エピソード2 オアシスからグランコクマまで
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行商人からもらった旅券でなんとか国境を越え、船を密航しながら乗り継いでついにワイヨン鏡窟へ行くという船に乗ることができた。
「ここがワイヨン鏡窟…」
船から降りて、船員に見つからないように歩き出す。
「帰りは仕方ないな…」
先程乗ってきた船にはもう乗れない。帰りは別の方法を考えよう。奥へ進み分かれ道をさらに薄暗いほうへ進むと見覚えのある場所にたどり着いた。
「巨大な檻、演算機…オレはここにいた…」
生み出されて檻に閉じ込められていた。
足元に散らばった書類が目に入る。
「第四音素…の…同位体…そうか…オレはニッドヘルグのレプリカなのか…」
別の書類には神託の盾のことが書かれていた。
「ユリアの実弟ニッドヘルグのレプリカ情報?ヴァン…モース?こいつらがニッドヘルグのレプリカ計画の主犯か」
自分のオリジナルが誰なのかがわかり納得した、と同時に廃棄された瞬間の記憶も再生され怒りを覚えた。
「生み出しておいて何で捨てたんだ…!」
入り口のほうが誰かの話し声が聞こえる。レプリカニッドは物陰に隠れる。しばらくすると、驚くような人物が入ってきた。
「オリジナル…」
自分のオリジナルだった。何かを調べに来たのだろう。
『書類のようだな…コーラル城で拾った書類に似ている…』
「第四音素…の音素振動数…?これも同位体研究だ。持ち帰ってジェイドに見てもらおう」
誰と話している…?
不可解に思いながら注意深く見ていると演算機を操作し始めた。
「まだ動くな…。あ、俺の名前…やっぱりニッドヘルグのレプリカは存在していたのか…?」
『一体何のためにレプリカを…いや…預言を成就させるための道具か』
道具…か…レプリカは所詮は人の道具だというのか…。
「おい!死竜!そっちは終わったか」
考えごとをしていたらオリジナルの仲間がやってきた。
「…ここにはもう用はない…とりあえずこいつらの乗ってきた船に乗り込むしかない…」
誰かが来ていることは足跡でバレているだろう。だが、今はオリジナルと対峙している場合ではないのだ。譜陣を展開し譜術を発動させる。相手の中に譜術士がいたのかニッドレプリカの譜術を別の譜術で相殺してきた。爆発の煙に紛れてその場から脱出する。来た道を走って逃げるが、オリジナルたちも追ってくる。広い場所に出たところで行く手に矢が飛んできた。
「そこまでですわ!」
足を止めて振り向くと全員がこちらを鋭く睨んでいた。
「何者だ!」
赤い髪の男が問うた。
「ここへ来るということは元研究者か、オラクルか…もしくは」
「レプリカ…」
メガネの男の後にオリジナルが小さく呟く。小さな女の子とキレイな所作をする女ががばっとオリジナルを振り向いている。
「まさか、先程の施設にいたかもしれないレプリカなのですか…」
「そんな…あの檻にレプリカが…!」
「答えろ!お前は俺の…」
レプリカか!ってか…。
今、彼らと戦っている時間はない。どうするかと考えていたところ異様な気配がした。
「気をつけろ、何か居る…」
赤い髪の男が海面を見る。視線を辿ると、轟音とともに海面から巨大な魔物が飛び出してくる。
「はうあ!何あれ!」
小さな女の子が驚愕の声を上げる。
『アンキュラブルブだ』
どこかからか声がした。皆の意識が魔物に集中している隙にニッドレプリカは再び走り出す。
「あー!逃げた!」
「助かった…後は任せたぞオリジナル」
聞こえないくらい小さな声で呟き、船着場へと走り去る。
船着場は静かだ、オリジナルたちが来る前に戦艦に乗り込み息を潜めた。
「あの…」
不意に呼ばれて思い切り振り返ると、そこには緑の髪の少年がいた。ナイフの切っ先を少年に向けた。
「…何のようだ」
「すみません…誰かが戻ってきたのかと思って様子を見にきたんです。僕はイオンです。貴方は…僕の知り合いによく似ています」
「ニッドとか呼ばれていた奴のことか」
「貴方もレプリカなのですか…?」
“貴方も”とはどういう意味だ。怪訝な顔をする。
「だったらなんだ。オレのことをオリジナルに突き出すのか」
「突き出すことはしませんが…貴方の目的はニッドたちと目的は違うのですか?」
「違う…オレは世界を救うなんてことはしない。オレはオレを生み出して捨てた奴らに復讐する」
イオンという少年は少し悲しそうな顔をした。
「復讐ですか…でも貴方は…」
「オレのオリジナルは二千年前の人間らしい。何故この時代にいるのかはわからないが…オリジナルはここにいるんだ。だったらオレはどうやって生きていけばいい?なんで生み出して捨てたんだ。たとえレプリカでも、仲間にも世界にも必要とされてるんだったらまだ良かったのに…」
そう言ったニッドレプリカの目が悲しみに揺れているのをイオンは見た。
ナイフを下ろしてホルダーに仕舞う。
「…イオンとかいったか。仲間が戻ってくる、早く行けよ」
「…」
それ以上何も言わずに外方を向くと、イオンという少年は静かにその場を離れた。
しばらくすると、騒がしい声が聞こえて同時に地震が起こった。気づかれないように外部の通路に出てオリジナルたちの話を聞く。
「今の地震、南ルグニカ地方が崩落したのかもしれない」
「そんな!なんで!?」
「南ルグニカを支えていたセフィロトツリーをルークが消滅させたからな。今まで他の地方のセフィロトでかろうじて浮いていたががそろそろ限界のはずだ」
「他の地方への影響は…?」
「俺たちが導師をさらってセフィロトの扉を開けさせていたのを忘れたか?」
「扉を開けてもパッセージリングはユリア式封咒で封印されています。誰にも使えないはずです」
「ヴァンの奴はそいつを動かしたんだよ!」
「つまりヴァンはセフィロトを制御できるということですね。ならば彼の目的は…」
「…さらなる外殻大地の崩落。アッシュ、次はどこが落ちる?」
「そうみたいだな。俺が聞いた話では次はセントビナーの周辺が落ちるらしい」
彼らは急いで船に乗り込んだ。
「…ヴァンとかいうやつは世界を滅ぼすのが目的か…世界なんてどうでもいい。オレは勝手に生み出して捨てた復讐ができればそれでいい」
自らの手を見ながら呟く。そうしていると戦艦が発進した。次の港で降りよう、そう決めて水平線を眺めた。
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