったがルークが優しさを見せたところは確かにあった。
「い、いいよ!イオン!これからの俺を見てもらえばいいんだからさ」
ルークが慌てて言う。
「イオンはルークのこと、よく見てるんだな」
「そう言うニッドも、タルタロスでルークのことを叱ったりユリアシティでアッシュに“ルークは変われるって信じてるから!”って言ってたじゃないですか」
イオンはニッドの口調を真似てにっこり笑って言った。
「あー!それ私もちょっと聞こえてました」
アニスが思い出したように声を上げた。
「わ、私も…目の前で聞きました…」
「ええ、それは私も聞こえてしまいましたわ。はっきりとではありませんでしたが…」
「アッシュの前に出た時のニッドは迫力があったな」
イオン、アニス、ティア、ナタリア、ガイがニッドのほうを振り向く、ルークは左右の仲間を見て最後にニッドを見た。
「へ?そうなのか?ユリアシティのは知らないぞ…」
当のニッドはルークと目が合ったがすぐに外方を向いてしまった。
「覚えてないな、そんなこと言ったか」
ジェイドの目が光った。
「照れていますね、ニッド」
「照れてない。ああ…ほら、こんなとこで立ち話してたら危険だ。早くダアト港に行くぞ」
ニッドはずかずかと歩き出す。
「准将もなかなかかわいいとこあるんですね」
「あれはあれでいじり甲斐がありそうですねぇ」
アニスとジェイドはにやにやしながら話している。イオンとナタリアはにこにこと楽しそうに顔を見合わせた。
「な、なぁ…ニッド…やっぱり怒ってるのかなぁ」
ルークがぼんやり呟いた。
「わからないわ。でもユリアシティでの准将の言葉は本当だと思うの。ルーク、後でちゃんと准将と話をするといいかもしれないわね」
「わ、わかった」
ルークたちはニッドの後を追った。
ダアト港でタルタロスに乗り、ここから北西のマルクトを目指す。グランコクマは戦時中は要塞になるため、入ることはできない。一行は工事中のローテルロー橋に向かい、そこから歩いて首都を目指すことになった。
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航海の途中、突然タルタロスが大きく揺れた。
「きゃあっ!」
ナタリアがバランスを崩す。皆も倒れないように足を踏ん張る。
「沈んじゃうの?」
アニスが不安げな声を出した。
「見てきます」
「俺も行く!音機関の修理なら多少手伝える。ニッドは皆を見ててくれっ」
「あぁ、わかった」
ジェイドとガイが機関部へ走っていく。
ミュウが泣きそうな顔をしてルークの足元に行った。
「ご主人様、ボク泳げないですの…」
「…知ってるよ、大丈夫。沈みゃしないよ」
伝声管から2人の声が聞こえる。
「機関部をやられましたが、ガイが応急処置をしてくれたおかげでなんとか動きそうです」
「一時的なモンだ。できればどこかの港で修理したいな」
「ここからだと一番停泊可能な街はケテルブルクです」
ティアが提案するとガイはジェイドに聞く。
「じゃあ、そこへ行こう。いいだろ、ジェイド?」
「…まあ…」
ジェイドは歯切れの悪い返事をしたが、それでもタルタロスはケテルブルクへと進路を向けた。
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