エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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そのあとは、昇降機に乗ってバチカルの一番上の階までやって来た。ルークも多少知っている光景だったのか安心したようにも見えた。
ニッドはノルンをーコンタミネーション現象でー別空間へ隠した。
ルークたちは巨大な扉を開けて城内へ入り上まで続く長い階段を登る。「お待ちを!ただいま、大詠師モースが陛下に謁見中です」
謁見の間の扉の前で兵士に声をかけられる。
「先客がいるらしいけど、少し待つか?」
そう言うニッドにルークが振り返る。
「モース?なあモースってのは戦争を起こそうとしてるんだろ?」
「いや…だからそうと決まったわけでは…」
「伯父上が変なことを吹き込まれる前に入ろうぜ!」
ニッドが言い終わる前にルークが兵士を押しのけて入ろうとするのを相手は押しとどめる。
「お、おやめください!」
「どけよ!俺はファブレ公爵家のルークだ!邪魔をするならお前をクビにする申し入れるぞ!」
そう言われてしまった兵士はしぶしぶ下がるしかなかった。
「初めから素直にそうしてりゃいいんだよ」
吐き捨てるように言うルークを見たニッドは、頭を抱える。
「ルーク、いいのでしょうか?こんな強引に…」
「構わねーよ」
不安そうに呟くイオンに答えてルークは謁見の間の扉を開ける。
「陛下。マルクト帝国は首都グランコクマの防衛を強化しております。エンゲーブを補給拠点としてセントビナーまで…」
僧服姿、この声の主がモースか、とニッドも理解する。
「うそつけ!」
ルークは早足で進みながらルークが言った。
「無礼者!誰の許しを得て…」
叫ぶモースを、玉座の男ー国王がー止める。
ルークが前に出る。
「その方はルークか?シュザンヌの息子の…」
「そうです、伯父上」
王の問いにルークは頷いた。
「そうか!話は聞いている。よくマルクトから無事に戻ってきた。すると横にいるのが…」
「ローレライ教団の導師イオンとマルクト軍のジェイドとニッドです」
「ご無沙汰しております、陛下。イオンにございます」
イオンが一歩前に出る。
「導師イオン、お、お探ししておりましたぞ…」
「モース、話は後にしましょう。陛下、こちらがピオニー九世陛下の名代ジェイド・カーティス大佐とニッド・バーゼライド准将です」
「御前を失礼いたします、陛下」
イオンから紹介を受け、静かに前に出るジェイドにニッドも続き、国王に一礼する。
「我が君主ピオニー九世陛下より、偉大なるインゴベルト六世陛下に親書を預かってまいりました。詳しいことはこれに」
ジェイドがそう言い、ニッドは懐からゆっくりと親書を出して内務大臣アルバインにそれを渡した。
内務大臣は親書を開き一読し、頰を震わせる。彼は怯えた目でジェイドとニッドを見て、親書を王に渡す。
「伯父上、モースの言っていることはでたらめだ。俺はこの目でマルクトを見てきた。首都には近づけなかったけど、エンゲーブやセントビナーは平和なもんだったぜ」
「何を言うか!私はマルクトの脅威を陛下に…」
「うるせえ!お前は戦争を起そうとしてるんだろ!マジうぜーんだよ」
ルークの迫力に飲み込まれたモースは黙り込んでしまう。
「ルーク殿、落ち着いてください」
「ふん」
ニッドに言われたルークは鼻を鳴らした。
「ルーク、こうして親書が届けられたのだ。わしとてそれを無視せぬ。…しかし、一つの教団から2人の使者…よくよく考えねばなるまい。答えはすぐには出せぬ。まずはゆっくりと旅の疲れを癒されよ」
国王は内務大臣に視線を向けると、内務大臣は頷く。
「使者の方々のお部屋をご用意いたします。ご案内を」
「あ、もしよろしければ…僕はルークのお屋敷を拝見したいのですが」
とイオンが切り出す。
「私も!私も行く!」
「ふむ、面白そうですね。こんな機会はもうないでしょうし、私も是非」
ジェイドとアニスが賛成する。
「えぇっと、まあ俺も行こうかな」
ニッドもなんとなくで返事する。
「おう、別に面白いもんもねーけど、いいぜ」
ルークが軽く言い、そのあとに王も頷いた。
謁見の間を出ようとすると、王が静かに言った。
「ルークよ。シュザンヌが病に倒れた」
「母上が!?」
「わしの名代としてナタリアを見舞いに送った。早く顔を見せて安心させてやりなさい」
ルークは騒ぐ気持ちをなんとか抑えて大きく頷いた。
皆は国王にもう一度、頭を下げて謁見の間を後にする。最後に出て行こうとしたニッドをモースは一瞬見た。ニッドはモースの視線に胸騒ぎを覚えた。
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