エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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一話 始まりの歌
ー…………トュ…エ…イ…ズ…ェ…………………ー
遠くから聞き覚えのあるような歌声が聞こえ、ニッドは目を覚ました。どうやら休憩中、うたた寝をしていたようだ。歌はノイズが入っていて、途切れ途切れだ。
今は任務中、陸艦タルタロスに乗り和平の親書を届けにいくのだ。だが、今彼はタタル渓谷に居る。正体不明の第七音素が観測されて、ニッドはその調査に駆り出されたのだ。
奥の海が見える場所まで来てみたが、人らしい人は居ない。
「…ジェイド…本当に正体不明の第七音素だったのかよ」
『…フフ…だが、本当に危険なものだったらドやされる』
「わかっている。タルタロスで下ろしてくれたって良かったのに、グランコクマから…遠いって…」
何 かにそう答え来た道を戻る。
なるべく静かに歩いていると、人の声がしてきた。自分の居る崖の下からだ。
「ー…とにかく落ち着いてっ」
「お、落ち着けったって、どうすりゃいいんだよ!」
『少女と少年だな。彼女のほうは戦闘になれているが、少年は初心者か』
「ノルン」
ニッドは方向を変えて、持っていた譜銃剣を構えた。
「君たち!!伏せろ!!」
ニッドの怒号に、少女が少年を庇って伏せた。
パン!パン!
魔物の頭を狙って貫通させる。
一匹逃したが、ニッドは別のレバーを引いて剣を出現させ、逃した魔物に投げた。魔物は串刺しになって音素に還った。
「いってぇ…なんだったんだよ!」
少年が悪態をつきながら起き上がる。
二匹目の魔物の攻撃がニッドの居る崖に迫る。 その直前に彼は飛び上がり、少女たちの頭上を通過し、地面に着地した。突き刺さっている譜銃剣を掴んで最後の魔物に発砲した。音素に帰るのを見届けて、ニッドは駆け寄った。
「無事か?」
「え、ええ…」
「あー…いてぇなぁ」
無事を確認したにニッドは譜銃剣を拾い上げた。
「悪かったな、少し手荒すぎた」
「助けてくれてありがとう。貴方は…?」
少女に聞かれ、ニッドは答えに困る。
自分の身の上を明かしてもよいものか。
「ただの旅人だ。たまたまタタル渓谷までやってきた」
「たまたまねぇ…」
赤い髪の少年が小声で言う。
月明かりが差して互いの顔が確認できるようになった。少女の顔を見て、目を見開いて思わず口にしてしまった。
「………姉、さん…?」
ニッドの表情と言葉に少女と少年は首をかしげた。
「お前、弟でも居んのか?」
「いいえ…私には兄しか居ないはずよ。でもどう見ても彼のほうが年上よね」
彼女に言われハッと我に返る。
「あ、す、すまないっ。何でもないっ。…ところで、ここで何をしている?彼は戦闘に慣れていないようだったし、夜は危険だぞ」
「…あ、いえ…その…」
少女が答えに困っている。
その様子から察するに自分たちのことを明かせないらしい。それはニッドも同じなので、それ以上は聞かないことにした。
「俺もここを出るんだ、同行しよう」
信用できる相手と決まったわけではないが、さっさと歩いていくニッドを見て彼女は少年に囁いた。
「ついていきましょう、彼は 土地勘があるみたいだし、敵意はなさそうだから」
ルークは仕方ねえと答えて相手を追った。
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