エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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旧市街に行くために天空客車の乗り口に行く。
「工場跡って言うくらいだから立ち入り禁止だろ?兵士はどこへ行ったんだよ?」
ニッドが言った。
「そうなんだよなぁ…いつもなら兵士がいるんだけど…」
唸っているガイに街の人が声をかけてきた。
「そこの兵士さんなら城から呼び出されたとかでいなくなっちまったよ。あとあんたたち、工場跡にいくのかい?さっきも若い女の子が天空客車に乗って行ったけど、最近はそういうのが流行ってるのかねぇ」
そう言って街の人は去っていった。
「ん?誰かが行ってるってこと?」
「まあいいんじゃねーの?それよかこれに乗るんだろ?はやく行こうぜ」
ルークが先陣を切って天空客車に乗り、皆もそれに続いた。
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工場跡に到着し、内部へ入っていく。
入り口付近でニッドが立ち止まった。
「到着したはいいけど、本当にここから外へ出られるのか?」
「あぁ、それなんだがな」
ガイが話し始める。
「バチカルは譜石の落下跡だってのは知ってるな。ここから奥へ進んで行くと落下の衝撃で出来た自然の壁を突き抜けられるはずだ」
「!…なるほど、工場跡なら…」
「排水を流す施設があるのね」
ティアとジェイドが気づいて言った。
「あ、そうか。排水施設は死んでるから通り抜けることができるのか!」
ニッドも納得した。
「そういうこと」
「まあ、ガイ。貴方詳しいのね」
不意に女の子の声がした。声の方へ振り向く。
「見つけましたわ」
そこには弓矢を背負ったナタリア王女が居た。皆が驚く。
「なんだ、お前…そんな格好して…」
ルークは驚きながもナタリアに聞いた。
「決まってますわ。宿敵同士が和平を結ぶ大事な時に王女の私が出ていかなくてどうしますの」
ルークはあからさまに嫌な顔をしている。
「アホか、お前。外の世界はお姫様がのほほんとしていられる世界じゃないんだよ。下手したら魔物だけじゃなくて、人間とも戦うんだぞ」
ナタリアは胸を張って言い返す。
「私だって三年前、ケセドニア北部の戦で慰問に出かけたことがありますもの。覚悟はできていますわ」
「慰問と実際の戦いは違うしー、お姫様は足手まといになるから残られたほうがいいと思いまーす♡」
「失礼ながら同感です」
アニスはトゲのある言葉を発し、流石のティアも同意見のようだ。
「ナタリア様、城に戻られたほうが…」
「お黙りなさい!」
恐る恐る言うガイだが、ナタリアがぴしゃりと言い放つ。
「私はランバルディア流アーチェリーマスターランクですわ!それに治癒術師としての学を修めました。その頭の悪そうなオラクルと無愛想なオラクルよりは役に立つはずですわ」
「何よ!この高慢女!」
アニスはぷんぷん怒っている。
「下品ですわね。浅学が滲んでいてよ」
「呆れたお姫様だわ…」
ナタリアとアニスの間には火花が散っている、2人の間でティアは頭を抱える。確かにとんでもないのが来た、とニッドもうんうんと頷きたくなる。
「これは面白くなってきましたねえ」
ジェイドは楽しそうに言う。
「どこがさ…波乱の予感しかしないよ…」
ニッドはため息をつく。
「だから女は怖いんだよ…」
隣でガイは微かに震えてそう呟いた。
「何でもいいからついてくんな!」
ルークが嫌そうに叫んでいる。
「…あのことをばらしますのよ」
「あ、あのことってなんだよ」
ルークは焦っているようでナタリアを連れて少し離れた場所へ行く。そこで何か話している。
嫌な予感がする、直感でそう思った。
ルークとナタリアが戻ってくる。
「ナタリアに来てもらうことにした」
彼の一言でニッドは衝撃を受ける、嫌な予感が当たってしまった。
「よろしくお願いしますわ」
「…ルーク、見損なったわ」
ティアは静かにそして呆れ果てながら言った。
「う、うるせーな!親善大使は俺だ!」
「ルーク、親善大使の意味ちゃんとわかってるんのか?」
見兼ねたニッドが口を開いた。
「わ、わかってるってば!とにかく俺の言うことは絶対だ!いいな!」
ニッドは盛大なため息をついて頭を抱えた。
「あ、そうですわ。今後私に敬語はやめてください。名前も呼び捨てること。そうしないと王女だとバレてしまうかもしれませんから」
「はいはい…」
もう何でもいい、ついにはそう思った。
『ー…おー…い…』
「何か聞こえませんこと?」
「ニッド、ノルンが呼んでいるのでは?」
「あ!」
ジェイドに言われ、背中からノルンを取り出す。
『忘れられたかと思うたぞ』
「ごめん、もう街出るから大丈夫だよ」
『道中説明頼む』
「わかった」
「あの…1人で何と話されているのですか?」
ナタリアは不思議そうにニッドを見る。
「あぁ、ナタリアはノルンに会うのは初めてだったな。ニッドの相棒の譜銃剣、ノルンだ」
ガイが紹介してくれた。ニッドはノルンを下ろして前に出す。
『初めてまして、ナタリア』
譜石が光り、ノルンは挨拶する。
「は、初めまして、ノルン。それにしても驚きましたわ、譜業が人の言葉を話すなんて…」
「これは特殊なんだ。…まぁ、ノルンの紹介も済んだしそろそろ歩こう」
ノルンを再び担ぐ。
「そうですわね」
皆は薄暗い工場跡を進み始めた。
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先を歩くナタリアはかなり早足で、ルークは追いつけなくてついに声を上げる。
「おい、ナタリア。もう少しゆっくり歩けよ!」
ナタリアは振り返って腰に手を当てる。
「何ですの?もう疲れましたの?だらしないことですわねぇ」
「そ、そんなんじゃねえよ!」
「…うはー、お姫様のくせに何、この体力馬鹿」
「何か仰いまして?」
アニスはこっそり呟くがナタリアには聞こえていたようだ。
「べっつにー」
「導師イオンが拐かされたのですよ。それに私たちは苦しんでいる人々のために少しでも急がなくてはなりません。違っていまして?」
『間違ってはいないよ。だがここは暗いし、魔物もいる。慎重に進むべきだ』
「それに、貴方1人に皆が合わせるのは無理だ」
「ニッドとノルンの言う通りです。少なくともこの場では王族という身分を棄てているわけですからね」
ジェイドも頷く。
「…確かにそうですわね。ごめんなさい」
ナタリアは素直に謝る。
「あれ、素直だな…」
『良い子ではないか』
ノルンはにこにこして言った。
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