エピソード2 オアシスからグランコクマまで
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「行けども行けども、何もない。…なあ、ここは地下か?」
デッキから泥の海を眺めていたガイが呟いた。
「ある意味ではね。貴方たちの住む場所はここでは外殻大地と呼ばれているわ。この魔界から伸びるセフィロトツリーに支えられている空中大地なのよ。…昔、外殻大地はこの魔界にあったの」
ティアの話にニッドとジェイド、イオン以外は衝撃を受ける。
「信じられない…」
アニスが目を見開いて言った。ティアは続ける。
「二千年前、オールドラントを原因不明の瘴気が包んで大地が汚染され始めた。この時ユリアは七つの預言を詠んで、滅亡から逃れるための道筋を発見したの」
「ユリアは預言を元に地殻をセフィロトで浮上させる計画を発案しました」
ティアのあとにイオンが言い足す。二人の話にニッドは壁に寄りかかって目を閉じる。
「それが外殻大地の始まりか。途方もない話だな…」
「ええ、この話を知っているのはローレライ教団の詠師職以上の者と魔界出身者だけです」
イオンがそう言うとアニスの目はティアを捉える。
「じゃあティアは魔界の…」
「とにかく僕たちは崩落しました。助かったのはティアの譜歌のおかげですね」
「(…また微かに…譜歌が聞こえた…そのせいかさっきの譜歌もあんなに強力に…一体誰が…)」
ティアは悶々と考えながらニッドのほうを見たが、ジェイドの言葉で我に帰る。
「何故こんなことになったのです?話を聞く限りアクゼリュスは柱に支えられていたのでしょう?」
「それは、柱が消滅したからだ」
ニッドが腕を組んで言った。
「どうしてですか?」
アニスが聞いた。ニッドがルークを見ると、皆も彼を見た。全員に見られてルークはたじろぐ。
「…お、俺は何も知らないぞ!俺はただ瘴気を中和しようとしただけだ。あの場所で超振動を使えば瘴気が消えるって言われて…!」
「貴方は兄に騙されたのよ。そしてアクゼリュスを支える柱を消してしまった」
ティアはルークに向き直って言った。
「そんな!そんな筈は…!」
ルークは信じられないあまりに混乱し始める。
「ヴァンは貴方にパッセージリングのそばに行くよう命じましたね。柱はパッセージリングが作り出している。ティアの言う通りでしょう、僕が迂闊でした。ヴァンはルークにそんなことをさせようとしていたなんて…」
「…せめてルークには事前に相談して欲しかったですね、仮に瘴気が中和できたとしても住民を避難させてからでは良かったはずですし…今となっては言っても仕方ないことですが」
「そうですわね、アクゼリュスは消滅しましたわ…何千という人が…一瞬で…」
ナタリアは悲しげに目を伏せた。
「…お、俺が悪いってのか…?」
ルークのそれには誰も何も言わない。
「俺は悪くねえぞ!だって、師匠がそう言ったんだ!そうだ、師匠がやれって!こんなことになるなんて知らなかった!誰も教えてくれなかっただろっ。俺は悪くねえ!俺は悪くねえ!」
ルークは保身を守ろうと必死に叫んでいる。その瞬間、皆の中からルークへの信頼が一気に崩れ去った。
ジェイドが最初に歩き出し、ティアが呼び止めた。
「…大佐?」
「艦橋に戻ります。…ここにいると馬鹿な発言にイライラさせられる」
そう言い捨てて艦内へと消えた。
「なんだよ!俺はアクゼリュスを助けようとしたんだぞ!」
「変わってしまいましたのね。記憶を失ってからの貴方はまるで別人ですわ…」
ナタリアもルークの前から去っていく。
「お、お前らだって何もできなかったじゃねえか!俺ばっかり責めるな!」
「貴方の言う通りです。僕は無力だ…だけど…」
「イオン様!こんなサイテーな奴ほっといた方がいいです!」
アニスに引っ張られてイオンも去っていった。これだけの仲間に見捨てられて流石に気づくだろうと見ていたニッドだったが、やはり甘かったようだ。
「わ、悪いのは師匠だ!俺は悪くねえぞ!なあ、ガイ?」
ルークは助けを求めてガイを見る。
「ルーク…あんまり幻滅させないでくれ…」
力なく言ってガイもルークに背を向けて艦内へと歩いていく。
「少しはいいところもあると思ってたのに…私が馬鹿だった…」
最後の砦だと思っていたティアも背を向ける。
「…どうしてだよ!どうして俺を責めるんだよ!悪いのは俺じゃ…」
「…いい加減にしろ!」
パシッと言う音とともにニッドの怒鳴り声が響いた。思わずティアは振り返る。
ルークは頰に痛みを感じた、ニッドに平手打ちを食らったようだ。
「…な、なんで叩くんだよ!」
ニッドはルークの胸ぐらを掴む。
「ルーク、お前言ったよな?自分もちゃんと責任を背負うって!あれは嘘だったのか!?」
「…うっ…お、お前だって…何もできなかっただろ…!師匠を攻撃して…」
「ああ、そうだよ。俺は何もできなかった、けどお前みたいに言い訳はしない。俺もアッシュも止めろってはっきり言っただろ!それを聞かなかったのは誰だ!」
「…だって師匠が言ったんだ…!そうしろっって…うわ!」
ニッドはルークをデッキの柵まで無理矢理連れて行き外に顔を突き出す。泥の海が目の前まで迫ったよう気がしてルークは怯えた。
「准将…!?」
流石のティアも心配になる。
「さっき苦しんで沈んでいったあの子に、何も知らずに死んでいったアクゼリュスの人たちにそのセリフ言ってみろ!」
ルークの顔に何か落ちてくる。
「…!」
彼の目から零れる涙を見たルークは目を見開いた。
泣いてる…?
「…止めろ…は、離せ…」
何とか声を絞り出したルークだがニッドに上手く言い返すことはできなかった。
『ニッド。もういい。そろそろ離してやれ』
ニッドはノルンに頷きもせずルークをデッキの内側に突き放した。
タルタロスの向かう方角に街がが見えてくる、おそらくあれがユリアシティだ。
「少しは自分で物事を考えて、自分の目で周りのことを見ろ」
ルークはそれにも答えず俯いて黙り込んでしまう。ニッドはそれ以上何も言わずにティアの横を通り過ぎてタルタロスの中へ消えた。
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