エピソード1 タタル渓谷からバチカル
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11話 光の王都
バチカルに着いたルークたちを出迎えたのは赤い軍服を着た2人の軍人。
「お初にお目にかかります。キムラスカ・ランバルディア王国軍、第一師団団長のゴールドバーグと申します。この度のご帰国、おめでとうございます」
「ご苦労」
ゴールドバーグはルークに向かい一礼し、ルークは彼に対して労いの言葉をかける。
「アルマンダイン伯爵より鳩が届きました。マルクト帝国から和平の使者が同行しておられるとか」
イオンが前に進み出て一礼する。
「ローレライ教団導師イオンです。マルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下に請われ、親書をお持ちしました。国王インゴベルト六世陛下にお取り次ぎ願えますか?」
「無論です。皆様のことはこのセシル将軍が責任を持って城にお連れします」
ゴールドバーグ将軍の隣にいる淡い金髪の女性の軍人が一歩前に出て軽く会釈する。
「セシル少将であります。よろしくお願いいたします」
微かにガイの顔が強張ったのをニッドは見逃さなかった。セシル少将の方を見ると彼女も同じようだ。
「ガイ、どうした?」
ニッドが小声で訊ねるが、彼は首を振った。
「い、いや…」
何とか切り替えて名乗る。
「その、私は…ガイといいます。ルーク様の使用人です」
彼に続いてティアとアニスが前に出る。
「ローレライ教団神託の盾騎士団、情報部第一小隊所属、ティア・グランツ響長であります」
「ローレライ教団神託の盾騎士団、導師守護役所属、アニス・タトリン奏長です」
「マルクト帝国軍第三師団団長、ジェイド・カーティス大佐です」
ニッドはノルンを担ぎ直して姿勢を正す。
「マルクト帝国軍第三師団所属ニッド・バーゼライド准将です。陛下の名代として参りました」
ジェイドとニッドの名を聞いたゴールドバーグとセシルは驚愕した。
「き、貴公らあの…死霊使いと死竜…!」
セシル将軍は青ざめているのがノルンにもわかった。それに対してジェイドは相変わらずの軽口だ。
「いやいや、ケセドニア北部の闘いではセシル将軍に痛い思いをさせられました」
「ご冗談を…そちらのバーゼライド准将のお陰でほぼ壊滅でした」
目を伏せて唇を噛んでいるセシル少将を見る、彼女の握りしめている拳は震えている。ニッドは何とも言えない気持ちになった。
ゴールドバーグが割って入ってくる。
「皇帝の懐刀と名高いお二人が名代として来られるとは…なるほどマルクトも本気というわけですか」
「国境の緊張状態が、ホド戦争開戦時より厳しい今、本気にならざるを得ません」
「仰る通りだ。ではルーク様は私どもバチカル守備隊とご自宅へ…」
「ま、待ってくれ」
ルークが慌てて言う。
「俺はイオンから伯父上への取り次ぎを頼まれた。俺が城へ連れて行く」
「ありがとう、心強いです」
「ルーク、見直したわ。あなたも自分の責任をきちんと理解しているのね」
「う、うん…まあ…」
確かに心強いルークだが、どこかぎごちない。
「承知いたしました。ならば公爵への使いはセシル将軍に頼みましょう」
ゴールドバーグにセシルが頷く。
「ではルーク。案内をお願いします」
イオンに言われ、ルークは先頭切って歩き出す。しかし、天空客車の前で立ち止まる。
「ルーク」
ニッドが小声で話しかける。
「中心部へ行くにはこれに乗るんじゃないのか?」
「え、ああ…そうだよ」
天空客車に皆で乗る。ルークは眼下の光景に目を見開く。
「ここがバチカル…」
「そうかお前、記憶を失ってからは外に出てなかったな。…バチカルは、空の譜石が落下して抉られた大地の跡に作られた街なんだ。だからほら、縦に長いだろ」
「ほんとだ」
「自然の城壁に囲まれてるってわけね。合理的だわ。だけどルーク。初めて外に出たっていうなら城までの道知らないんじゃないの?」
「う、うるせえな!」
「だってバチカルの景色を見て驚いていたでしょう」
ティアに言われてルークは黙ってしまう。
「うーん、わかるなぁ…俺も軟禁されていた時期があったから…自分の住んでいる街を初めて見た時は驚いたよ」
「そうなのですか?」
「え、アンタも誘拐されたのか?」
ルークとティアがニッドを見る。
「まぁ…近いかな」
首を傾げならニッドが答えた。
「ニッドにもそんな時期があったのか…」
ガイも少し意外そうに呟いた。
「バーゼライド家といえばカーティス家と並ぶ名家ですからね!そこの子息となれば狙われたりしますよね!」
アニスの目はガルドになっている。流石はアニス、そういうことには詳しい。
「そうだな…」
背中にジェイドの視線を感じた。
「ち、小さい頃の話さ!」
やばいと思ったニッドは何とかこの話を終わらせる。
天空客車を降りたところでジェイドに囁かれた。
「貴方は正体をばらしたいのですか」
眼鏡がキラリと光る。
『ぽろっとしゃべったらどうするつもりだ』
最終的にはノルンからも釘を刺される。
「…い、以後気をつけます」
噛みながらもそう答えたニッドだった。
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